映画「太陽の塔」

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キネマのススメ


毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・11月10日から公開される新感覚ドキュメンタリー映画「太陽の塔」です。
 
1970年に大阪府吹田市の千里丘陵を会場として、183日間にわたって開催された日本万国博覧会、いわゆる「エキスポ70」。
総入場者数は、6,421万8,770人、うち外国人が 約170万人。
当時の日本としては桁はずれに大きなイベントだった万博。
この万博のシンボル・タワーとして作られたのが「太陽の塔」です。
 
塔の高さ約70m、基底部の直径約20m、腕の長さ約25m。未来を表す上部の黄金の顔は、直径10.6m、目の直径2mというどれもこれもが規格外の巨大さ。ある意味異様な建造物である「太陽の塔」。
生みの親は、「芸術は爆発だ!」という言葉でおなじみの芸術家・岡本太郎。
万博が終了した後、他の展示物が解体されたにも関わらず「太陽の塔」だけは残され、大阪のシンボルとしてすっかり定着しています。
 
今年3月には、48年ぶりに内部の一般常時公開も始まり、今、また太陽の塔に注目が集まっているんですが、今日ご紹介する映画「太陽の塔」は、岡本太郎がどんな思いをこめてこの巨大なモニュメントを作り上げたのか、当時、事業にかかわっていた人を含めて様々な人のインタビューから解き明かしていく、ドキュメンタリーです。
 
さてこの太陽の塔、なんとなくイメージはあるけど、詳しくは知らないという方がほとんどじゃないでしょうか?
「太陽の塔」が作られたのは、万博会場の真ん中にあった「お祭り広場」。
ここには、世界的建築家・丹下健三が設計した大屋根があり、岡本太郎がその屋根の下の展示をプロデュースすることになっていました。
ところが太郎は、大屋根に穴をあけて70メートルの巨大な塔をつくるプランを強行。
もともとシンボル・タワーは別に作られることになっていたのもあり、丹下健三は大激怒!
丹下健三と岡本太郎は、ついに取っ組み合いの大ゲンカになった・・・という話まであります。
このあたりの建設中のエピソードについても、当時の関係者からの証言や映像などが、登場してきます。
 
さて、問題の太陽の塔には、3つの顔がついています。一番上には未来を表す「黄金の顔」、中央には現在を表す「太陽の顔」、背面には過去を表す「黒い太陽」。
構造は鉄骨、鉄筋コンクリートで内部は空洞になっていて、当時はそこに作られた階段を下りて、地下展示を見ることができました。
地下には第4の顔があったそうですが、万博後は行方不明になっています。
塔の表面はコンクリートを吹き付ける工法が取られていますが、当時の技術責任者は映画の中で「それほど美しいものだとは思いません。グロテスクだと思った」と激白。
ただ、それも太郎の狙いだったそうで、より原始的なものを目指していたといいます。
 
岡本太郎が、土偶や縄文土器などからインスピレーションを得ていたという話を聞くと、あの「太陽の塔」が巨大な土偶にも見えてきます。
 
映画では、工事担当者のほか、岡本太郎記念館館長、美術館学芸員、美術評論家、デザイナー、ダンサー、さらに、人類学者、考古学者、密教学者、チベット言語学者など、総勢29人がインタビューに答え、「太陽の塔」に対する思いや、岡本太郎がモニュメントに込めたメッセージを読み解いていきます。
 
この謎解きパートも面白いんですが、今回、この映画のために作られた、時空を超えて存在する「太陽の塔」のイメージ映像が面白いです。
縄文時代や未来都市の中にいきなり現れる「太陽の塔」。
まるで「2001年宇宙の旅」の黒い石板・モノリスのように、人類を見下ろす様子は圧巻です。
 
今回の監督は、なんと公募で決められたというユニークさ!監督経験者が応募資格だったんですが、なんと98人が応募。
その応募の中から選ばれたのは、安室奈美恵やMr.ChildrenなどのミュージックビデオやCMを手掛け、映画「生きてるだけで、愛」の公開を控える、関根光才です。
単なるドキュメンタリーでなく、映像作品としても凝ったものを目指したこの作品。
岡本太郎や「太陽の塔」の事を知らなくても楽しめる作品になっています。
 
太陽の塔を通じて、岡本太郎という素晴らしい芸術家の思いにせまったドキュメンタリー。
芸術の秋におすすめの1本ですよ!
 
今日ご紹介した映画「太陽の塔」は、
■Denkikan
で、今週土曜日・11月10日から公開されます。
 
映画を観ると、実際に「太陽の塔」を見に大阪に行ってみたくなる・・・そんな作品です。
以上「キネマのススメ」でした。
 
「太陽の塔」オフィシャルサイト
 
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