「熊本こころのケアセンター」矢田部裕介さん

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月曜対談
「ひと」「もの」「こと」に関わるさまざまなトピックを切り取っていくインタビュー「月曜対談」。
熊本地震被災者の心のケアを専門的に行う機関として、去年10月「熊本こころのケアセンター」が開設されました。
センター長の矢田部裕介さんにお話を伺いました。

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●ご出演者のプロフィール
 
名前:矢田部裕介
所属:熊本こころのケアセンター
プロフィール:
H13年3月熊本大学医学部卒業
H13年4月熊本大学医学部附属病院神経精神科入局
H23年4月熊本大学医学部附属病院神経精神科助教
H26年4月熊本県精神保健福祉センター次長
H29年4月熊本こころのケアセンターセンター長
 
<資格・専門医など>
精神科専門医、日本老年精神医学会専門医、精神保健指定医、災害派遣精神医療チーム(DPAT)アドバイザー
 
Q「こころのケアセンター」の基本情報をお願います。
どんな活動をしている施設ですか?
 
【正式名称】熊本こころのケアセンター
【所在地】〒862-0920熊本市東区月出3-1-120(熊本県精神保健福祉センター2階)
【運営時間】平日8:30~17:15(電話相談9:00~16:00)
【問い合わせ先】096-385-3222(相談専用ダイヤル)
【ホームページ】http://www.kumakoko.jp/
 
Q「こころのケアセンター」が設立されたきっかけは?
 
熊本地震の影響から、今も5万人近い方々が仮設住宅やみなし仮設住宅などでの不自由な生活を余儀なくされていますが、災害復興期には、こうした不自由な生活環境や生活再建に絡む問題から、心の不調を来しやすいため、そのケアが必要となります。
そういった背景を踏まえ、熊本地震において、その被災者の心のケアを専門的に行う機関として、熊本こころのケアセンターが平成28年10月に開設されました。
当初は地震直後、または年度途中の開設ということもあり、保健師2名という人員体制でスタートしましたが、本年度から常勤の精神科医、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士が配置され、多職種専門チームとして、被災者の方々のこころのケアに取り組んでいます。
 
Q「熊本地震」から1年が経過しました。
「こころのケアセンター」への相談はどんなものが多いですか?
 
相談電話を開設しておりますが、自宅の再建をめぐる悩みから気分の落ち込みや不安、眠れない、やる気が出ないといったメンタル不調をご相談される方が多いです。
こころの不調だけではなく、めまいやだるさといった身体不調がみられる方もおられますし、お子さんの変化が気になるお母さんからのご相談等、ご家族からのご相談もございます。
熊本こころのケアセンターでは、電話相談の他、来所相談、あるいは市町村の保健師さん等からの依頼に応じて訪問相談やケース対応の助言等も行っています。
訪問相談には、うつ病やアルコール依存症を抱えたお一人暮らしの方が多いです。
 
Q地震から1年、この時期に、特に注意すべきことは、どんなことがありますか?
 
まず、1年という節目のこの時期に、当時を思い出して恐怖心や不安感が再燃してしまう「アニバーサリー反応」が起こることがあります。
 
それと、1年も経ちますと、被災された方の生活再建において、うまくいっている方とそうではない方との格差が明確に見えてきます。
生活再建がうまく進んでいない方が抱える孤独感や取り残され感は時を経るごとに大きくなっていきますので、注意が必要です。
 
Q上記の件について、今後、どんな対応をしてゆけばいいのでしょうか?
 
アニバーサリー反応については、テレビ等で当時の映像が繰り返し流されることが原因のひとつとされていますので、こころの不調を感じる方はメディアを避けるようにするのが良いと思われます。
その他、リラックスできることをしたり、楽しい予定を入れるなどして、意識し過ぎずに普段通り過ごすことを心掛けると良いです。
アニバーサリー反応は誰にでも自然に起こり得るものなので、気持ちがザワついても慌てず冷静に対処してください。
 
生活再建の格差に基づく孤独感や取り残され感に対しては、生活再建の支援が一番なのですが、一長一短に行かないことも多いかと思われます。
周囲がそういう方々の孤独な心情に共感しつつ、見守りや声掛けがなされるような支援体制あるいはコミュニティ作りが必要です。
 
Q続いては、地震とは別の話題になりますが、この時期「五月病」と言われる人が多いと聞きます。
「五月病」は専門的にはどう定義される症状ですか?
 
4月に入学や入社、異動がありますが、新しい環境に適応しようと頑張りすぎた結果、ゴールデンウィーク明けの5月頃から精神的疲労がドッと出ることが多く、これを「五月病」と呼びます。
 
疲れがとれない、やる気が出ない、眠れない等、様々な症状が起こり得ますが、「五月病」という病名があるわけではなく、医学的には適応障害やうつ病と診断されることが多いかと思われます。
 
Q「五月病」の対策などありますか?
 
溜まった疲れやストレスをきちんと処理することかと思います。
4月はどうしても気が張っていたりするので、普段何気なく行っている休息やストレス解消が十分にできていなかったりします。
今現在、いつもより強いストレスや疲労を感じている方はゴールデンウィークを待たずに休みましょう。
 
Q熊本県民にPRしたいこと、今後の活動予定、お知らせなどあれば教えてください?
 
身体の不調と比べると、こころの不調はほっとかれがちですが、予防や早期対応が身体の不調以上に重要です。
また、自分はあまり被災していないから、と相談をためらわれる方もおられるかもしれませんが、こころのケアは被災の大小に関わらず必要です。
ちょっと気になるというくらいでも、気軽に相談電話等をご利用下さい。
ご本人でなくとも、ご家族に気になる方がいるというご相談も承っています。
 
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