毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。

毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。

 

今年最後にご紹介する作品は、Denkikanで現在公開中の「ゲット・アウト」です。

 

この映画は、今年2月にアメリカで公開され、低予算なのに大ヒットしたことで大きな話題を呼んだ作品です。

そのストーリーの独自さゆえに、公開後、口コミを中心にして話題が広がったのがヒットの要因と言われています。

ラスト近くで「どんでん返し」がある映画があります。

映画の醍醐味ともいえる最も映画らしい映画のジャンルですね。

「シックス・センス」、「ユージュアル・サスペクツ」、「ファイト・クラブ」などなど実にたくさんあります。

あまりにも有名になってしまったので、これは、ネタバレにはならないと思いますが、オリジナル版「猿の惑星」のラストの「自由の女神」の場面なんかも、「どんでん返し」の典型と言えるかもしれません。

実は、こういう映画って、紹介しづらいんですよね。

あまり詳しく紹介すると楽しみが半減しますし、かといって上辺だけを紹介しても、その作品の本当の面白さが伝わらない・・・・。

今日の「キネマのススメ」は、ネタバレしないで、どこまで作品の面白さに迫れるか・・・・そんなチャレンジングな紹介になります。

 

低予算で大ヒットを記録したこの作品。

監督は、アメリカのお笑いコンビ「キー＆ピール」として知られるほコメディアン、ジョーダン・ピール。

これが監督デビュー作で、製作費は450万ドル（およそ5億円）、キャストも無名という条件にも関わらず、公開されると全米初登場1位、8週連続ベスト10入り、世界興行収入2億5000万ドルという、特大ヒットになったんです。

さらに先日発表された「第75回ゴールデングローブ賞」でも、作品賞と主演男優賞にノミネートされています。

 

どんな映画なのかと言いますと、これが難しい。

ある意味「サスペンス映画」なんですが、「ホラー映画」の要素もあり、ブラック・ユーモアという視点からみるとまた皮肉の利いた作品とも言えます。

主人公の周りで「何かがおかしい」という得体のしれない恐怖がジワジワと積み重なり、ラストには、あっと驚く結末が待っています。

 

そのストーリーですが・・・、主人公は、ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の写真家クリス。

白人の恋人・ローズと付き合っている彼は、結婚の承諾を得るためにニューヨーク郊外にあるローズの実家を訪れます。

人種の違うカップルであることをローズの両親に受け入れてもらえるかどうか・・・・という不安な気持ちとは裏腹に、ローズの家族から過剰なまでの歓迎を受けたクリス。

しかし、そこに何人かの「黒人」の使用人がいることに、妙な違和感を覚えます。

翌日、ローズの亡くなった祖父をたたえるパーティに出席したクリスは、なぜか「白人」の参加者しかいないことに気が滅入ります。

そんな中、ただひとり「黒人」の若者を発見したクリスは思わず彼にカメラを向け、フラッシュをたいた途端、若者の態度が急変。

「ゲット・アウト！（出ていけ！）」とクリスに襲いかかってきます。

 

と、ここまであらすじをご紹介しましたが、ラストまでこの映画を観ると、この前半パートがまったく違ったものに見えてきます。

最初からずっと巧妙に伏線が張られていますので、普通に見えるシーンも、目を凝らして見逃さないで下さいね。

 

今ご紹介したあらすじでも、“白人”“黒人”という言葉が出てきましたが、この映画のポイントとなっているのが、“人種”です。

監督であるジョーダン・ピールは、母が白人で父が黒人という人で、白人にも黒人にもつまはじきにされ、どこにも居場所がなかったというバックグラウンドを持っています。

彼は、「オバマ大統領の時代に人種差別は終わったと言われていたが、日常生活では

残っていた。

そこでこの映画を作り始めたが、アメリカ公開の直前にトランプ大統領が当選したことで、やっぱり差別は隠れていたと確信」したんだとか。

また、現実にトランプ大統領が誕生したことで、ラストシーンを変更したと語っています。

 

トランプ大統領が就任して以来、アメリカの地下にくすぶっていた差別が表に現れ、

社会を分断したと言われますが、そんな中でもこの映画が作られ、大ヒットする

というところが、アメリカのすごいところ。

単純にエンターテインメントとしても、とても良くできた作品です。

見た後に、一緒に観た人と、感想の交換などすると、ものすごく楽しい映画ではないでしょうか？

ぜひお見逃しなく！

 

今日ご紹介した映画「ゲット・アウト」は、

■Denkikan

で、現在公開中です。

 

「ゲット・アウト」オフィシャルサイト

http://getout.jp/