映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」

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キネマのススメ


毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」です。
 
iPodやスマホが普及するにつれて、音楽を手に入れる手段はダウンロードやストリーミングが主流になりましたよね。
でも、ちょっと前までは、音楽はCDやレコードを買って手に入れるもので、それには“ジャケット”がつきものでした。
美しい写真や斬新なデザインのアートワークの名盤がたくさんありました。
今は懐かしい言葉になった、“ジャケ買い”という楽しみもありました。
それほど、“音楽”と“写真”はとても近く、大切なものだったんです。
 
今日ご紹介する映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」は、数々のアーティストに愛され、世界の音楽シーンをとり続ける日本の写真家 鋤田正義の写真の世界にせまった、傑作ドキュメンタリーです。
 
映画の冒頭は、こんなシーンからスタートします。
現在、ロンドン在住の布袋寅泰とTレックスのマーク・ボランの追悼モニュメントを訊ねる鋤田正義。
モニュメントに貼り付けらたマーク・ボランの写真を見て、布袋は、こんな言葉をつぶやきます。
「僕は、この写真を見て、ギターをやろうと思ったんです。音を聴く前にまずこの写真があったんですよ。」
その写真は、70年代に鋤田正義が撮った写真。最も有名なロックミューシャンの写真とも言われる伝説の1枚です。
 
鋤田正義は、1938年に福岡県・直方市で生まれ、今年で80歳。
大阪の日本写真専門学校で学び、最初は、広告写真家としてキャリアをスタートします。
彼の転機になったのは、1972年。当時人気絶頂だったグラムロックバンド、Tレックスの写真を撮るためイギリスに渡ったんです。
といってもなんのツテもなく、日本で撮った写真を持ってオフィスを訪ね、それが認められて実際に撮れたというから、有言実行の人です。
すごいですよね。
さらに同じころ、街角のポスターで偶然見かけたデヴィッド・ボウイに興味を持ち、ボウイの写真を撮ることになります。
その時に撮った写真の1枚が、ボウイがスターダムに上り詰めたレインボー・シアター公演の会場に飾られ、世界中の評判を呼ぶことに。
それ以来、鋤田とボウイとの親交は40年以上に及びます。
 
このボウイのエピソードだけでも興味深いですが、こうした信頼関係を結んだアーティストは、ボウイの他にも、Tレックスのマーク・ボラン、イギー・ポップ、YMO、忌野清志郎、映画監督のジム・ジャームッシュ、デザイナーのポール・スミスなど、そうそうたる顔ぶれに及びます。
 
鋤田はなぜアーティストたちから信頼を集め、唯一無二の写真を撮ることができたのか?
映画では、鋤田自身がアーティストの思い出や写真への情熱を語るほか、彼と親交のある人たちのインタビューを交えながら、その創作活動や人柄に迫っていきます。
 
劇中では、いろいろなアーティストの写真だけでなく、少年時代に鋤田が撮影した直方の写真も登場。
少年時代の写真ですでに、圧倒的な写真を撮っていた天才だったということが、わかります。
ただ、映画の中で度々インタビューに答える鋤田は、とても朴訥で自然体。
カッコつけたところが、まったくない、飄々としたスタイルが、逆に素敵です。
 
古くからつきあいのある人たちだけでなく、MIYAVIや木村カエラといった、彼の孫くらいの若いアーティストとのフォトセッションも意欲的に行っている鋤田。
超有名なあのアルバムジャケットもこの人だったのか!とビックリすること間違いなし!
作品の素晴らしさはもちろん、好奇心旺盛で鋭い感性を持つ、鋤田自身の魅力を教えてくれる1本ですよ。
 
今日ご紹介した映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」オフィシャルサイト
 
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