「人吉禅スタイル」

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会社のヒミツ

企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ」。
今日は、「人吉禅スタイル」のヒミツに迫ります。
人吉の禅をモチーフにした観光キャンペーンについて、
茶房はちのオーナー 佐藤圭さんに伺います。

Q 人吉球磨の方々で人吉球磨をアピールするための新たなグループを作ったそうですが、
どんな業種の人たちが参加していますか?

住職、建設業、お茶生産農家、 伝統工芸作家、カメラマン、デザイナー、飲食業などです。
 
Q 上記グループでは「禅」をキーワードにしたブランドづくりをスタートしたそうですが、
そのきっかけは?
 
最終的な目標は、「人吉球磨を、日本を代表する地方にする。」
私が東京から帰郷したのは2010年。帰郷し実家の建設業を継ぎました。
状況はかなり厳しく、公共事業予算激減し周りの建設会社がバタバタと倒産する状況、
そして日々深刻さを増す地元の疲弊状況、両方とも想像以上でした。
建設会社の立て直しの傍ら、地方活性もやらないとダメだと考えるようになりました。
どうするか?いろいろ試行錯誤する中、観光を突破口にしようと考えました。
常に花は足元に咲いている。高校卒業以来20年近く離れて帰ってきてわかったのは、
「地元の凄さ」です。「良さ」ではなく「凄さ」です。それが歴史でした。
例えば、実は人吉球磨は、熊本県内に存在する多くの神社仏閣。
その中でも、国指定・県指定されている神社仏閣の約89%が人吉球磨郡内に存在します。
まさに「祈りのまち」。これから21世紀は心の時代だと思っています。
急速な右肩下がりの時代で、日本はうまくいかないことが多くなるはずです。
この時代において「祈り」というのは、改めて価値が出てくると思っています。
いかに生きていくべきかという問いに答えてきた日本の伝統宗教がしっかりと残るこの地域は、
これからの地方生き残り競争が激化していく中、勝てる要素を十分に持っていると思いました。
よし、日本を代表する地方にできる。
観光を突破口に据えて、具体的な戦い方として「地域ブランド」を立ち上げることを
思いつきます。切り口は「禅」です。
きっかけは拠点として立ち上げたカフェ「茶房はち」を新宮禅寺の目の前にオープンすることが
できたこと、そしてこれから外国人観光客も意識していく時代の中で、
世界で禅がブームになっているのも知り、禅をコンセプトに地域ブランドを作ることを決めました。
 
Q 今回のプロジェクトの中心となる「新宮禅寺」を紹介してください。
 
新宮禅寺(しんぐうぜんじ)は、創建600年を超える古刹です。
宗派は、黄檗宗(おうばくしゅう)という宗派で、熊本県にはこの人吉球磨地域にしか存在しません。
さらに新宮禅寺は、日本最南端の黄檗宗寺です。つまり、鹿児島、宮崎、沖縄にも存在しません。
これは、南九州で日本三大禅宗(臨済、曹洞、黄檗)が存在する唯一の地域であることも意味します。
これも禅をコンセプトにブランドを立ち上げた理由の1つです。
特色:文化庁日本遺産認定・相良三十三観音のうち、最も風景が美しいと言われる寺で、
特に紅葉の時期が美しい。でも私がお勧めするのは、5月の新芽が出てくる季節。
新緑がとても美しくこれから新しいことが始まるというワクワク感に浸れます。
そして、新宮禅寺で一番の特色は「六観音」です。400年ほどの歴史があります。
境内の森、一番奥深くに鎮座する六観音は、極彩色のカラフルな色で塗装しており、
保存状態もいい。何より、密教における壮大な宇宙観を感じさせてくれます。
その中でも、子安観音は安産祈願など県外からもいらっしゃるほど信頼が厚い観音様です。
禅寺なのに、六観音(密教)が存在しているのが、この寺の特色でもあり、
人吉球磨の特色でもあります。
 
新宮禅寺.jpg
 
Q 上記グループでは、PRのために、具体的には、どんな取り組みがされていますか?
 
「人吉禅スタイル」という地域ブランドを立ち上げました。
肝は、コンセプトにこだわるということです。なぜなら、従来地域ブランドは地域活性化にあまり
寄与しないと言われてきました。
お米とか、果物とか、いわゆる「単品ブランド」であり、経済波及効果が限定的だからです。
私の目標は人吉球磨全体の活性化です。
どうすれば良いか????悩んだ末、「モノ」にこだわるのでなく、「コト」にこだわることにしました。
つまり、ブランドのコセンプトは1つに絞り、様々な商品・サービスを提供する。
全ての商品サービスは「禅」に落とし込む。
ブランドとしての一貫性を取れれば、人吉球磨の様々な地域資源を売ることができる。
さらには、人吉球磨全体に点在する禅寺の紹介もでき、そこに足を運んでもらえるになる。
禅を通じて地域を活性できる!と考えました。
まず、売り場を作りました。
 
先ほどご紹介した「茶房はち」です。
鹿児島のデザイナーにお願いして、伝統とモダンをコンセプトに、
東京に出してもおかしくないデザイン性の高いカフェにしました
(インスグラムでも代官山にあってもおかしくないカフェとコメントあり)。
そして、カフェの目前にある新宮禅寺の住職とは幼馴染で、彼に地域活性化の構想を相談したところ、
無料の座禅体験会を毎月第3土曜日に開催してくれました。
実は、先代の住職がお亡くなりになって中断してたのですが、10数年ぶりの再開とのこと。
スタートして半年くらいですが、徐々に増え、ニーズが増えており、
現在住職が座禅を毎朝やっているのですが、それを一般開放する予定にしています
(これは本格的で60分くらいかかり、お茶のセットをつけたりするので有料にする予定)
禅とお茶の関係は深く、また人吉球磨はお茶の生産の歴史が古い
(日本最古の証拠を示す古文書あり)こともあり、人吉禅心茶という商品を開発。
名前も商標を取りました。テスト販売したところ、完売し、好評なので、
現在桐箱のパッケージバージョンを製作中で、年内には販売開始します。
特に好評なのは、新宮禅寺の護符入り禅心茶です。
住職は1つ1つ祈祷していただいた護符を桐箱に入れているモノです。
木箱のお茶はありますが、おそらく日本中探しても護符入りはあまりないものでないでしょうか?
また、カフェメニューは禅をコンセプトにラインナップ。例えばオリジナルの木の器で、
抹茶が飲めます。それもお客様自身で立ててもらうという体験型です。
(意外に、若い女性に人気が出てきてインスタグラムに投稿も多い)現在大変人気で、
木の器を欲しいという方が増えてきており、これもオリジナルとして販売する計画にしています。
 
茶房はちサイト
 
茶房はち.jpg
 
Q 現在、パンフレット「ZENSTYLE」を作成中とのことですが、どんな内容になりますか?
いつごろ発行の予定?どこで手に入りますか?詳細を教えて下さい。
 
「人吉禅スタイル」というブランド名で、今年2月よりコンセプトブックをテスト販売してみました。
これも好評で、現在再編集しているところ。再編集バージョンは来年春くらい販売を予定。
内容は、新宮禅寺の秘密や、禅の意味、人吉の他の禅寺のストーリー、
当ブランドのオリジナル商品のストーリーなど、
禅の女性雑誌並みのクオリティーを出そうと努力しています。
 
Q 現在、開発中のプロジェクトや商品などもあればご紹介ください。
 
人吉球磨活性ブランド第2弾として、「姫」ブランドを計画しています。
昨年文化庁「日本遺産」第1号認定にもなり、その日本遺産第1弾プロジェクトにしたい。
戦国・安土桃山時代に人吉に実在したお姫様のストーリーをベースに商品・サービスを計画中。
彼女と旦那である相良家20代相良長毎のストーリーは大河ドラマになりうるくらいに、
むちゃくちゃ面白いし二人の人生は素敵です。
 
Q これまでの活動で印象的だったエピソードなどあれば、ご紹介ください。
 
1:震災で被災された熊本市内の方が、カフェに来店され、禅のコンセプトの世界観に
「とても癒された」と言われたこと。
 
2:「人吉禅スタイル」のコンセプトブック、意外に、地元の人に好評だった。
地元の方が、郡市外の方に、「人吉の良さをうまく伝えるツール」が
これまだなかったということだと思う。
 
3:今回のプロジェクトを通じて、やはり若い世代は、これからの地域や自分らの生活に
危機意識が高く、なんとかしたいと思いの者が多い。ただ、それを表現する場所、
チャンスがないのだと痛感した。今回の取り組みに賛同してくれる若い人が多い。
裏返すと、行政や大人(50〜70代)の人たちの責任は重い、と思う。
と言って、人のせいにしても始まらないので、自分で動くことにしました。
 
Q そのほか、熊本県民にPRしたい案件があればお願いします。
 
人吉球磨は、今でこそ、熊本県の一部ですが、明治初期、一時「人吉県」が存在していました、
それはそれまでに「人吉藩」という独立国家が存在していたからです。肥後細川藩と同様に、
人吉相良藩だったわけです。
ひとくくりで「熊本」と言ってしまう考え方は、あくまで現在の行政単位なだけで、
しっかり地域を見れば、人吉球磨に限らず、文化、歴史、哲学、などなど、
それぞれ独自のものがあります。
(批判を承知で言うと、今回の震災も熊本地震と名前がついてしまったことで、
全く被害がなかった人吉球磨の観光業も巻き込まれてしまった)
先月、日本トップのデザイナー・原研哉先生、そして日本トップの建築家隈研吾先生も
人吉に日本遺産ブロジェクトの一環で来ていただきました。
人吉のことを「初めて来たが、正直驚いた。
東京、京都に継ぐ、3rdPLACE、4thPLACEになれる」と絶賛されてました。
ここでも「日本を代表する地方にする」という目標に勇気をもらえた気がしました。
これから次々に人吉球磨で新しいチャレンジを始めます。
ぜひ注目してほしいと思います。
 

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