「ドリーム」

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キネマのススメ


毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「ドリーム」です。
 
この映画は、アメリカ航空宇宙局(NASA)での黒人女性たちの奮闘を描き、今年のアカデミー賞の作品賞、助演女優賞、脚色賞にノミネートされた作品です。
全米では、あの「ラ・ラ・ランド」を超えるヒットになった作品で、実話を基に描かれた内容が素晴らしいとうことで、親が子供を連れて映画館にいったり、学校の授業で鑑賞したりと、教科書で学ぶより、ずっと学習効果が高いと、評判になった作品です。
映画で描かれたのは、「差別」や「偏見」に負けず、夢を実現していった女性たち。
大統領選挙から「分断」が進んだとも言われるアメリカで、こういう映画がヒットしたというのは大きな意味があると分析する人もいます。
 
この映画の原題は「HIDDEN FIGURES」。
“隠された人たち”、“知られざる人たち”という意味です。
物語の舞台となる1960年代初め、アメリカはソ連とのし烈な宇宙開発競争を繰り広げていました。
1958年、ソ連が世界初の人工衛星・スプートニク号を打ち上げたことに焦ったアメリカは、ソ連よりも先に有人宇宙飛行を成功させようと「マーキュリー計画」を進めていました。
この「マーキュリー計画」については、1983年に「ライトスタッフ」という映画になっていますが、実はそのロケットの打ち上げに必要不可欠な計算を行うため、計算係として大勢の黒人女性たちがたくさん雇用されていました。
 
この映画「ドリーム」は、その中でも特に歴史的な存在となった、実在する3人の女性にスポットを当てています。
それが、数学の天才・キャサリン、黒人女性グループのリーダー・ドロシー、エンジニアを目指す・メアリーです。
中でも複雑な計算ができるキャサリンは、有人飛行の軌道計算のために、宇宙特別研究本部に特別配属されますが、そこは白人男性しかいない世界。
職場のビルには黒人女性のトイレすらなく、コーヒー・サーバーすら、「有色人種用」とラベルの張られた別のものを使わなければなりません。
そんな過酷な環境の中、キャサリンは、決して諦めることなく、ひたすら自分の役割に取り組み、やがて、周囲のスタッフたちに認められていきます。
 
キャサリンを演じるのは「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のタラジ・P・ヘンソン、ドロシー役には「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のオクタビア・スペンサー、メアリー役には歌手で、アカデミー作品賞に輝いた映画「ムーンライト」にも出演している、ジャネール・モネイが扮しています。
 
女性キャストが中心のドラマですが、大物男性キャストも登場します。マーキュリー計画の責任者アル・ハリソンを演じるのは、あの大スター・ケビン・コスナーです。
あの「ボディガード」の大ヒットから四半世紀。しぶーい中年になったケビン・コスナーがとても魅力的です。
最初は、女性スタッフの能力を低く見てていた彼が、次第にその実力を認めていく過程が丁寧に描かれていて、かなり感動的です。
 
この映画の監督は、「ヴィンセントが教えてくれたこと」のセオドア・メルフィ。
また、この物語に感銘を受けたという大スター、ファレル・ウィリアムスが音楽と製作を担当しています。
当時のヒット曲などに混ざって、ファレルが作った60年代風のナンバーがたくさん流れてきて、音楽の面でもかなり楽しめる作品になっています。
ちなみに、この映画のモデルであるキャサリンは、現在98歳で、今も健在。
今年のアカデミー賞に、映画のキャストたちと登場して、全米の話題になりました。
 
アメリカではアカデミー賞にノミネートされ、あの「ラ・ラ・ランド」を超えるヒットとなったにも関わらず、黒人女性の話で、主演も監督も日本では有名ではない
という理由から、日本公開がなかなか決まらなかったというこの映画。
一旦、日本版のタイトルが「ドリーム  私たちのアポロ計画」と発表されました。
配給会社は、「日本の観客に広く知ってもらうための邦題として、宇宙開発のイメージを連想しやすい『アポロ計画』という言葉を選んだ」ということでしたが、これがSNS上で大論争になりました。
「『アポロ計画』じゃなくて『マーキュリー計画』なのに・・・・」という意見が多かったようです。
結果的に「私たちのアポロ計画」という部分が削除されて、シンプルに「ドリーム」というタイトルに落ち着いたとのこと。
この日本版のタイトルに関する論争が、この映画の宣伝にかなり貢献したので、ある意味、論争を狙った配給会社の戦略だったのかもしれません。
 
「ドリーム」をご覧になった方には、おススメのもう一本の映画があります。
先ほどもご紹介した1983年の映画「ライトスタッフ」です。
「ドリーム」で描かれたのと、ほぼ同じ時代を描いていて、登場人物も一部ダブっています。
「ドリーム」は、地上のバックアップ・スタッフを中心に描かれていますが、「ライトスタッフ」は、宇宙飛行士を中心にした作品になっています。
「ドリーム」のクライマックスのジョン・グレンの宇宙飛行の場面は、「ライトスタッフ」にも登場していて、両方の作品を観て、舞台裏がわかると、さらに面白さが増すはずです。
 
様々な差別の壁を乗り越え、成功をつかみ取った女性たちの姿を、描いた「ドリーム」。
ぜひスクリーンでご覧になってください!
 
今日ご紹介した映画「ドリーム」は、
■TOHOシネマズ 光の森
で、現在公開中です。
 
「ドリーム」オフィシャルサイト
 
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