「NPO法人カタリバ」 熊本コラボ・スクール ましき夢創塾

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会社のヒミツ
企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ 特別編」。
特別編では、熊本地震からの復興に関する話題もお届けしています。
 
今日は高校生へのキャリア学習プログラムや、被災地の放課後学校を運営している
「NPO法人カタリバ」 熊本コラボ・スクール ましき夢創塾の井下友梨花さんに
益城町の学習支援プロジェクトについて、お話を伺いました。
 
Q 「NPO法人カタリバ」の基本情報を教えて下さい。
 
東京都杉並区高円寺南3-66-3高円寺コモンズ2F
TEL:03-5327-5667FAX:020-4665-3239
オフィシャル・サイト:http://www.katariba.or.jp/
 
Q まず、「NPO法人カタリバ」の通常の活動について教えてください。
 
カタリバは2001年11月1日に、当時まだ大学生だった今村久美と三箇山優花によって立ち上がった団体です。たまたま出会った環境や受けられた教育によって、描き出せる未来のイメージさえも違ってしまうことに疑問を持ったことが設立のきっかけでした。
家庭環境や教育機会によって生まれる違いを何とかしようと、「べき論」ではなく「ナナメの関係と本音の対話」を軸に、新しい可能性に出会える機会の創出を目的とした様々な教育活動を展開してきました。
高校出張授業「カタリ場」のほか、2011年の東日本大震災以降は被災地の放課後学校「コアボ・スクール」を宮城県女川町と岩手県大槌町の2拠点で運営。その後も、さまざまな社会課題の変化に対応し、高校生が身の回りの課題解決に向けて実際に行動を起こす「マイプロジェクト」、中高生のための秘密基地「b-lab(東京・文京区)」、教育の魅力化を地域の魅力化につなげる「おんせんキャンパス(島根県雲南市)」、貧困家庭の子ども支援「アダチ・ベース(東京・足立区)」など、活動の幅を広げています。
設立以来、すべての活動を通じて大切にしているのは、「ナナメの関係」と「本音の対話」を軸にしたアプローチです。これらの活動を通じて、あらゆる環境に生まれ育っても「未来は創り出せる」と信じられる社会づくりを行っています。
 
Q 「NPO法人カタリバ」の活度について、いくつか具体例をあげて説明をお願いします。
 
カタリバが立ち上がった当初から続けている活動に「カタリ場」という活動があります。大学生や社会人を中心に構成され、特訓を受けたボランティアスタッフが高校へ出向き、本音の対話を通して高校生に自分たちのことや将来のことを考えるきっかけを届けています。社会に出る前の「最後の砦」とも言える高校時代に、多様な人と出会い、話を聞いたり、聞いてもらう機会があれば、主体的に人生を歩めるのではないかとの思いから始まりました。しかし、カタリバが活動を開始した15年前は学校で学校外の団体が授業を行うのは容易ではなく、なかなか実施させてくれる学校が見つかりませんでした。それでも、少しずつ「やってみよう」とおっしゃってくださる先生を増やし、そこから口コミで実施校を増やすことができました。カタリ場はこれまでに全国1300校22万人の高校生に授業を届け、その数はさらに広がりをみせています。
また、ここで培った「ナナメの関係」と「本音の対話」によるアプローチは、その後社会課題の変化に伴って広がったすべての活動においても、大切な軸となっています。
2011年3月11日の東日本大震災を受けて、カタリバは新たな事業を展開することとなります。スタッフ総出でかき集めた募金を手に、代表理事・今村自ら避難所に住まわせてもらいながら、各避難所を渡り歩いて認知調査をすることから始めました。
 
そんなある日、仮設住宅の前で男の子が勉強していました。
避難所は消灯時間も早く、子どもたちがゆっくり落ち着いて勉強できる場所がありませんでした。加えて、多くの塾も被害に遭っていたので、学びの場所もありませんでした。避難所のみならず、仮設住宅でも子どもたちにとって安心して勉強したり遊んだりできる場所は当時はどこにもありませんでした。そこで、子どもたちが落ち着いて学べる環境を作ろうとして始まったのが、現在東北の2拠点および熊本・益城町で運営する「コラボ・スクール」です。
 
●地震後の益城町の様子

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Q 「NPO法人カタリバ」は、熊本地震支援として中学生向けの夜間教室「ましき夢創塾」を
スタートさせたそうですが、その目的やきっかけなどをお願いします。
 
熊本地震発生後すぐに緊急支援を行いながら、教育ニーズの調査を行ってまいりました。その結果、子どもたちに安心して学べる場と居場所支援が必要だということになり、「ましき夢創塾」を開始しました。
カタリバが震災直後から支援を行う益城町は、熊本県内でも特に被害が甚大だったエリアです。全壊家屋率は約3割。4月16日の本震の翌日には町民の約半数にあたる16,050人が避難を余儀なくされました。現在ではすべての避難所は閉鎖されましたが、益城町の全住民の10%以上が仮設住宅での生活を始めています。また、親戚や祖父母の家から通っている生徒も少なくありません。こうした環境の中、子どもたちが震災の悲しみを強さに変えていくため、「ましき夢創塾」では、心のケアを目的とした学習支援と居場所の提供を行っています。また、学校支援の一環として、職場体験や文化祭など学校行事のお手伝い等もしています。
 
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Q 中学生向けの夜間教室「ましき夢創塾」では、どんな授業が行われているのですか?
 
震災や避難生活でストレスを溜めた心をケアすることを目的に、被災した生徒が多く通う益城町内の2つの中学校で放課後の部活動の時間帯に学校内での学習会と、テクノ仮設団地での夜間学習会を開催しています。東北での支援の際は、津波で塾を流された塾の先生などもいらっしゃった関係で、被災した塾の先生も一緒に、授業形式で学習の場を確保していました。ただ、益城町の場合は、そもそも塾を本業とされている方が多く、カタリバとしてはその邪魔をするつもりはありませんでした。ですので、自習ができる場所の確保という形で、支援を行っています。「塾」という名前がついていますが、教えることはあえてしていません。地震の影響で落ち着いて家庭で学習をするのが難しいという課題に対して、自分のペースで落ち着いて学習ができる場所、また同じ環境の友人と集まって雑談をしたりカタリバのボランティアのような少し年上のお兄さんお姉さんと気軽に話せるような居場所を提供してます。
 
Q 「ましき夢創塾」ではどんな体制でのぞんでいますか?
 
常駐の職員が2名です。私は5月まで広告の営業を札幌でしていましたが、地震を機にカタリバに転職し、熊本で働いています。もう一人は、芳岡という男性スタッフですが、もともと東北のコラボスクールで働いていて、地震を機に熊本に場所を移して活動を行っています。また、熊本市内の大学生を中心とした20代30代のボランティアが約20名ほどが入れ替わりで学習会に参加しています。大学の長期休暇中は、東京や九州他県からの大学生の参加も多いです。
 
Q 「ましき夢創塾」へのボランティア参加の資格は?受付について詳細を教えてください。
 
参加資格というと大げさですが、カタリバが大事にしている「ナナメの関係」という考え方があります。例えば中学生が夢を描いたとき、親や先生は「縦の存在」としてなかなか話を真剣に聞いてくれなかったり、夢によっては一蹴されたりすることもあると思います。また、「横の関係」の中学の友達に夢を話したとして、共感はされたとしても現実的なアドバイスをくれることはないでしょう。そこで、「ナナメの関係」にある少し年上のお兄さんお姉さんと話すことで、例えば同じ夢を持ったほかの大学生の事例が聞けたり、もっと他の視点がもらえたりするかもしれません。そういった、少し先を生きている存在として、フラットに生徒と関われる方とぜひ一緒に活動をしたいと思っています。
 
インターン採用ページ:http://www.katariba.or.jp/intern/kumamoto/
 
Q 「NPO法人カタリバ」の今後の活動予定などありましたら、ご紹介ください。
 
益城町での活動としては、12月末に、東日本大震災を経験した東北の高校生と益城町の中高生が交流するイベントを開催する予定です。東北のコラボスクールに通う高校生が、自分たちも熊本で何かできないかと志願してきました。また、学校行事支援としては職場体験・職場訪問のお手伝いも予定しています。学習会では、中学3年生が受験を控えておりますので、しっかりと学習できるようサポートしていきたいと思います。
 
Q 「NPO法人カタリバ」のこれまでの活動で印象的だったエピソードなどあれば、ご紹介ください。
 
学習会を5月から継続して開催していく中で、生徒が学校の定期テスト後に、テストの解答用紙を私のところによく持ってきてくれるようになりました。「テストでこんなに点数とれたよ」と嬉しそうに報告したり「惜しかったけどここ間違えちゃった」と恥ずかしい部分をさらけ出してきたり、それぞれがこっそり見せてくれます。日常のふれあいから少しずつ信頼関係ができてきたのか、なかなか他人に見せることがないであろうテストの報告が来たり、間違えた部分の振り返りを一緒にできたりするようになったのが印象的でした。夢創塾に、自ら通ってくる生徒たちの勉強を見守る一方で、夢を語り合ったり、恋バナをしたり、進路の悩みを聞いたり、勉強のコツの話をしたりしながら、日々を過ごしています。
 
 
Q 今後の「NPO法人カタリバ」の目標などあればご紹介ください。
 
どんな環境に育っても、「未来は作り出せる」と信じられる社会を目指し、これからも「ナナメの関係」と「本音の対話」を軸とした教育プログラムを届けていきたいと考えています。
 
 
Q 「NPO法人カタリバ」から熊本県民にPRしたい案件があればお願いします。
 
東北では5年が経過しましたが、子どもたちの多くはいまだ仮設住宅での生活を余儀なくされています。復興は道半ばの状況です。人々が日常を取り戻すにはまだまだ時間がかかると言われています。ここ熊本では、今まさにいつまで続くかわからない仮設住宅が開始したばかりです。
なかなか進まない復興や長引く仮設住宅での生活が子どもたちに与える影響は少なくありません。だからこそ、カタリバではこれからも被災地域に暮らす子どもたちに寄り添い、悲しみを強さに変える学びの機会と居場所を届けていきたいと考えています。しかしながら、コラボ・スクールの運営には1校あたり年間約6500万円がかかります。しかし、国からの補助もこの先どうなるか不透明です。熊本にいたっては、コラボ・スクールの運営はすべて皆様から寄せられるご寄付だけで運営しています。
震災についてニュースなどでも耳にする機会が減った今だからこそ、子どもたちには根気良く寄り添い続ける必要があります。その支援を支えてくださるのは、皆様から寄せていただくご寄付に他なりません。
これからも活動を継続していくためにも、ご協力をお願いいたします。
 
「NPO法人カタリバ」 オフィシャル・サイト:http://www.katariba.or.jp/
 

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毎週月曜~木曜の 7:30~10:34
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