毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
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今日ご紹介するのは、4月1日(金)から公開の「アネット」です。
世の中にはいろいろな映画監督がいます。
そして、その才能を称える表現がたくさんあります。
「巨匠」「職人」「鬼才」「マエストロ」などなど、いろんな「あだ名」がありますね。
でも、ずっと「天才」と呼ばれ続ける偉大な作家は、実はそう多くはありません。
キャリアを重ねていくなかで、時には駄作を作ったり、巨額の製作費をかけても映画館に観客が呼べずに、「大コケ」してしまったりすると、なかなか「天才」とは呼ばれません。
今日ご紹介する映画「アネット」の監督・レオス・カラックスは、若くしてデビューしてから、ずっと「天才」とよばれ続けている、とても珍しい映画監督です。
最初、カラックスは、映画評論家として有名になります。フランスの名門映画誌「カイエ・デュ・シネマ」に初掲載になった映画評は、高校を中退した直後のわずか18歳の時。
その後、短編映像作品手掛け、23歳のとき、初長編監督作品「ボーイ・ミーツ・ガール」で「第37回カンヌ国際映画祭」に参加し、世界に衝撃を与えます。
同時期にデビューした若手の映画監督たち、リュック・ベッソン監督、ジャン=ジャック・ベネックス監督たちとともに、既存の映画作りとは違う新しい映画の制作スタイルは、その無垢な存在感とも相まって、当時「恐るべき子どもたち」と呼ばれました。
同期デビューのリュック・ベッソン監督が、その後、多数の作品を発表したのに比べ、カラックス監督は、とても作品数が少なく、平均すると10年に1本ぐらいしか監督作品を発表していません。
それでも、発表した作品がどれも衝撃的な傑作で、誰の作品にも似ていないオリジナリティを持っています。
特に1991年に発表された「ポンヌフの恋人」は、日本でも大ヒットし、登場人物のファッションを真似する若者が続出して「ポンヌフ現象」とも呼ばれました。
カラックス作品に影響を受けた作家は、とても多く、その影響力は、映画界のみならず、現代のユーチューブ動画などにも多大な影響を与えていると言われています。
そんなカラックスが、今回、初めてミュージカル作品を作りました。しかも、フランスの映画監督でありながら、全編が英語のワールドワイドな作品です。
当然、誰もが予想するような音楽劇ではありません。観客の予想の遥か斜め上、ミュージカル表現の可能性を広げるような新感覚の作品が完成しました。
そのストーリーは・・・・・・、
コメディアンのヘンリーは、ある日、オペラ歌手アンと出会い、恋に落ちます。結婚の幸福とは反比例してヘンリーのキャリアは次第に落ち目になってゆきます。
2人の間に娘・アネットが誕生するんですが、ヘンリーは次第に不思議な幻想の世界に蝕まれてゆきます・・・。
果たして、小さなアネットに幸せは訪れるのでしょうか・・・・・。
ヘンリー役を演じたのは、「スター・ウォーズ」シリーズでカイロ・レンを演じたアダム・ドライバー。
マイク1本でステージをこなすスタンダップ・コメディアンの場面が迫力たっぷりです。
オペラ歌手アンを演じたのは、アカデミー賞受賞の経歴もあるマリオン・コティヤール。
他にも、水原希子(みずはら・きこ)、古舘 寛治(ふるたち・かんじ)などが出演しています。
全編の音楽をアメリカのカルト・バンド「スパークス」が担当。
ダークで幻想的なロック・オペラが誕生しています。
年齢的には還暦をすぎた「恐るべき子供」のレオス・カラックス監督ですが、逆に、若返っているんじゃないかとさえ思える今回の作品です。
映画『アネット』は、
■Denkikan、で 今度の金曜、4月1日に公開です。
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