「KUBO / クボ 二本の弦の秘密」

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キネマのススメ


毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」です。
 
この作品は、「コララインとボタンの魔女」で高い評価を受けた、アメリカのアニメーションスタジオ「ライカ」の最新作。
最近では珍しいテクニックとなったストップモーションアニメで描かれた世界。
舞台は、なんと中世の日本。
第89回アカデミー賞では、「ズートピア」や「モアナと伝説の海」とならんで長編アニメーション賞の候補にもノミネートされた、話題作です。
 
“ストップモーションアニメ”は、人形(パペット)を1コマずつ動かしながらカメラで撮影しては、撮った画をつなげて製作する手法のこと。
スタジオ・ジブリなどの1枚、1枚、鉛筆で絵を描いていくタイプのセルアニメも、制作に時間がかかるんですが、このストップモーションアニメはそれ以上に手間がかかる映像表現です。
この作品では、一週間かけて製作された平均の尺(時間の長さ)は、たったの3.31秒!
総製作期間は、94週(およそ2年)、スタッフ全員で合計114万9015時間という途方もない時間をかけて作成されました。
 
さて、そのストーリーですが・・・。
村はずれで、母と二人で暮らす少年・クボは、一人で村に下りては三味線の音色で折り紙を自由に操る不思議な大道芸を披露して、生活していました。
幼いころ、闇の魔力を持つ祖父に狙われ、父と自らの片方の目を失ってしまったクボは、日が暮れる前に家に帰るように母と約束しています。日が落ちると、闇の世界を支配する「月の帝」(つきのみかど)がクボたちの存在に気が付いてしまうからでした・・・・。
ところが、母との約束を破ってしまったクボに闇の刺客たちが襲ってきます。
刺客によって母も失い、一人ぼっちになってしまうクボ。
両親の仇討を誓ったクボは、仲間に加わったサルとクワガタの侍と共に、母が最期に言い残した「3つの武具」を探すための旅に出ます。
 
監督のトラヴィス・ナイトは、日本文化に強い憧れをもっていて、とくに黒澤明監督や
宮崎駿監督を尊敬しているんだとか。
今回は特に、黒澤映画の構成や照明を作品の中に取り入れたほか、日本の伝統文化や芸術を徹底分析。
特に伝統文化のリサーチには力を入れていて、葛飾北斎や安藤広重の浮世絵や、三味線や折り紙といった小道具、人々が身に着ける着物の織や柄、履物と歩き方に至るまで、細かく調べ、物語の中に取り入れています。
そのため、外国人が描く日本にありがちな、突っ込みどころ満載のズレた日本ではない、懐かしい昔話のような世界が描かれています。
 
日本人でもここまで詳細に日本文化を描くのは難しいと思われるレベルまで、詳細に描かれた映像美。
制作スタッフの指針となったのは、日本の「ワビサビ」の心だったそうです。
 
登場人物の衣装も、ただ美しいだけではない使い込んだ深みのあるデザインになっているのが特徴。まさに「ワビサビ」です。
 
ちなみに、主人公の名前の「クボ」ですが、スタッフの知り合いに実際に「久保さん」という人がいて、音の響きがいいということで主人公の名前に採用になったそうです。
 
アメリカのアニメーションスタジオが、ここまで日本文化を愛し、素晴らしい作品を
作り上げてくれたことを嬉しく思う一方で、これを作ったのが日本の製作会社ではないことが、ちょっと残念に感じてしまうほど。
日本の文化を改めて見直す、芸術の秋にピッタリの1本ですよ!
 
今日ご紹介した映画「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」は、
■ユナイテッドシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
字幕版と日本語吹替え版の2種類が上映されています。
日本語吹替え版には、「アナと雪の女王」でもオラフを見事に吹き替えていたピエール瀧が出演して、キュートにクワガタ侍を演じています。
 
「KUB/クボ 二本の弦の秘密」オフィシャルサイト
 
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