リハビリテーションセンター 熊本回生会病院 副院長 診療部長 鬼木泰成先生

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月曜対談
「ひと」「もの」「こと」に関わるさまざまなトピックを切り取っていくインタビュー「月曜対談」。
今日は今年開催された東京オリンピックに、選手村総合診療所の整形外科医師として参加され、
8月24日からのパラリンピックにも参加される、リハビリテーションセンター 熊本回生会病院 副院長で診療部長の鬼木泰成先生にお話を伺いました。

● ご出演者のプロフィール
 
名前:鬼木泰成おにきやすなり
所属・肩書き:リハビリテーションセンター熊本回生会病院 診療部長
一般社団法人熊本県バスケットボール協会副会長医科学研究委員
熊本ヴォルターズチームドクター
熊本保健科学大学整形外科客員教授
熊本学園大学非常勤講師
日本整形外科学会認定スポーツドクター
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本・熊本臨床整形外科学会理事
専門:スポーツ整形外科全般膝、足関節
趣味:スポーツ観戦仕事役職上バスケットボールが多い
 
●リハビリテーションセンター熊本回生会病院の概要
 
1977年4月1日開院
許可病床数161床病棟3階一般病棟61床4階回復期リハ病棟50床5階回復期リハ病棟50床
診療科目リハビリテーション科整形外科内科循環器内科脳神経内科外科
麻酔科(標榜医:宮本千里)放射線科歯科・口腔外科
住所・電話〒861-3193熊本県上益城郡嘉島町鯰1880
電話:096-237-1133FAX:096-237-2252
診療時間9:00~17:00(平日)9:00~12:30(土曜日)
受付時間8:30~11:00
休診日日曜・祝日
整形外科9名内科1名麻酔科1名歯科1名の常勤医師
神経内科2名外科1名の非常勤医師
手術実績昨年は584件
併設:スポーツメディカルセンターメディフィット回生会にじいろ保育園
 
● 鬼木先生の日頃のお仕事の内容について
 
外来病棟診療と手術
熊本ヴォルターズの選手のメディカルチェック、診察、治療
熊本県バスケットボール協会副会長業務大会視察大会役員
スポーツ関連学会での講演、発表、会議出席(国内外)
熊本保健科学大学熊本学園大学学生講義
熊本県・熊本市教育委員会からの講演依頼
日本・熊本臨床整形外科学会への参加
 
● 鬼木先生は来年開催される2020年東京オリンピックにドクターとして参加されるそうですが、オリンピックのドクターにはどうすればなれるのでしょうか?
 
2018年7月に日本臨床スポーツ医学会を通じて、JISSより日本で40人、ポリクリ整形外科医の募集があることが通知され、条件は、日常診療におけるスポーツ医学実績、外国人診療経験の有無を元にまずは当学会代議員の先生を優先に推薦すると連絡あり。
スポーツ医学に精通した大学教授、センター長などからの推薦とあわせて、応募し、抽選の結果で候補が決定する。
条件(ボランティアとしての活動、情報保護の意志確認など)の提示があり、承諾が得られた医師が、選出される。2018年10月
しかし、大会直前になり、コロナの影響による辞退者がでたこと、医療体制再構築が必要になったことで、日本スポーツ協会登録スポーツドクターを中心に再募集あり。
 
● オリンピックのドクターはボランティアだと伺っていますが、鬼木先生が志願された動機、理由を教えてください。
 
今回の東京オリンピックパラリンピックは4年に一度の大会ではなく、自分が参加できる一生に一度の大会になるという気持ち
今回の経験で得られるものを、熊本の子ども達、スポーツ選手に活かしたいとの気持ち
お金では買えない貴重な体験であるため
選出されたことへの名誉
 
Q① オリンピックのドクターの主な活動内容を教えてください。
 
僕らは選手村の中にある総合診療所(ポリクリニック)で活動します。
一般的には外国の選手、スタッフを診察します。言語は基本英語で対応しますが、他の言語の場合は翻訳機を用いての診察をします。
受診はまず選手本人が予約を行い、その時間に診療所を訪れ、通常通り診察をします。
必要なレントゲンやMRIがあれば実施し、投薬やリハビリ、装具などの処方をしていきます。
活動前にはフィールドキャストとしての一般的な知識やテロ対策、熱中症対策、など多岐にわたるe-learningを20時間分ほど受けます。
本来は実地練習が予定されていましたが、コロナでそれらはすべて中止となりました。
 
Q② 開催準備中にだれも予想していなかったコロナという未曾有の病が蔓延しました。
その影響はどのようなことがありましたか?
開催が延期になったことで当初の準備から大きく変わった事などはありますか?
 
また、オリンピックのドクターとして携わる事を考え方などに変化はありましたか?
僕らはバブルと言われる選手村での活動で、許可無く勝手な出入りは誰も許されない規則です。
そのため、まさに村であるため、美容室、ネイルサロン、郵便局、売店、銀行、携帯屋など、日常生活で必要な者はすべて村の中で揃います。
選手村に入る際は、IDカードと顔認証システムと持ち物検査を受けて、さらに外界との隔離のため、20分ほど歩いてクリニックに到着します。
あと毎朝PCR検査が村内にいる全員に実施され、その結果が陽性が出た場合はその時点で隔離、練習競技参加中止となる厳重管理で行いました。
延期になった分、管理のシステム構築はできたのかなと思います。
 
Q③ 今回のオリンピックは、どれくらいの医師や看護師、薬剤師が活動を行ったのですか?
また、コロナ禍という状況もあり、ケガだけでなく外科や内科、様々な症状に対応する必要があったと思いますが、どのような専門医が集まったのでしょうか?
 
ポリクリニックは、内科、整形、歯科、眼科、婦人科、精神科、救急、リハビリ、放射線科がいます。
同時には各武将1-6人ずつぐらいの医師が配置され、オリンピックは前後合わせ30日間勤務しました。
僕はそのうち5日担当しました。パラはそれに泌尿器が入ってきます。
それに看護師、薬剤師、理学療法士、放射線技師、などのコ・メディカルも同等数以上います。
発熱外来、いわゆるコロナ対策は、別棟で、診療を行っています。
もちろんそこにも医療スタッフはいますが、僕らとは隔ててあるため、詳細はわかりません。
ポリクリニック自体のスタッフは開催国で行い、他国の先生はチームドクターの形で、診療に協力をしてもらいます。
 
Q④ 以前出演された際に、日本代表ドクターは多国間の情報保護のため、日本選手を診察することができないという事でしたが・・・実際にたくさんの国や地域から選手や関係者が集まる中で、それぞれの国や文化によって普段慣れている治療や薬、診断方法、宗教や習慣の違いがあると思われますが、そういった違いに対してどのような対応を行ったのでしょうか?
 
そうではなく、ポリクリニック医師は、基本日本選手団は診察せず、交流することも原則ありません。
ご指摘の様に、他国にはそれぞれ文化がありますから、問診の段階で、できない、もしくは避けたい治療内容があれば、それを確認し治療に当たります。
 
Q⑤ 様々なアスリートを診察する中で、流石アスリートだなと感じる身体の特徴や回復力、考え方などはありましたか?
 
まず対応がしっかりしています。挨拶や診察を受ける態度、説明を聞く姿勢、協力的な対応、自分の状態を的確に説明することなどがとても素晴らしいです。
さすが、国を代表する、国の顔とも言うべき選手が多い印象です。
是非、日本の子ども達にはそれを大きく見習って欲しいと思いました。
また筋肉の硬さ、しなやかさが今まで触ったことがないような素晴らしかったです。超人的なパフォーマンスはこうした中で培われるのだなーと感心しました。
 
Q⑥ 競技の結果やメダルにもしかしたら治療や診断が影響を及ぼすかもしれないなど、普段とは異なるプレッシャーや特別な責任など感じる場面などはありましたか?
 
特に無いです。医学的な判断がすべてであり、感情論ではありませんから。
また競技参加を悩むケースは、その国のチームドクターと話し合い、方針を決め、当方だけの判断ではありません。
ただし、予選前の練習で、膝の靱帯を切った選手、大腿の筋肉の肉離れを起こした選手は、確かに同情する感覚はありました。
でもそれでも予選に出たいという希望がありましたので、それこそチームドクターと討議して参加してもらいました。
 
Q⑦ オリンピックのドクターとして活動中する中で印象に残っている出来事、オリンピックドクターとして携わったならではの出来事を教えてください。
 
上記ですかね。
あとは有名選手とすれ違えるってことだけです。
声かけや写真は原則禁止ですので、記録として残せないのが残念ですけど。
あとはキューバの選手の治療に当たったとき、キューバのチームドクターとコーチと仲良くなり、さらにキューバのスポーツ大臣の診察にあたることができました。
そのときは、僕の対応をすごく褒めてくれて、キューバのキーホルダーとバッチをもらいました。なんか国際的な仕事って素敵だなと思った瞬間でした。
 
Q⑧ オリンピックのドクターとして活動を行う中で、普段の活動や、スポーツ医療について気持ちや考え方などに変化はございましたか?
 
先ほどもいいましたが、一流アスリートになるには、挨拶、態度、コミュニケーションなども一流になることが必要いうことだと思います。
これからの診療の中で、それを子ども達や指導者達にうまく伝えることができたらいいなーと思っています。
 
Q⑨ まもなく開幕のパラリンピックにもドクターとして参加されるという事ですが、そちらの準備はいかがですか?
今の気持ちや意気込みなどを教えてください。
 
パラはオリで経験した分、気持ちに余裕があります(笑)
しかし、パラはそれ特有の障害を持った方が多いので、それを踏まえた診療ができるように心がけたいです。
さらに、オリよりもパラの時期のほうがコロナが蔓延している可能性が高いので、一段階上げた感染予防を意識したいと思っています。
 
Q⑩ 最後にラジオをお聴きの皆さんへメッセージをお願いいたします。
 
日本で行われている2020東京オリンピックパラリンピックで、次行われることは数十年先になるかと思います。
この貴重な瞬間を、コロナ禍ではありますが、可能な範囲でみんな共有し、感動したいと思います。
あと僕らもそうですが、日本からは選手だけでなく、裏方としても多くの人々が関わって実施されています。Oneteamの気持ちで応援してもらえるとありがたいです。
 
ありがとうございました。
 
 
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