「いつまた、君と ~何日君再来~」

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キネマのススメ

 
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「いつまた、君と ~何日君再来~」です。
 
演じるだけでなく、監督やプロデュースに携わる俳優って、最近増えていますよね。
ハリウッドでは、監督としてアカデミー賞に2度輝いたクリント・イーストウッドや
プロデューサーとして、やはり2度のアカデミー賞に輝いたブラッド・ピットが有名です。
今年のアカデミー作品賞を受賞した「ムーンライト」は、ブラッド・ピットが製作総指揮をつとめた作品です。
俳優としてだけだなくプロデューサーとしても一流です。
日本でも、世界的に評価される北野武や、最近では、監督の他に移動映画館を主宰する
斉藤工などが、俳優以外の活動で、そのプロデュース能力を高く評価されています。
昔は、大物俳優が、製作資金を集めるために、看板替わりに、製作に名前を連ねることがありました。
名前は偉そうですが、実際は、なにもしていないことが多かったのに比べ、最近は、クリエィティブな作業にも積極的にかかわる俳優が増えてきたと言われています。
 
今日ご紹介する「いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」は、
俳優・向井理が企画に携わった映画で、なんと原作は、彼の実の祖母である、芦村朋子さんの手記です。
彼が大学生のころ、朋子さんの卒寿(90歳)のお祝いに、朋子さんが書いた手記を本にして贈ろうと、手書きをパソコンに書き起こして出版社に送り、自費出版したもの。
映画の中でも、その手記を執筆する姿が描かれています。
 
向井理は、デビュー以来俳優を続ける中で、戦中戦後を生き抜いてきた祖母たちの姿を、なんとか映画化できないかと模索していたそうで、朝ドラ「ゲゲゲの女房」の脚本家、山本むつみに手記を渡して、「脚本を書いて欲しい」と依頼し、主演した映画のプロデューサーを口説きおとして、なんと7年がかりで映画化を実現させました。
 
映画は、大学生の理が、病に倒れた祖母の代わりに手記をまとめるところから過去へ遡り、祖父と祖母の出会い、南京への移住、戦争が終わり、中国から戻ってきたものの事業がうまく行かず、苦労しながらも懸命に生き抜く家族の姿が描かれます。
 
主人公の朋子を演じるのは、尾野真千子、夫の吾郎を、映画を企画した向井理・本人が演じます。
また現代の朋子を、先日亡くなった野際陽子が演じていて、この作品が最後の出演映画としても話題になりました。
 
その他、イッセー尾形や岸本加世子など演技派が脇を固めています。
特に、イッセー尾形は、主人公・朋子の昔かたぎの頑固な父親を演じていて、前半パートでの嫌われ役を一手に引き受ける感じの憎まれ役なんですが、映画を最後まで見ると、それだけでない厚みのある人物として好演しています。
監督は、「神様のカルテ」「サクラダ・リセット」など話題作の多い深川栄洋です。
 
この映画には、歴史に残るような有名な人物は出てきません。
しかし、戦中、戦後を生き抜いた庶民の姿が克明に描かれています。
大作映画のようなスペクタクルな場面こそ登場しませんが、日々を懸命に生きる人々の姿が繊細なタッチで描かれているので、まるで家族のアルバムを見ているような「ほっこり」した気持ちで映画を観ることができます。
 
企画した向井理が、「すべての人にファミリーヒストリーがあり、観る人すべてが主人公」と語る通り、市井の人々が体験した激動の時代を思うとともに、自分の家族の歴史も振り返りたくなる作品です。
 
この機会に、おじいちゃん、おばあちゃんの昔話に、耳を傾けてみるのもいいかもしれませんね。
きっと、この映画のような愛すべき作品になるような わが家のエピソードが聞けるかもしれません。
映画を観た後、家族で語りあいたくなる・・・・そんな作品です。
 
今日ご紹介した映画「いつまた、君と ~何日君再来~」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
で、現在公開中です。
 
「いつまた、君と ~何日君再来~」オフィシャルサイト 
 
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