クロペディア「絶対濡れない雨具」
絶対濡れない雨具
出典:パンゲア百科事典『クロペディア』
目次
1.新説(RN:カビの季節到来さん)
梅雨真っ盛り。降り続く大雨に、もはや傘も意味もなさない。あまりに強すぎる雨に、僕は公園の屋根付きのベンチで雨宿りをすることにした。 雨でよくわからなかったが、近づくと先客がいた。 外回りの途中だったのだろうか。少し疲れたような顔したスーツ姿のお姉さん。 傘を持っていたようだが、やはりお姉さんの傘もこの雨では無意味なものとなってしまったらしい。びしょ濡れである。 びしょ濡れの美人OL。なんていい響きなんだ。 そんな邪な気持ちを隠し、僕はお姉さんに話しかけた。 「こんにちは、すごい雨ですね」「こんにちは、そうですね…傘も意味ないし、最悪ですよもう…」 「本当、この雨じゃ傘なんてあってないようなもんですね、絶対濡れない雨具があればいいんですが」 「そんなのがあればいくら出してでも絶対買いますよ、はやく開発されて欲しいです、梅雨の雨は本当鬱陶しいったら…」 眉間に皺を寄せてため息をつくお姉さん。垣間見えるSっ気にドキドキしつつも、雨で肌に張り付いたシャツから透ける肌に気づきパッと目を逸らす。 「失礼ですが…透けてますよ、これ使ってください」 カバンからタオルを取り出し差し出すと、お姉さんはハッとして顔を赤らめ、ありがとうございます…と小声で受け取り肩に羽織った。 「あ、お兄さんも透けて…」 そう言いかけてまた赤面するお姉さん。ふと見ると自分もまた、雨でシャツが透けてびーちくがコンニチハしていた。 「あっ…これは失礼、とんだお目汚しを…」「…いえ、いい色と形…だと思います」 ボソりとそういうお姉さん。僕は耳を疑ったが、お姉さんは熱烈な視線を僕のびーちくに向けている。 「あの…?お姉さん」「あ、ごめんなさい!突然こんなこと……けどもしよければ…これからもっといい色と形にしてみませんか?」 雨に濡れて冷えた身体とは裏腹に、ある部分だけみるみる熱くなる。 絶対に濡れない雨具。先程の僕は何を言っていたのだろう。そんなものはいらん。必要ない。 雨に濡れて水も滴るいい男になった僕と、そんな僕を見てS心に火がつき恐らくびしょ濡れ大洪水を起こしているであろう彼女。雨に感謝。圧倒的感謝。 びしょ濡れ万歳。そして僕らはそのまま2人並んで雨の街に消えていくのだった。 2.諸説(RN:特急ミレンさん)
この衝撃の出会いは、ある雨の日だった。 傘の花が咲く土曜の昼下がり、エイジと名乗る男が、『雨にぬれながら、たたずむ人がいる。』と、ブツブツ言いながら、その人に近づいた。 どうやらズブ濡れになっているのは、バイオリンを持った中年の女性のようだ。 エイジは自分がさしていた傘をその女性に、そっと差し出し、『これ••••よかったら、使って下さい。』と言ったら、チサトと名乗るその女性は、『あなたが濡れるじゃないですか。』と言い返した。 そしたらエイジは、『僕はオヤジの跡を継いで、大きな会社のカサの下にいますから、大丈夫です!』と、ドヤ顔で言い放ち、また傘を差し出した。 チサトは、エイジが差し出した傘を受け取らず、『雨は冷たいけどぬれていたいの••••。想い出も涙も流すから••••。』と、悲しい顔で言った。 エイジは再び、『びしょ濡れじゃないですか!バイオリンも濡れてますし、風邪ひきますよ!』と言って、しつこくチサトに傘を差し出す。 エイジのあまりのしつこさに『びちょびちょになって何が悪いのよ!アタシはびちょびちょに濡れたいのよ!びちょびちょに!』と、キレた口調でチサトは言った。 ただ、よく名前を聞いたら、チサトではなく、ちさ子というらしい。 どうりで言い方がきついわけだ。 『びちょびちょ••••』なんていい響きだ!と言ってエイジは興奮した。 永遠の時と書いて、永時(エイジ)というこの男は、永遠にずっと『びちょびちょ』という言葉を聞いていたいと思った。 絶対に濡れない雨具より、絶対にびちょびちょちに濡れる雨具の方が魅力的だ! そう思ったエイジは今日もまた、雨にぬれながら、たたずむ人を探していたら、ギャルを発見。 名前を聞いたら、モデルでタレントの、みちょぱだった。 エイジはみちょぱに『お願いです!みちょぱから、びちょぱに改名して下さい!』と、勇気を出して言った。 また、自分の秘書を『びちょ』と呼んだり、抹茶アイスを『びっちょ愛す』と呼んだりした。 アイスは、愛してるという意味の愛す(アイス)である。 このようにエイジは、『びちょ』という言葉を発する事で免疫ができ、お肌がスベスベになり年よりも若く見られた。 今日もエイジは、アンチエイジングにいそしんでいる。