映画 「ファースト・マン」

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キネマのススメ


毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在上映中の「ファースト・マン」です。
 
「セッション」、「ラ・ラ・ランド」と、立て続けに大ヒットをとばし、今や、すっかり若手を代表する売れっ子となった、デイミアン・チャゼル監督。
まだ34歳という若さながら、「セッション」、「ラ・ラ・ランド」数多くの映画賞を受賞。
「ラ・ラ・ランド」でアカデミー賞監督賞を受賞し、史上最年少での監督賞の受賞者となりました。
いまやハリウッドで最も注目される監督のひとりとなったデイミアン・チャゼル監督。
彼の監督最新作となるのが、今日ご紹介する映画「ファースト・マン」です。
 
2作続けて音楽業界が舞台の作品を作り上げてきたチャゼル監督ですが、今回、彼が舞台に選んだのは、全く違った分野、「宇宙」です。
1969年、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士、ニール・アームストロング船長の半生を描いた、人間ドラマです。
 
宇宙飛行士の映画というと、NASAの有人宇宙飛行計画を描いた「ライトスタッフ」や、トラブルに見舞われながらも無事地球に生還した「アポロ13」など、歴史的な事実をドラマチックに描いた群像劇が多いですよね。
しかし、この映画「ファースト・マン」は、アームストロング船長1人にスポットを当て、彼の心情や、家族との絆を中心に描いています。
 
アームストロングを演じるのは、「ラ・ラ・ランド」でもチャゼル監督と組んだ、ライアン・ゴズリング。
実はこの作品、企画がスタートしたのは「ラ・ラ・ランド」よりも前で、初期の段階から主演はライアン・ゴズリングと決まっていたとか。
チャゼル監督とゴズリングは、実際にアームストロングの家族とも多くの時間を過ごし、リサーチを重ねて映画を作り上げていったそうです。
 
もちろん、歴史的な名場面も数多く登場します。
あの有名なアームストロングが月面に第一歩を記したときの言葉、「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」も登場しますが、詳細な舞台裏を知ったうえで、この言葉を聞くと、また違った印象を受けます。
あの月着陸までに起こったさまざまなドラマを知った観客は、アームストロング船長が、単なるヒーローでなかったことを知ることになるでしょう。
 
脚本は、「スポットライト 世紀のスクープ」や「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」など、実録ものの名手として知られるジョシュ・シンガー。
今回も、華やかだけではない、宇宙計画の闇の部分や反対運動の様子なども取り入れ、リアルな“アポロ計画”を描き出しています。
 
これまでの映画などで、あまり描かれることのなかった、訓練中の事故が描かれているのもこの映画の特別な部分です。
 
1967年1月27日に3人の宇宙飛行士がアポロ1号で、火災を起こします。
宇宙船の中には、高濃度の酸素が充満していたため、電気回線のショートに引火して船内が燃え上がってしまいます。
三人の宇宙飛行士は、宇宙服を着ていたため、火に焼かれることはなかったのですが、宇宙船のハッチを開けることができず、船内で窒息死してしまいます。
この事故によって、アポロ計画は大きな見直しを迫られることになります。
 
このように、巨大プロジェクトのサクセス・ストーリーとは、違った切り口で物語が進んでいくので、戸惑う観客も少なくないかもしれません。
 
特別に派手な演出もなく、訓練シーンなど、淡々と話が進んでいくので、月に降り立った初めての人間の映画にしては、ちょっと地味と思うかもしれませんが、あえて歴史的なヒーローではない生身の人間として描き、アームストロング船長の素顔に迫った作品と言えます。
 
この作品は、場面によって、違う種類の機材を使って撮影がされています。
宇宙船に乗りこむシーンは、16ミリフィルムの手持ちカメラで撮影されました。
敢えて手振れする映像も入れることで、観客も狭い宇宙船の中の宇宙飛行士と同じような感覚を味わうことができます。
また、歴史的な月面着陸の場面は、IMAX用の65ミリフィルムで撮影されているので、空間の広がりや映像の迫力が素晴らしいです。
 
また、NASAから提供された記録映像が活用され、宇宙飛行士が実際に見た風景が映画の中に組み込まれて、素晴らしい効果を上げています。
俳優たちも撮影の際に、宇宙船の窓の外に映し出された記録映像を観ながら演技をすることができたので、リアルな体験ができたとインタビューに答えています。
 
さらにこの映画は、音響効果が素晴らしく、ロケット打ち上げの時に、宇宙飛行士たちが、どんな気持ちだったのか、リアルに感じることができます。金属が軋む低い音が、巨大なロケットの大きさを感じさせます。
 
壮大なプロジェクトに立ち向かった男の心の変遷を描いた感動大作です。
ぜひ、大きなスクリーンで体験することをおススメします!
 
今日ご紹介した映画「ファースト・マン」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■ユナイテッド・シネマ熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
以上、「キネマのススメ」でした。
 
「ファースト・マン」オフィシャルサイト
 
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