ラジオ局エフエム・クマモト「FMK Morning Glory」の番組ブログ
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映画「時をかける少女」


2020/04/21 10:25

「FMK MorningGlory」毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
 
いつもは、私、松村奈央が選んだ映画をご紹介しているんですが、ご存知の通り、新型コロナウイルス感染拡大による影響で、熊本でも映画館で映画を観るのが難しい状況になってきました。
現在、熊本県内のすべてのTOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマ熊本、イオンシネマ熊本、Denkikan が休館となっています。
そこで、この「キネマのススメ」のコーナーでは、今週からしばらくのあいだ、お家でもたのしめるネット配信で見られる映画をご紹介していきたいと思います。
 
さっそく今日は、さる4月10日に亡くなった大林宣彦監督を追悼し、彼の代表作、「時をかける少女」をご紹介します。
 
「時をかける少女」は、日本のSF作家の巨匠、筒井康隆がジュニア小説として、今から50年以上前の1967年に発売した作品です。
1972年に「タイムトラベラー」というタイトルで初めてドラマ化され、1983年、大林宣彦監督、原田知世主演で映画になり、大ヒットしました。
 
「時をかける少女」といえば、この映画を一番に思い浮かべる、という方が多いんじゃないでしょうか?
その後も、ドラマや映画などで何度も映像化されていますが、それらのベースとなっているのは、この大林版「時をかける少女」といっても過言ではありません。
 
では、なぜこんなに大林版「時をかける少女」が、今も多くの人に愛され、クリエーターに影響を与え続けているんでしょうか?
「時をかける少女」は、大林監督の故郷、広島県尾道市を舞台にした「尾道三部作」と呼ばれる代表作の、2作目にあたります。
(他は、「転校生」と「さびしんぼう」)
 
もともとは、オーディションで見出した原田知世に惚れ込んだプロデューサー角川春樹が、尾道を舞台に、彼女にピッタリな「時をかける少女」を撮って欲しいと、大林監督に頼んだのがきっかけだといいます。
この作品は、薬師丸ひろ子の「探偵物語」と同時上映されることが決まっていたため、監督は、若者に受けることを考えず、自分が楽しめる「大正ロマンチシズム」をやろうと思ったたんだとか。
そこで、原田知世にも、“竹久夢二の絵のような、現実にはいない少女をやってもらおう”と考え、あえて、カメラを正面から見つめてセリフをいい、猫背にならないよう、「ハンガーを入れているようにして歩きなさい」と指導したそうです。
 
その結果、尾道の、瓦屋根の続く古き良き日本の風景と、ちょっと古風な美少女原田知世が醸し出す、ノスタルジックな雰囲気が、切ない初恋を含んだSFファンタジーに、ピタリとハマったんですね。
 
また、この映画のもうひとつの魅力が、映像表現。
モノクロ画面からスタートし、中心部分だけカラーになっていく映画の冒頭部分や、印象的なタイムスリップシーンなどは、今でも新鮮で大胆な演出です。
初々しい原田知世の存在と、大林監督のロマンチックで個性的な演出が合わさって、伝説的な映画になったということですね。
 
現在、ネット配信だけでなく、大林監督を追悼して、地上波テレビやBS、CSなどでも、大林監督の映画が放映されています。
この機会に、監督が残した素晴らしい作品をご覧になってみてください。
 
また、新型コロナウイルスの影響で、上映延期になってしまった遺作「海辺の映画館 〜キネマの玉手箱」も、上映が決まった際には、ぜひスクリーンでご覧になっていただきたいと思います。
 
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