毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、現在公開中の「カフェ・ソサエティ」です。
この映画は、アカデミー賞の常連ウディ・アレン監督の最新作。
1935年生まれ、今年81歳のウディ・アレン監督ですが、コンスタントに毎年1本のペースで作品を発表しつづけています。
その製作意欲は、年齢と反比例してどんどん旺盛になっています。
40年間ほぼ毎年新作を発表し、どの作品も高い評価を受けて、さらにはヒットにも恵まれている映画監督。
浮き沈みの激しいアメリカ映画界においては、ヒットと評価は必ずしも比例しないもの。
大ヒットすると映画評論家からは酷評されたり、また評論家からはほめられても、映画は全然ヒットしなかったりすることが多いんですが、ウディ・アレンは、いつも評論家からも観客からも歓迎される珍しい映画作家です。
ウディ・アレン作品の特徴は、面白いストーリー、粋な台詞、そして美しい映像です。
今回の作品は、そのどれもが高水準で、「ウディ・アレン監督の新たな代表作」とも言われています。
今回、彼が舞台に選んだのは、1930年代のハリウッドとニューヨーク。
主人公は、映画にあこがれを抱いてニューヨークからハリウッドにやってきた青年ボビー。
売れっ子プロデューサーの叔父のもとで働くことになった彼は、案内役として、秘書のヴェロニカを紹介されます。
おしゃれで美しく頭もいい彼女に、ボビーはすぐに夢中になり、猛烈なアタックを開始。ヴェロニカは、「恋人がいる」というものの、2人の仲は近づいていきます。
そんな折、兄が立ち上げた、ニューヨークのナイトクラブを引き継ぐことになったボビー。
彼の店は、セレブが毎晩のように集まる人気店になり、ボビーは、美しいブロンドの美女と親密になっていきます。
彼女の名前もまた、ヴェロニカといいました。
果たして、ボビーはどちらのヴェロニカを選ぶのでしょうか!?
2人の美女の間で揺れ動く主人公・ボビーには、「ソーシャル・ネットワーク」の
ジェシー・アイゼンバーグ。
彼を翻弄する2人のヴェロニカには、「トワイライト」シリーズで人気者になった
クリステン・スチュワートと、テレビドラマ「ゴシップガール」で注目されたブレイク・ライブリー。
私生活のファッションも話題になる彼女たちですが、今回はこの映画のために作られたシャネルのドレスやジュエリーをゴージャスに着こなしているのも、見どころのひとつになっています。
ところでこの映画、ジャズミュージックがたくさん使われている点や、ストーリーの背景から、大ヒット中の映画「ラ・ラ・ランド」と何かと比較されています。
2つの映画に共通しているのは、「もしもあの時、違う道を選んでいたら・・・?」
という、誰もが一度は考えるもの。
「ラ・ラ・ランド」は、現代を舞台にしたジャズ・ミュージシャンと女優のラブ・ストーリーでしたが、この映画「カフェ・ソサエティ」は、今はもう選ぶことができない、もう1つの人生への想いを、1930年代の華やかなセレブの世界を舞台に、甘く、ほろ苦く描き出しています。
酸いも甘いもかみ分けた大人にこそ、グッとしみるような1本です。
女性であれば、カップルよりも、女友達と一緒に観に行くことをおすすめしますよ。
ラストシーンの微妙な表情に何を読み取るのか?
映画を観た人ごとに、感想が違ってくるかもしれません。
今回、注目してほしいのは、巨匠ウディ・アレン監督が、初めて組んだ撮影監督のビットリオ・ストラーロ。
3度のアカデミー賞を受賞している映画撮影の巨匠が、今回、初めてデジタル撮影に挑んでいるのも話題です。
ずっとフィルムでの撮影にこだわってきたストラーロは、長年実験を繰り返して、今回初めて満足のいくデジタル撮影ができた」と語っています。
舞台が、ハリウッド、ニューヨークという2か所に分かれているので、その光の感覚まで微細な調整を行っています。
主人公の心理状態を反映した映像表現は、まさに「映画ならではの美しさ」が満載です。
是非、大きなスクリーンで堪能してほしい作品ですね。
実に美しいパーティシーンがたくさん登場してくる「カフェ・ソサエティ」ですが、ウディ・アレン監督自身は、パーティが苦手だそうで、アカデミー賞では、過去24回もノミネートされているんですが、実は授賞式には参加したことがありません。
それぐらいパーティ嫌いなんです。
例外的に1度だけ2002年の授賞式で挨拶したことがあります。
この時は、ノミネート作品はなかったのですが、さまざまなニューヨークを舞台にした映画の「映像集」を紹介するために舞台にあがりました。
2001年に起きた同時多発テロによって大きく傷ついたニューヨークへの支援を呼びかけるためでした。
「ニューヨークは素晴らしい場所です、みんなニューヨークで映画を作ってほしい。」
彼がどれほどニューヨークという街を愛しているか、感動的にスピーチしました。
後にも先にもウディ・アレンがアカデミー賞受賞式に参加したのは、この1回だけです。
とても彼らしいエピソードですね。
今日ご紹介した映画「カフェ・ソサエティ」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
「カフェ・ソサエティ」オフィシャルサイト
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FMK