毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。

毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。

 

今日ご紹介するのは、今週土曜日・11月24日から公開される 映画「アジア三面鏡2016 リフレクションズ」です。

 

この映画は、東京国際映画祭が、国際交流基金アジアセンターとの共同プロジェクトとして製作した、アジア映画のオムニバス作品です。

「アジアで共に生きる」を共通のテーマに、様々な国のスタッフ、キャストが結集しています。

 

このプロジェクトに参加したのは、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督、カンボジアの女性監督であるソト・クォリーカー監督、そして、日本から、行定勲監督の3人。

タイトルの「リフレクションズ」は、“反射”とか、“反映する”という意味。

日本とフィリピン、マレーシア、カンボジアを舞台にした３つの作品を通して、それぞれの国の文化や歴史を三面鏡のように映し出すことをあらわしています。

あえて、自分の国でない外国を舞台にして描かれた　まさにアジアの風景を鏡のように描くというコンセプトで映画が作られています。

 

では、３つの作品の内容を、簡単に説明しましょう。

1作目は、ブリランテ・メンドーサ監督の「SHINIUMA（死に馬）Dead Horse」。

主人公は、フィリピンから北海道に出稼ぎに来ていた老人。不法滞在で警察に逮捕され、強制送還で30年ぶりに故郷に帰った彼の、孤独な心情を描いています。

 

2作目は、行定勲監督の「鳩 Pigeon」。東京に住む息子に厄介者扱いされ、マレーシアのペナン島で晩年を過ごすことになった老人と、マレーシア人の女性ヘルパーとの心の交流を描いた作品です。

 

3作目は、ソト・クォリーカー監督の「Beyond The Bridge」。

内戦中のカンボジアで出会った日本人男性とカンボジア女性との切ない恋愛物語です。

若者時代から老年に至るまで一人で長い時代を演じきったのは、海外作品にも数多く出演した経験を持つベテラン加藤雅也。

少ないセリフの主人公を見事に演じています。

 

3本の作品、いずれの作品も、故郷から離れたアジアの国での人間ドラマで、全く違う文化を持ちながらも、アジア人としてのつながりを感じさせてくれるものになっています。

 

2作目の「鳩　Pigeon」を担当している行定監督は、2011年に釜山国際映画祭のプロジェクトで制作されたオムニバス映画「カメリア」や、日中合作映画である「真夜中の五分前」など、アジア各国との映画プロジェクトに積極的に取り組んでいて、それぞれの国のキャストやスタッフと映画を作り上げています。

 

今回の「アジア三面鏡」では、マレーシアのペナン島を舞台に、マレーシアの女優 シャリファ・アマニをキャストに起用。

撮影には、ウー・ミンジン、エドモンド・ヨウなど、マレーシア映画界で活躍する若手監督が協力しています。

 

言葉や習慣など、様々な制約がある中で撮られた作品ですが、行定監督ならではの映像の美しさと、ユーモアあふれるハートフルな内容は健在です。

これまでも行定作品で重要なモチーフとして登場した「鳩」が、今回も重要な場面で登場します。

 

また、今年8月に亡くなった、主演の津川雅彦は、この作品が遺作。

行定監督の祖父をモデルにした役だそうですが、生と死のはざまに生きる主人公を、自らの体重を落とし、圧倒的な迫力で演じ切っています。

主人公の老人の息子を演じたのは、行定監督と何度もコンビを組んでいる名優・永瀬正敏。

津川雅彦演じる老人との複雑な親子関係を見事に演じています。

 

インド映画や韓国映画などは日本で上映される機会も多いですが、それ以外のアジアの国の作品は、なかなか観る機会少ない現状です。

でも、面白い作品、内容の深い作品は、たくさん作られているんです。

ぜひこの機会に、アジア映画の魅力や面白さを発見してください！

 

今日ご紹介した映画「アジア三面鏡２０１６ リフレクションズ」は、

■Ｄｅｎｋｉｋａｎ

で、今週土曜日・11月24日から1週間限定で公開されます。

 

なお、11月25日（日）の映画上映後には、行定勲監督による舞台挨拶が行われます。

津川雅彦さんの撮影現場でのエピソードなど、ここでしか聴けない貴重なトークが

披露される予定です。なお、入場は、当日券のみとなっています。

「アジア三面鏡２０１６　リフレクションズ」舞台挨拶について、詳しくは、Denkikan　電話　０９６－３５２－２１２１　までお問い合わせください。

 

以上、「キネマのススメ」　でした。

 

「アジア三面鏡2016 リフレクションズ」オフィシャルサイト

https://asian3mirror.jfac.jp/2016_reflections/ja/