「FMK Morning Glory」毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、番組がおすすめする映画情報をお送りしています。
今日ご紹介するのは、今度の金曜日、1月7日から公開の「決戦は日曜日」です。
「決戦は日曜日」というタイトルが示すとおり、この映画で描かれているのは、ずばり政治の世界でもっとも世間の注目が集まる「選挙」です。この映画は、誰もが興味はあるけれど、実はよく知らない「選挙」や「政治の世界」の裏側を描いた作品なんです。かといって、難しい社会派の映画ではありません。コメディタッチのストーリーで笑いながら、同時に複雑な政治の世界が理解できるという 実にお得な映画なんです。
実は、いま「政治ドラマ」が流行中ということをご存じですか?
ネットを縦横に駆使して当選を果たした前大統領のトランプ氏。このトランプ政権の誕生あたりから、映画界や配信ドラマの世界では、政治ドラマが大流行しています。
まず、ネットフリックスでデビット・フィンチャー監督が手掛けた「ハウス・オブ・カード野望の階段」がそのストーリーの面白さもあって、大ヒットしました。
実在のディック・チェイニー副大統領をモデルにした「バイス」は、特殊メイクで本人そっくりになったクリスチャン・ベイルがかなり話題になりました。
ハリウッドはどちらかと言うと、反トランプ勢力が多かったので、大統領に対して、映画人がプロテストするような企画が多かったようです。
一方、日本では、アメリカとは切り口の違った作品が多かったようです。三谷幸喜監督が記憶喪失の総理大臣を描いたコメディ「記憶にございません!」がスマッシュヒット。
日本アカデミー賞を独占し社会現象を巻き起こした「シン・ゴジラ」は、とにかくゴジラ対策の会議のシーンが多いのが印象的。日本の会議文化を皮肉に描き出して、怪獣映画というよりも、視点を変えて描いた政治ドラマという批評家もいました。昨年は、女性総理を中谷美紀が演じた「総理の夫」も公開されましたし、ドラマ「日本沈没―希望のひとー」も、天変地異を描いたスペクタクル作品というより、世界的な政治的駆け引きをメインに描いた政治ドラマでした。
という訳で、まさに、今、政治の世界を描いたエンターテイメントは、世界的に流行中なんです。
この作品「決戦は日曜日」は、政治の世界でも、最も生々しいドラマが詰まっている選挙戦の日々を描いたものです。主人公・谷村勉は、ベテラン衆議院議員の秘書。中堅の秘書として日々の仕事を、そつなくこなしていまいた。ところがある日、仕える議員が病に倒れてしまいます。この急な事態に、後継者として議員の実の娘・川島有美が、衆議院選挙に出馬することになります。自由奔放で世間知らず、熱意だけはあるけれど、どこか空回りしてしまう新米候補者・有美。候補者を支えて、秘書・谷村の悪戦苦闘の日々がスタートするのですが・・・。
主人公の秘書・谷村を演じるのは、朝ドラ「エール」でいまや国民的俳優となった窪田正孝、新米候補者・川島有美役は、いまやベテランの風格さえ漂う宮沢りえ。そのほか、選挙事務所のスタッフ役で若手注目株の赤楚衛二、演技派・内田慈、小市慢太郎などが脇を固めてドラマを盛り上げます。
脚本は、コメディ作品の演出が得意な坂下雄一郎監督が、5年の歳月をかけて執筆したオリジナル脚本。漫画や小説の原作があっての映画化多い日本映画界にあって、オリジナルの脚本で映画が作られるのは珍しいこと。そのストーリーは、綿密な取材の甲斐あって、細部がかなりリアルです。ネット時代における現代的な選挙戦法の裏側が詳細に描かれています、同時に、昔から変わっていない泥臭い政治手法や違法な裏取引のシーンなど、これまでの日本映画で描かれていない場面もたくさん登場します。
選挙の裏側を知ることで、私たちは自分の権利である選挙権をどう行使するべきなのか深く考えさせられます。笑いの底に潜ませた鋭い社会批評が感じられる かなり面白い映画になっています。
今日ご紹介した映画「決戦は日曜日」は、
■熊本ピカデリー、
■ユナイテッド・シネマ熊本、
■イオンシネマ熊本
で1月7日(金)公開です。