山鹿市出身の尺八奏者 安田知博さん

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月曜対談
「ひと」「もの」「こと」に関わるさまざまなトピックを切り取っていくインタビュー「月曜対談」。
5月29日(日曜日)に熊本市男女共同参画センター「はあもにい」(メインホール)で、
実に4年ぶりとなるコンサートを行う山鹿市出身の尺八奏者、安田知博さんに尺八の魅力や今回のコンサートについて、お話を伺いました。

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●ご出演者のプロフィールをご記入ください。
 
山鹿市出身。京都市在住。
先天性の視覚障害。盲学校在学中に尺八を始める。
熊本市で開かれている「全国邦楽コンクール」で、優秀賞を受賞。
和楽器ユニット「おとぎ」のメンバーとして、山鹿市の八千代座など全国でコンサートを開催。
球磨川豪雨被災地のためのチャリティーコンサートを、災害から2か月後に大阪で開催。
ピアニストの石田綾との共同企画、「ピアノ×尺八まぜるな危険」が好評を博している。
 
Q① 安田さんが尺八を始めたきっかけについて教えてください。
 
笛が好きで、口笛もリコーダーもフルートも吹いていた。
小学4年の頃に、尺八を吹く先生が転勤でやってきて、校内でちょっとした尺八ブーム。
その波に乗って、始めた。とりあえずの目標は音を出すこと。
音が出ると急速に親近感がわいて、知っているメロディーをなんでも吹いてみた。
それが、今の演奏にも役立っている。
大学では和楽器のクラブで活動。
尺八は、プロ奏者の過半数が大学で尺八に出会った人たち。
同世代の尺八仲間たちと交流したり、後から始めたはずの人に抜かれたりしたのが刺激に。
尺八は、持っているだけで周りに人が集まる。
尺八を出さなくても褒められたり。
ただ、いつまでも「珍しい存在」から抜け出せないことに、もどかしさを覚えるようになる。
そこで、大学の通用門で勝手に吹いたりして、珍しさの先の何かを探す。
大学卒業後に、熊本全国邦楽コンクールに出場。第一線で活躍中のプロと戦って優秀賞。
これが、プロ奏者を目指すきっかけに。
 
Q② 改めて、尺八とはどのような楽器でしょうか?
 
竹の縦笛。ただしリコーダーと違って、息を吹き付けて音を出す。ペットボトルを鳴らす原理。
指孔が5個なので、複雑なパッセージには対応しにくい反面、音色はとても豊かで、人の様々な感情を表現できる。
私にとっての魅力は、まだまだ可能性が眠っていると感じること。
近年、尺八で古典曲以外の音楽に活路を見出す人が増えている。
一方外国では、尺八の古典音楽がファンを増やしていて、尺八の世界大会も開かれている。
 
Q③ 安田さんが尺八奏者として日々感じることはどのようなことでしょうか?
 
外国人にも子供にも自然に受け入れられている。
まだまだ無限の可能性が眠っているように思えること。
音色もしかり、演奏技法もしかり、セッションのアイディアもしかり。
 
Q④ 安田さんと尺八のエピソードについて教えてください。
 
とある宴席の二次会でカラオケに行くことになった。
尺八は常に携帯していて、尺八で参加するようにしている。ところが、メンバーの中に全く耳が聞こえない男性が一人。
「北国の春」を歌いだしたが、中々音程が合わない。
間奏のときに「一緒に吹いてほしい」と頼まれて吹くことに。するとリズムが合うように。そしてなぜか音程も合うようになった。
尺八のブレスや指の動きを見ながら歌ううちに、聞こえていた頃の記憶がよみがえってきたのか…こんな形で自分の演奏が役に立つとは全く思っていなかった。
 
世界中の笛を聞いたり習ったり作ったりできる「万笛博覧会」というイベントに関わっていた。
名刺交換ではなく笛交換が行われていた。酒宴になっても笛を手放さない。
次第に笛ではないものを吹いて音を出すようになる。
コップはもちろん、甘栗の皮、コンセントの差し込み愚痴…。年齢も国籍も視覚障害も、完全に超越した空間だった。
 
Q⑤ コンサート概要について
 
安田知博尺八コンサート~~出会い、絆、そして未来へ~~
日時:5月29日(日)、午後2時から4時(午後1時半開場)
会場:熊本市男女共同参画センター「はあもにい」(メインホール)
〒860-0862熊本市中央区黒髪3丁目3-10
出演:安田知博(尺八)、澤田理絵(ソプラノ)、小路永和奈(筝)、
吉永洋子(フルート)、山城英樹(ピアノ)、熊本マンドリン協会
入場料:2千円(予約制)
お申込み・お問い合わせ:以下のパンフレットをご確認ください。
 
<主な内容>
・手向(尺八古典本曲)
・壱越(山本邦山作曲)
・二重の螺旋調(土井啓輔作曲)
・月光弄笛(福田蘭童作曲)
・オー・ソレ・ミオ(ナポリ民謡)
・コンドルは飛んで行く(甲田弘志編曲)
 
<お申込みとお支払いについて>
観覧をご希望の方は、まずメールか電話でご連絡ください。
お支払い方法など、詳細をご案内致します。入場料は事前振り込みを基本とし、チケットは当日の受付にご用意致します。
なお、5名様以上でお申込みの方には、チケットを郵送、または直接お届けします。
 
<感染予防対策について>
各種ガイドラインを遵守し、リスクの最小化と安全・安心の確保を図ります。
ロビーや通路での滞留と密集を防ぐため、予約制・事前振り込み制とします。
出演者によるお出迎えやお見送り、お土産の受け取りなどは、控えさせていただきます。
館内では、不織布マスクを常に着用してください。困難な場合は事前にご相談ください。
熊本市からの要請により、お客様全員のお名前と連絡先を把握したうえで、必要に応じて熊本市に情報提供を行います。
当日の体温が平熱よりも1度以上高いなど、体調に不安がある場合は、入場をお控えください。
感染拡大状況などを踏まえて、お客様の安全が確保できないと判断した場合には、延期などの適切な措置を取ります。
お申込みをいただいた方には、迅速にご報告をさせていただきます。
 
<チャリティーについて>
視覚障害者など、活字による読書が困難な人たちのために、本や資料を読み上げて録音する「音訳」という仕事があります。
それを支えているのがボランティアの皆さんです。
コンサートの収益の一部を、熊本県内の音訳グループに寄付します。
ご観覧とは別に寄付をお考えの方も、メールか電話でお知らせください。

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Q⑥ 今回のコンサートの開催のきっかけ
 
今回のコンサートは、「出会い、絆、そして未来へ」という副題をつけたコンサートの、4回目です。
このシリーズを発案したきっかけは、熊本地震からの復興支援の取り組みに、私が乗り遅れてしまったことです。
自分に何ができるか分からずにおろおろしているうちに、どんどん日が過ぎていきました。
「復興支援ではなく、復興の先にある新たな熊本・新たな社会を、もっと良くするために行動しよう」と考えて、新たなコンサートを立ち上げました。
助け合いの場面から、新たな出会いが生まれ、そこから絆が育っています。その絆で、未来がさらに明るくなっていきます。
これは、災害復興でも、障害のある人たちの社会参加でも、共通の営みだと思っています。
これまで私に様々なきっかけを与えてくださった方々、共に歩んでくださっている方々、そして、これから連帯していきたいと私が思っている方々を、共演者としてお招きしています。
世界のどこにも無い、新たなコラボレーションをお楽しみいただけます。
さらに、社会的に有意義な活動をしているのにメディアには乗りにくい団体を舞台上で紹介して、売上の一部をその団体に届けています。
1回目(健軍文化ホール)のコンサートでは、一般就労が難しい視覚障碍者の皆さんが通う作業所を紹介しました。
3回目(大阪府島本町)は、球磨川豪雨災害の2か月後に開催しました。
まだ外出自粛を続ける人が多く、コンサートに対してあからさまな批判も受けましたが、
義援金を被災地に届けることができました。
そして今回が4回目です。
目が不自由な人など、活字による読書が困難な人たちのために、本や資料を読んで録音する「音訳」という仕事があります。
それをボランティアで支えてくださっている方々に、売り上げの一部をお届けします。
共演者には、これから熊本で面白いイベントを一緒に作りたいと思っている若手ミュージシャンに加えて、視覚障害音楽家としての先輩のソプラノ歌手、
そして、私の母校である熊本盲学校で数十年にわたってコンサートを続けてくださっている熊本マンドリン協会の皆さんをお招きします。
偏見は、よく知らない事物に対して生じるものだと思います。
何かのきっかけで近しく感じることで、偏見のバリアは壊れます。
この壁が壊れていく場面に立ち会うのは、とても心地よいものです。
尺八も、まだまだ偏見に苦しんでいる楽器の一つです。
ベルリンよりもずっと近くにある壁を、熊本の皆さんと一緒に壊して楽しみたいと思っています。
 
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「熊本の朝をさわやかに!」を合言葉にお届けしています。
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パーソナリティ
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