熊本市動植物園 井手眞司さん

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ヒューマン・ラボ
あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
熊本地震の影響で臨時休園していましたが、
2月25日から土曜、日曜、祝日に限定して一部エリアの部分開園が
スタートしたということで、
今日は熊本市動植物園の井手眞司さんにお話を伺いました。

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●ご出演者のプロフィール
 
名前:井手眞司(いでしんじ)
所属:熊本市動植物園飼育展示第1班
プロフィール:
S63.3月日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)獣医学科卒業。
同4月熊本市役所入庁後、食肉衛生検査所配属。
H9.4月動物愛護センターに異動。
H154月食肉衛生検査所に復帰。
H19.4月動植物園に異動。
H234月に再度動物愛護センターに復帰、殺処分ゼロの取組に携わる。
H19.4月動植物園に復帰。
 
ホームページ、ブログなど:http://www.ezooko.jp/
 
Q「熊本市動植物園」の基本情報をお願いします。
 
所在地:熊本市東区健軍5丁目14-2
問い合わせ先:TEL 329-3298 / 368-4416 / FAX096-365-5671
スタッフの人数:約70名
動物数哺乳類:40種236頭
鳥類:57種360頭
は虫類:16種70頭
両生類:2種25頭計115種691頭(2月28日現在)
 
Qゲストの方の「熊本市動植物園」でのお仕事は何ですか?
どんな点が苦労しますか?どんな点がやりがいですか?
 
■肩書きは飼育展示第1班の技術主幹兼主査(係長)
 
■飼育展示第1班には9名の飼育職員在籍。
(飼育担当者は嘱託職員まで含めると約45名)
 
■班での担当動物は肉食系猛獣(ライオン、ユキヒョウ、アムールトラ、ウンピョウ、ホッキョクグマ)、クマ、シマウマ、チンパンジー、キンシコウ等のサル類。
 
■飼育展示第2班(ゾウ、キリン、シカ類(シフゾウ、ニホンジカ、シロダマジカ)、カバ、サイ(現在はいませんが)、カンガルー等を担当)と診療教育班(動物ふれあい広場や動物の診療を担当)と協力しながら行っている。
 
■苦労する点としては、昭和44年開園の動物園であるため施設が古く、極端に言えば動物を檻で囲んで展示するだけの施設が多いため、動物の本能行動や生態等を引き出す見せ方がしずらく、また、動物福祉の観点からも現在の考え方にはマッチしていない。
そこで、少しでもそれらの点に気をつけながら展示するよう気をつけている。
 
■再編整備として順次施設の更新が行われているが、熊本地震の影響で復旧第一となっているため現在休止中。
 
■昨年の熊本地震後、休園していたが、やっと2月25日から土日祝日限定ながら部分的に開園することができた。
飼育員は動物の世話をし、それをお客さんに伝えるまでが仕事であるので、笑顔が溢れ会話が聞こえる園内に戻ってうれしい。
 
Q「熊本地震」での担当業務の被災状況は?
 
■動物ゾーン全体として液状化が顕著で地割れや隆起、地盤沈下が起こっている。
動物舎施設自体の歪み、傾きも多い。
 
■また、液状化に伴う給排水管の断裂・破損も各所で起こっており、水が使えない、排水ができないなど飼育業務自体にも影響が出ている状態が続いている。
 
■猛獣舎の被害が著しかった。
特にユキヒョウ舎放飼場(運動場)の天井部分の鉄骨が裂けて大きな間隙ができてしまったため放飼場に出すことができず、また大きな余震が続いていたため万が一の脱出がないように猛獣4種5頭が九州内の4つの動物園に緊急避難措置として一時預かりをお願いしている状況。
 
●園内の液状化・地盤沈下・隆起

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猛獣舎付近の地盤沈下・亀裂・施設の損壊
猛獣舎付近の地盤沈下・亀裂・施設の損壊.jpg
 
友誼亭の倒壊
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Q「熊本地震」の際のエピソードなどあれば願いします。
 
■通常は大きな地震の後は余震はあるものの段々と時間をかけて終息していくものと思っていただけに、2回目の本震は本当に予想外だったし、2回目のダメージが園に及ぼした被害は非常に大きかった。
 
■前震発生当日は8時頃帰宅し、夜ご飯を食べながらビールを飲んでいたときに大きな揺れが発生。
近所の屋根の瓦が落ちる音がけたたましく響く中、動物、特に猛獣系の動物が脱出していないかが一番の気がかりで、即座に他の飼育2班の係長に連絡するとともに、飼育員を緊急招集をかけた。
 
■園到着した22時過ぎから駆けつけた飼育員で手分けしての施設損壊状況、動物の脱出の有無および動物の安否確認を実施した。
その最中も激しい余震が続き、真っ暗な夜の空間に緊急地震速報が幾度となく響き渡っていたことを鮮明に覚えている。
 
■また、飼育動物の中でも知能が高いといわれているチンパンジーは地震後は余震のたびに鉄格子を強く握り締め体を硬くして極度の緊張の中にいるのが見て取れた。
 
■アフリカゾウは2~3日は軟便、下痢が続きやはり余震のたびに「パオーン」とけたたましく鳴いていたことを覚えている。
 
Q現在、「熊本市動植物園」は部分開園していますが、詳細をお願いします。
 
■@部分開園の概要
・開園アリア:植物ゾーン⇒動物ふれあい広場⇒ゾウ、キリン(Uターン)
*パプア爬虫舎除く
・開園する日:土日祝日
・出入口:南門、臨時門(バス回転場付近)
・駐車場:有料
・入園料:無料
*西門復旧後は入園料は100円減免での有料
*正門復旧後は平日も通常開園(入園料は通常どおり)
 
Q現在、全面開園に向けお仕事されていると思いますが、復興への見通しはどうなっていますか?
いつごろ全面開園?今後、どんな点が課題でしょうか?
 
■来年度は国の補助金を使わせていただきながら施設、園路の改修を行い、目標としてH30年4月に全面開園を目指す。
 
■国の復興補助金を活用に当たっては、来年度早々から査定が始まるので、それに向けた準備をしているところ。
 
■まずは、始まったばかりの部分開園をしっかりやりながら、工事の進み具合によって開園エリアを拡大していく予定。
 
Q寄付をつのる「復興サポーター制度」をスタートさせていますが、詳細をお願いします。
 
募集期間平成29年2月25日(部分開園日)から全面開園の前日までの間
設定金額個人1口5,000円 / 団体1口20,000円
サポーター特典
(進呈)・記念品(個人サポーターのみ):缶バッジとぞうふんはがき
 
(イベントへのご招待)
・部分開園時「動植物園被災地観覧ツアー」
・全面開園前「リニューアル猛獣舎の内覧会」
 
(その他)
・全面開園後園内にお名前又は団体名を掲示(3年間)
 
受付窓口南門(当面の間)。なお、西門復旧後は西門でも受付
受付時間開園日の9:00~16:30まで
 
Q「熊本市動植物園」のスタッフならではの「動物園おススメポイント」を教えてください。
 
■下記のイベントなどを実施しています(詳細は動植物園ホームページでご確認ください)
・動物ふれあい広場でのモルモットのタッチング(先着200名、10:30~11:00、13:30~14:00、14:30~15:00の1日3回)
・動物ふれあい広場でのヤギ、ヒツジとのふれあいタイム(10:30~12:00、13:00~15:30)
・ゾウガイド(13:30)
・キリンガイド(14:30)
・その他、動物ガイドや動物資料館でのガイド等
 
■毎日朝夕に行っているゾウの訓練を屋内観覧場から見ることができます。
その際、可能な限り訓練の解説を行っていますので、是非見に来てください。
ゾウの耳から採血の訓練をしたり、ゾウがお座りをしたり、ごろんと横になったりします。
朝の訓練が9時20分ころから40分くらいまで、夕方が16時15分~20分くらいまで。ゾウの屋内観覧場にお越しください。
なお、この訓練解説は毎回できるわけではないので動植物園のホームページなどではお知らせしていません。
 
■現在の部分開園ではふれあい広場とゾウ・キリンしか見ることができませんが、モノレールや新幹線などの乗り物に乗っていただくと開放していないエリアの動物たちが見れます(ニホンジカ、エランド、シフゾウ、カピバラ、オタリア、チンパンジー等)
 
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Qお仕事を通じての苦労、やりがいとは何ですか?
 
■苦労することは相手が野生動物であること。
ペットと違い野生動物なので治療等思いどおりにならないことが多い(投薬するだけでもえさの中に忍び込ませるなど、方法等を考えながら試行錯誤しながら行っている)。
 
■動物のため、お客さんのため精一杯することが大事。
今回熊本地震でお客さんのいない動物園の寂しさを改めて実感した。
部分開園に当たってガイド等を通して動物のこと自然環境のことを伝えることまでが自分たちの仕事であることを改めて感じた。
 
Qこれまでのお仕事を通じてのもっとも印象的なエピソードは何ですか?
 
■取り立ててのエピソードではないが、一般の方からするとたまにしか見れない園内の動物たちと毎日接していると、そのありがたさに何となく鈍感になっていることに気付くときがある。
特に北海道からわざわざホッキョクグマのマルルに会いにきてくれたり、ユキヒョウを見に来てくれたり。逆に言うと、全国には熱狂的なファンがいるということを痛感した。
 
Q最後に、リスナーにPRしたいこと、今後の活動予定、お知らせなどあれば教えてください?
 
■熊本地震により休園状態でしたが、10ヶ月ぶりにやっと部分開園にこぎつけることができました。
今後は施設の修理、改修具合に応じて段階的に開園エリアを広げていく予定です。
最終的にH30年4月を目標に全面開園をめざしていきますので、応援よろしくお願いいたします。
 
■観覧できない動物たちは動物園のホームページでご紹介してますので、是非ご覧ください。
 
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「熊本地震」から1年を迎えるこの4月にFMKではさまざま番組をオンエアしますが、
4月16日(日)午後7時からは『FMK熊本地震復興応援プロジェクト~with~特別番組』をオンエアします。
熊本地震の被災から立ち上がる「熊本市動植物園」を取材した番組です。
4月16日(日)午後7時です。是非、お聴きください。
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。

FMK Morning Glory

「熊本の朝をさわやかに!」を合言葉にお届けしています。
毎週月曜~木曜の 7:30~10:34
パーソナリティ
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