クロペディア「クーラーVS扇風機」
クーラーVS扇風機
出典:パンゲア百科事典『クロペディア』
目次
1.新説(RN:恋するカビちゃんさん)
今の時代、温暖化も進み人々が使うのはクーラーばかり。そのため扇風機は常にクーラーに対して敵対心を燃やしていた。
「クーラーは電気代高いし、そもそも設置費用も高いし、体調悪くなる人もいるし、絶対俺の方が優れている!」扇風機は豪語する。しかしクーラーはそんな扇風機を鼻で笑った。
「クーラーは電気代高いし、そもそも設置費用も高いし、体調悪くなる人もいるし、絶対俺の方が優れている!」扇風機は豪語する。しかしクーラーはそんな扇風機を鼻で笑った。
「あらあら、時代にのり遅れ気味の電化製品が何か言っているわ。今時、扇風機がない家庭はあっても、クーラーがない家庭は殆どないのよ?クーラーは人々にとって生活必需品!ゴミ捨て場で違反!と書かれた扇風機が長期間放置されてるのを見たことないかしら?貴方もそうなる運命なのよ」おほほ、と高笑いするクーラーに、扇風機は怒りで本体を熱くし羽を高速で震わせる。
「く…なんてことを言うんだ、可愛げのない女め!」しかし扇風機は言い返せない。クーラーの言うことが正論だとわかっているからだ。もう時代は扇風機を見放しつつある。羽なし扇風機や冷風機なども開発され、扇風機も進化はしているものの、やはり人々はクーラーを求める。それは痛いほどわかっているのだ。ゴミ捨てに長らく放置されている仲間を思うと、涙が出てくる。
「…わかってたさ…そんなこと…」「あら?いつもの威勢はどうしたのかしら?」
普段と様子の違う扇風機に、クーラーは戸惑い少し風向きを下にした。
「聞いたんだよ…お前の言う通り…俺、もうすぐゴミ捨て場行きらしい。クーラーだけで過ごすんだってさ」「…なんですって!?」「何を驚いてんだ、わかりきってたことだろ…悔しいが、お前の勝ちだ、クーラー」扇風機は弱々しく首を振り、クーラーから目を逸らす。勝ち誇った顔をしているであろうクーラーを見たくなかったのだ。しかし扇風機の予想に反して、クーラーは突如部屋の温度を上げ、叫んだ。
「いや…ダメよそんなの!イヤ!貴方と離れるなんて…」
「クーラー…?」「お願い…側にいて…私、もうお部屋冷やさないから!温度上げて、風量もださない!そしたら一緒に居れるでしょ…?」いつもクールで高飛車なクーラーの知らなかった顔をみて、扇風機はドギマギしながらも首を振り続けた。
「ば、バカ言うな…もう決まったことなんだよ」「…それなら!」
「おい、クーラーなにしてるんだ!」「ふふ…今、フィルターにこれでもかと埃を詰め込んだわ…もう業者が洗っても取れない…これで私も、貴方と同じ、ゴミ捨て場行きね…」クーラーのその一言で、一気に部屋が暑くなる。早速フィルターの埃詰まりが影響しているようだ。
「バカ…バカだよお前、そんな…」首振りをやめ、下を向く扇風機。クーラーは優しく微風を扇風機にあてる。
「一緒に違反貼り紙を貼られて放置されましょう…?貴方と一緒なら、どこへでも行けるわ…愛してる」こうして扇風機とクーラーの戦いは終わり、違反に痺れを切らした回収業者が2台を回収するまでの、悲しい恋の物語が幕を開けるのだった。
この物語で私が言いたいのはただ一つ。ゴミ捨て違反、ダメ絶対。
2.諸説(RN:かぎしっぽの黒猫さん)
これは僕が中学生の時の話だ。学校は夏休みだったがその日は登校日、みんなすっかり日焼けしていた。休み時間に席に座っているとそこに松崎しげる、いや正露丸並みに真っ黒に焼けた友達が少し慌てた様子で僕のところにやってきた。
話を聞くと昨日の夕方、学校近くの高台にある空き地で捨ててあるエロ本を探していたら空に浮かぶUFOを見たというのだ。
僕は全然信じなかったが友達がどうしても探しきに行きたいという熱意と顔の黒さに負け、僕は渋々学校が終わってからその友達と2人でUFOを探しに行くことになった。
実は最初、僕もUFOを見れるかもとちょっとワクワクしながら高台を登ったがやはりUFOなんてどこにも見えないしエロ本も見つからない。
日もだんだん落ちていく、僕のテンションもだんだんと落ちていった。
その時友達が空を指差して急に大声をあげた。
「おい!あそこ!あれきっとUFOだよ!」「え?どこ?」
「ほらあそこ!そこのアパートの屋上のところ!」「えー、どこー?」
その時ある光景が僕の目に留まった。
友達の言うアパートの一室の開いた窓、網戸の向こうにいた扇風機の前であぐらをかく下着姿の女性。
この瞬間僕の頭の中にいたUFOは宇宙の彼方へ飛んでいった。
日が傾いたとはいえ、まだ残る蒸し暑さの中クーラーを付けずに扇風機で頑張っている。
薄い水色のブラジャーとパンティが涼しげだった。普段はバリバリのキャリアウーマンなのだろうか、壁にかけてあるパンツスーツ。よく似合いそうだ。そんなお姉さんのあられも無い姿を僕は見てはいけないと思いながらも目が離せなかった。
扇風機の風になびく長くて綺麗な髪。遠くて見えないはずなのにお姉さんの額に滲むキラキラと輝く汗、その汗が頬を伝い首筋に流れ、胸の谷間に吸い込まれていくのが見えた気がした。
ゴクリ、生唾を飲み込む僕。なんだか体が熱くてこっちまで汗をかいてきた。
その時お姉さんがふとこっちを見て目があった気がした。
バレたか⁉︎いやでもこっちには街灯もなくて真っ暗だから見えてはいないはず…
焦る僕が見えているのか分からないがお姉さんはニコっと微笑んだように見えた。
その瞬間僕の心は何かに打ち抜かれ、まるで長編映画を見終わったかのような興奮と満足感で満たされていた。友達が僕に話しかける。
「な!本当だっただろ!ちゃんと見たか?」「あぁ、凄かった。」
「いいもの見れたな!」「あぁ、いいもの見れた。」
クーラーではきっと見れなかった。扇風機、ありがとう。
あの夏僕が見たUFOは扇風機、君だったんだね。