映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

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キネマのススメ

 
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週金曜日・3月30日から公開される「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」です。
 
この映画は、スティーヴン・スピルバーグ監督がメリル・ストリープとトム・ハンクスという名優2人と組み、今年のアカデミー賞で、作品賞と主演女優賞の2部門にノミネートされた話題作。
 
意外なことに、トム・ハンクスとメリル・ストリープは、これが初共演となるそうです!
これだけ豪華なスタッフ&キャストが揃う作品も珍しいです。
これまでのアカデミー賞のノミネート数だけ見ても、トム・ハンクスが5回ノミネートの2回受賞、メリル・ストリープは21回のノミネートで3回受賞。
スピルバーグに至っては、プロデューサーとして関わった作品まで入れると数えきれない数の作品でオスカーに輝いています。
もちろん監督としても「シンドラーのリスト」と「プライベート・ライアン」で監督賞を2回受賞しています。
 
これほどたくさんの受賞歴がある「超売れっ子」のメンバーが一緒に映画を作るのは、スケジュール調整だけでも、たいへんだったと思われますが、実は、どうしても作りたい理由があったんです。その理由は、この映画のストーリーを知るとわかってきます。
 
「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」は、最近のハリウッドでは珍しい骨太な本格ポリティカル・サスペンス作品です。
 
舞台は、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内に戦争への疑問や、反戦の機運が高まっていた、1971年。
「ニューヨーク・タイムズ」は、アメリカがベトナム戦争に参入することになった経緯や、戦いに勝利する見通しがないことなどを詳細に分析した国防省の最高機密文書・「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をスクープします。
ホワイトハウスのお膝元である「ワシントン・ポスト紙」の編集主幹ベン・ブラッドリーは、地元紙のプライドをかけて機密文書を手に入れ、世に出そうと奮闘しますが、その判断は、新聞界初の女性経営者キャサリン・グラハムにゆだねられます。
キャサリンは、いわゆるお嬢様として育ち、機密文書をまとめた張本人である政府高官・マクナマラ長官とも旧知の仲。
しかも、もし記事を掲載すれば反逆罪に問われかねず、誰もが掲載しないだろうと考えていました。
「報道の自由」と「友人との関係」の間で葛藤するキャサリンは、ある決断を迫られることになります・・・!
 
この「ペンタゴン・ペーパーズ」の暴露は実際に起こった事件で、当時アメリカの世論を大きく揺さぶり、ベトナム反戦運動が盛り上がるきっかけとなりました。
いち地方紙に過ぎなかった「ワシントン・ポスト紙」が全国紙として有名になるキッカケとなったのが、この「ペンタゴン・ペーパーズ事件」なんです。
スピルバーグ監督が、この事件の映画化を発表したのは、昨年のトランプ政権発足からわずか45日後のこと。
彼は、「この物語は今年公開されなければ意味がない」と、他の作品を後回しにしてまで、企画から1年足らずでこの映画を完成させました。
 
制作への大きな呼び水となったのは、「フェイクニュース!」と度々報道の在り方に疑問を示してきたトランプ大統領の存在。
その姿勢に対するハリウッドからの強烈なカウンターパンチがこの作品です。
トランプ大統領から「ハリウッドで最も過大評価された女優」と名指しされたメリル・ストリープに、「報道の自由」を守るために戦う主人公を演じさせているのが、この作品の一番面白いところ。
メリルの素晴らしい演技を見て、まだ「過大評価」と言う人がいるんでしょうか?
 
実は、この映画を観た後に観てほしい70年代の名作映画があります。
1976年の作品「大統領の陰謀」です。
ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが同じ「ワシントン・ポスト」の新聞記者を演じています。
この「ペンタゴン・ペーパーズ」事件とつながっている部分も多く、同じ場面を別の角度から描いているシーンもあるので、この作品を観た後に「大統領の陰謀」、おススメです。
 
構想何十年という作品が多いハリウッド映画界、製作期間が数年かかるのが当たり前の映画界では、この「ペンタゴン・ペーパーズ」は異例のスピードで作られた作品です。
突貫工事で作られたからといって、決して、雑な作品ではありません。
70年代当時の時代の雰囲気を大作映画らしく大がかりに再現。
新聞社の描写などは、コンピューターやインターネットがない時代の古きよき報道マンたちの熱い仕事ぶりを見事に描いています。
 
作品の舞台は40年以上前のことですが、当時の状況は、フェイクニュースがあふれ、政治家がマスコミを糾弾する現在のアメリカの姿と重なります。
アメリカだけでなく、今の日本にも重なる部分も少なくないと思います。
マスコミの本来の役割とは何なのか、改めて考えさせてくれる1本ですよ!
 
今日ご紹介した映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■ユナイテッド・シネマ熊本
で、今週金曜日・3月30日から公開されます。
 
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」オフィシャルサイト
 
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