「FMKMorningGlory」毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日は、現在公開中の「母と暮せば」をご紹介しましょう。
この作品は、日本映画界の巨匠・山田洋次監督の、通算83本目となる最新作。
吉永小百合と、嵐の二宮和也が親子を演じたことでも話題ですね。
「母と暮せば」というタイトルから分かる方もいらっしゃると思いますが、
この映画は、作家の井上ひさしが広島を舞台として書いた戯曲
「父と暮せば」と対になる作品として作られています。
井上ひさしは晩年、第二次大戦で大きな被害を受けた「ヒロシマ」「ナガサキ」「沖縄」を
テーマにした「戦後命の三部作」の構想を練っていました。
そのうち、「ヒロシマ」をテーマにしたものが、戯曲として発表され、
2004年に黒木和雄監督によって映画化された「父と暮せば」。
原田芳雄と宮沢りえの主演で、数多くの映画賞を受賞する傑作となりました。
「沖縄」をテーマにしたものが、井上ひさしの急逝により未完となった「木の上の軍隊」。
(この作品は、後に井上ひさしの遺志を継いで、同じタイトルの戯曲として
若手作家の蓬莱竜太により書き下ろされ、舞台化されました)
そして、井上ひさしが強く書きたいと考えていたにも関わらず実現しなかったのが
「ナガサキ」を舞台にした物語で、タイトルは「母と暮せば」と語っていたそうです。
その話を遺族から聞き衝撃を受けた山田監督が、井上ひさしの思いを受け継ぎ、映画化を決意します。
自ら脚本を書きあげて、「生涯で一番大事な作品をつくる」という思いで映画化したのがこの作品なんです。
「母と暮せば」は、「父と暮せば」の対になる作品ということで、
設定を反転させた構図となっています。
「父と暮せば」は、原爆で亡くなった父が、生き残った娘の前に、亡霊として現れる話。
対する「母と暮せば」は、生き残ったのは母で、原爆で亡くなった息子が亡霊となって現れます。
2つとも共通しているのは、残された人たちが生きていることに罪悪感や後悔を抱えていること。
そして、亡霊として現れた父や息子と残された家族が過ごし、
揺れ動く気持ちを丁寧に描いているところです。
また山田監督は今回、ファンタジー的な要素の多い作品のため、積極的にVFXを導入。
現れたり消えたりする亡霊や、原爆の描写など、様々な場面でCGを効果的に使い、
84歳にして新たな映像表現を見せてくれます。
主役の吉永小百合と二宮和也を囲む俳優陣も、芸達者が揃っています。
二宮和也演じる浩二の婚約者で、浩二が亡くなった後も、彼を思い続ける町子を演じるのは、
山田監督の前作「小さなおうち」でベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞した黒木華。
出番は少ないながらも、強烈な印象を残す黒田役を、浅野忠信が演じています。
個人的に、一番印象に残ったのは、吉永小百合演じる伸子の世話をいろいろ焼いてくれる
ちょっと怪しい男「上海のおじさん」を演じた加藤健一です。
つかこうへいの演劇などが代表作で、演劇畑では、もう知らない人がいないくらいの
超ベテラン俳優ですが、あまり映画には出演しないことで有名な俳優さんです。
今回、山田監督自らくどき落として、27年ぶりの映画出演が実現しました。
「戦争で亡くなった人たち」や「戦争で家族を亡くした人たち」の悲しみを描いている中で、
戦後をたくましく生きるこの「上海のおじさん」の登場するシーンが、とても印象的に描かれています。
闇物資を持参して、なんやかやと世話を焼く「上海のおじさん」は、
どこか山田監督の代表作「男をつらいよ」シリーズの寅さんを感じさせる面白くて優しいキャラクターです。
今年の助演男優賞の有力候補じゃないでしょうか?
四半世紀ぶりの映画出演で受賞したらカッコイイですねぇ・・・・。
「寅さん」と言えば、山田監督の来年公開される次回作は、久しぶりのコメディ作品。
タイトルは「家族はつらいよ」だそうです。これも楽しみですね。
この「母と暮せば」で自身の集大成としての作品が作れたので、
次回作は、ホーム・グラウンドであるコメディを選んだのかもしれませんね。
キャリアの集大成として。
山田洋次監督が「生涯で一番大事な作品」と言い切った「母と暮せば」。
その込められた思いを、ぜひスクリーンで確認してください。
今日ご紹介した「母と暮せば」は、
■TOHOシネマズ光の森
■TOHOシネマズはません
■TOHOシネマズ宇城
■Denkikan
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
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