毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、現在公開中の「未来を花束にして」です。
この作品は、今から100年前にイギリスで起こった実話をもとにして描かれたヒューマン・ドラマです。
「映画は世界の言葉」とよく言われます。
難しい文章で語るより、映像で語られる物語は、観客を一瞬にして虜にし、難しいテーマを観客に分かりやすく理解させることができます。
また、国を越え、時を越え、さまざまな人が作品を観ることになるので、時に政治的に強いパワーを持つこともあります。
昨日のアカデミー賞で起きたハプニング。作品賞の大本命の「ラ・ラ・ランド」がはずれマイノリティについて描いた繊細な作品「ムーンライト」に作品賞が与えられました。
表彰式のドタバタはニュースなどでご覧になった方も多かったじゃないでしょうか・・・。
ハリウッドからのトランプ大統領批判という見方もありますが、弱いものの立場に立つアメリカ映画界の真面目な姿勢を表したものとも言えるでしょう。
今日ご紹介するこの映画「未来を花束にして」も,またそんな映画人の心意気の表れた誠実な作品です。
そのストーリーをご紹介しましょう。
1912年、ロンドン。
洗濯工場で働く24歳のモードは、同僚の夫と幼い息子の3人で暮らす平凡な女性でした。
ある日、女性参政権の活動をしている友人に代わって公聴会で証言し“今とは違う生き方があるのではないか?”という疑問を持つようになります。
それをきっかけに彼女は、「女性社会政治同盟」のリーダーであるエメリン・パンクハーストの演説を聞き、活動にも参加するようになります。
しかし、当時は女性の政治活動を嫌がる男性が多くモードも夫から家を追い出された上に息子と会うことも禁じられ、工場長からもクビを宣告されてしまいます。
現在のメイ首相や、“鉄の女”と名高いサッチャー首相など、イギリスは女性の政治活動が盛んで、女性が強い国、という印象がありますが、わずか100年ほど前は全く違ったんですね。
当時、モードたちのような“女性参政権活動家”はたくさんいて、特にエメリン・パンクハーストをリーダーとした「女性社会政治同盟」のメンバーのことは、「サフラジェット」と呼ばれていました。
この映画の原題も「SUFFRAGETTE(サフラジェット)」といいます。
エメリンの信念は、“言葉よりも行動を”というもので、人目を引くため大きなデモを行ったり、時には窓ガラスを割ったり、郵便ポストを爆弾で爆破するなど、かなり過激なものでした。
そのため、メンバーの女性たちは警察に目をつけられ、何度も牢獄に入れられたり、暴力を振るわれた人も多かったようです。
この作品では、こうした活動に初めはとまどいながらも、次第にのめりこんでいく主人公・モードを、「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンが熱演。
熱心なサフラジェットであるエリンを、ヘレナ・ボナム=カーターが演じるほか、実在の活動家エメリン・パンクハーストを、メリル・ストリープが演じています。
メリル・ストリープといえば、先日のゴールデン・グローブ賞の授賞式でトランプ大統領を批判するスピーチをしたことでも話題ですが、この作品に出演したことについても、「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての息子たちは、この歴史を心に刻むべきである」とコメントしています。
出番は少ないながら、そのカリスマ性あふれるシーンで場面をさらっていきます。
さすが、メリル・ストリープと思う人多いんじゃないでしょうか?
今、女性たちが普通に享受している権利は、彼女たちの活動があってこそ得られたのだと
改めて考えさせられる1本です。
およそ100年前の女性たちの気持ちが手に取るようにわかるというのも、まさに「映画は世界の言葉」を証明するような映画だと思います。
女性だけでなく、男性も観るべき映画ですね。
今日ご紹介した映画「未来を花束にして」は、
■Denkikanで公開中です。
「未来を花束にして」オフィシャルサイト
http://mirai-hanataba.com