映画「運び屋」

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キネマのススメ

 
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「運び屋」です。
 
ここのところ監督としての仕事が中心で、俳優としては、長いことお休みしていた巨匠、クリント・イーストウッド。
今回、2008年の「グラン・トリノ」以来、10年ぶりに主演と監督を務めたことで話題の作品です。
 
イーストウッド演じる主人公は、アールという名前の90歳の老人。
“運び屋”というタイトルの通り、彼はあるものを運ぶんですが、そのあるものというのが、なんと麻薬なんです!
しかもそれが、実際にあった事件というから驚きですよね!
 
映画のベースとなったのは、2014年6月、「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」というタイトルでニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された1本の記事。
2011年、87歳で逮捕された、レオ・シャープという老人について書かれたものでした。
レオは、1990年代に“デイリリー”というユリの新種を生み出し、その業界ではかなり知られた人物でしたが、時代の波に乗り遅れて事業は失敗。
メキシコ系従業員の紹介から、メキシコ最大の犯罪組織“シナロア・カルテル”に“運び屋”として雇われることになります。
メキシコからアメリカ本土に大量の麻薬が運び込まれていることを知ったFBIは、その流通ルートを血眼になって捜査するものの、まさか80歳を過ぎたおじいさんがトラックの荷台に麻薬を積んでいるとは夢にも思わず、2011年に逮捕されるまで、合計600キロ以上の麻薬を運んだといいます。
 
この記事からインスパイアされた「グラン・トリノ」の脚本家ニック・シェンクがオリジナルの脚本を執筆。
それを読んだイーストウッドが主人公・アールのキャラクターを気に入り、自ら監督・主演をすることになったというわけです。
 
実在の人物をモデルにしているとはいえ、アールの人物像にはイーストウッド本人の人生に重なるエピソードが織り込まれています。
それは、仕事を優先して家庭を顧みず、元妻や娘との絆を取り戻そうとする姿。
日本では“ハリウッドの大物”というイメージの強いイーストウッドですが、私生活ではかなり“やんちゃ”で知られていて、正式な結婚は2回にも関わらず5人の女性との間に7人とか8人の子供をもうけていると噂されています。
そのうちの1人、アリソン・イーストウッドは、この作品でもアールの娘役を演じていて、半分“自伝”のようになっているというんですから、興味深いですよね。
 
映画のクライマックスで、主人公が娘に吐露する言葉。
ある意味イーストウッド自身の言葉に聞こえてきます。
この父と娘のシーン、サラッと描かれていますが、かなり深い描写です。
 
そのほかにも「アメリカン・スナイパー」のブラッドリー・クーパーや「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーン、「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」のアンディ・ガルシアなど、豪華キャストが共演。
中でも「アリー/スター誕生」で監督デビューを果たしたブラッドリー・クーパーは“イーストウッドの後継者”とも言われ、この作品の中でも師弟関係を思わせるシーンが用意されています。
 
88歳を迎えてなお、俳優・監督としてパワフルな活躍を見せるクリント・イーストウッド。
ぜひその姿をスクリーンで堪能してください!
 
今日ご紹介した映画「運び屋」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■ユナイテッド・シネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「運び屋」オフィシャルサイト
 
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