毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、今週金曜日・7月16日から公開される「ファーザー」です。
この映画は、今年のアカデミー賞で、主演男優賞と脚色賞を受賞した話題作です。
今回の主演男優賞は、亡くなったチャドウィック・ボーズマンが有力候補と言われていたんですが、蓋を開けてみるとアンソニー・ホプキンスが受賞。
言わずと知れた名優アンソニー・ホプキンス。彼がオスカーを受賞するのは、「羊たちの沈黙」のレクター博士を演して以来およそ30年ぶり、
2度目の受賞となりました。
この映画を観ると、その受賞の理由もわかるはずです。
原作は、フランス人作家、フロリアン・ゼレールの舞台劇で、2012年にパリで初演されて以来、ロンドンのウエストエンド、ニューヨークのブロードウェーなど、世界30か国で上演され、たくさんの賞に輝きました。
日本でも2019年に、橋爪功と若村麻由美の共演で上演されています。
今回の映画化では、フロリアン・ゼロール自身が監督に初挑戦。
アカデミー賞受賞歴を持つ脚本家、クリストファー・ハンプトンが共同脚本をつとめました。
舞台劇が原作になっている映画なんですが、今回の映画化にあたっては、かなり演出も工夫されていて、映像的な見所が多くなっています。
では、そのストーリーをご紹介しましょう。
ロンドンで一人暮らしをおくる81歳のアンソニーは、認知症から記憶が薄れ始めていましたが、娘のがアンが手配する介護人を拒否していました。
そんな中、アンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられ、ショックを受けます。
しかし、アンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。
そこへ帰宅してきたアンも、見知らぬ女性でした。
この2人は誰だろう?ひょっとして財産を奪う気ではないか?
疑心暗鬼に駆られる彼は最愛の娘、ルーシーの姿が見えないことに気づきます。
現実と幻想があいまいになっていく中で、アンソニーはある真実にたどり着きます・・・。
監督のフロリアン・ゼロールは、舞台を映画化する際、主人公をアンソニー・ホプキンスに演じてほしいとずっと考えていたんだとか。
そのため、”不可能だろう”と思いつつも、彼が脚本を読んでくれた時に自分のために書いたんだということを感じてほしいと、舞台では名前のなかった主人公に、アンソニーという名前をつけたそうです。
その夢がかない、しかもアカデミー賞まで獲ったんだからすごいですよね。
この映画の一番重要なポイントは、介護する側ではなく、介護される側の視点でストーリーが進んでいくこと。
ずっと暮らしているはずのアパートの部屋で迷い、過去と現在が交錯し、いつ、どこで、何が起きているのか分からなくなっていく描写は、まるでサスペンス映画のようです。
現実と幻想のはざまで戸惑いながら、アンソニーがたどりついた真実とは?
ぜひ、映画館でその結末を見届けてください!
今日ご紹介した映画「ファーザー」は、
■Denkikan
で、今週金曜日・7月16日から公開されます。
名優の見事な演技。
サスペンスフルなストーリー展開、最後まで目が離せませんよ!
是非、劇場でご覧ください。
「ファーザー」オフィシャルサイト
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