映画「スリー・ビルボード」

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キネマのススメ

 
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「スリー・ビルボード」です。
 
今年のゴールデン・グローブ賞で、作品賞など4冠に輝き、来月発表されるアカデミー賞でも、作品賞や主演女優賞など6部門で7つのノミネートをうけて、オスカーの有力候補と言われているこの作品。
助演男優賞の部門では、ウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルの2人が、同じ映画でダブル・ノミネートされるという珍しいことになっています。
アカデミー賞の大本命と華々しい成果が期待されるこの作品、どんな映画なんだろうと、気になっている方も多いと思います。
 
タイトルにある「ビルボード」というと、まず思い浮かぶのは、ヒットチャートで有名な、あの「ビルボード・チャート」。
でも、この映画は、音楽業界のお話ではありません。
「ビルボード」とは、屋外に建てられた大きな看板・広告のこと。
アメリカは、広大な土地をハイウェイが結ぶ車社会。道路看板は、とても身近な存在です。
この映画のタイトルは、つまり、“3つの大きな看板”という意味なんです。
「看板」から始まる物語は、観客を思わぬところまで連れて行くことになります。
 
気になるそのストーリーは・・・・・・・。
舞台は、アメリカの中西部に位置するミズーリ州の片田舎エビング。
ほとんど誰も通らない通りに3枚のビルボード、立て看板が立てられます。
この看板を立てたのは、ミルドレッドという女性。
彼女は、7か月前に、何者かに娘を殺されていました。
その捜査が進まず、未だに犯人が逮捕されないことにいら立った彼女が、警察への抗議として「娘は殺された」「犯人逮捕はまだ?」「どうして?警察署長」という3つの看板を立てたんです。
この過激な行動に、当然、町中は大騒動になります。
彼女を良く思わない住民からは、様々な嫌がらせがありますが、それにもミルドレッドは一歩も引かず、警察とは大きな溝が生まれます。
そんな中、事態は思わぬ方向へと動き始めます・・・。
 
ミルドレッドを演じるのは、「ファーゴ」でアカデミー主演女優賞に輝いた、フランシス・マクドーマンド。
娘を失った悲しみと怒りを圧倒的なパワーで演じ、2回目のオスカー受賞が期待されています。
このミルドレッドという女性は、これまでハリウッド映画で描かれてきた女性像とは大きく違っています。
言うなれば、往年のクリント・イーストウッドがやっていたような孤高のヒーローのような力強さがあります。
ある時は法律すらも踏みこえて、自分の信念のために前に突き進むのはとても印象的。
フランシス・マクドーマンドは、インタビューに答えて、「ジョン・ウェインの動きを参考にした。」と語っています。
 
ミルドレッドから猛烈な抗議を受ける警察署長・ウィロビーには、「ハンガーゲーム」などの演技派ウディ・ハレルソン。
彼の部下で、人種差別主義者であり、暴力的な巡査・ディクソンを、「月に囚われた男」のサム・ロックウェルが演じています。
 
この2人は、さっきもご紹介したとおり、ともにアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。
確かに映画を観ると、この二人の男優なしには、この映画が成立しないくらいに見事な演技。
一見、偏見のカタマリに見える田舎の警官を演じている二人ですが、映画が進んでいくうちに、彼らの中の意外な部分が現れてきます。
人間の深さ、複雑さも表現した彼らの素晴らしい演技、お見逃しなく。
 
監督のマーティン・マクドナー監督は、脚本家としてイギリス演劇界でいくつもの賞を受賞し、映画監督としても、デビュー作の短編映画でいきなりオスカーを受賞したという才能の持ち主。
今回も、磨き上げられた巧みな脚本で、先の読めない物語を展開しています。
よく、「この映画はストーリーの先が読めない!」というような宣伝文句が躍る映画のポスターやチラシがありますが、だいたいは予定調和なパターンに終わることが多いです。
しかし、この「スリー・ビルボード」は違います。
多くの人が予想した展開をどんどん裏切って、物語の結末は、かなり意表をついたところまで行きます。
しかも、その展開は、今の「アメリカ社会」に対する痛烈なメッセージになっています。
ぜひスクリーンで、この「スリー・ビルボード」の魅力を確かめてみてください!
 
今日ご紹介した映画「スリー・ビルボード」は、
■TOHOシネマズ はません
■ユナイテッドシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「スリー・ビルボード」オフィシャルサイト
 
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