熊本市田原坂西南戦争資料館 美濃口雅朗さん

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月曜対談
「ひと」「もの」「こと」に関わる
さまざまなトピックを切り取っていくインタビュー「月曜対談」。
熊本市経済観光局文化・スポーツ交流部 文化振興課の美濃口雅朗さんがゲストでした。
「熊本市田原坂西南戦争資料館」について伺いました。
 
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●ご出演者のプロフィール
 
名前:美濃口雅朗 (みのぐちまさお)
所属:熊本市経済観光局文化・スポーツ交流部文化振興課
プロフィール:
昭和36年2月18日生まれ(放送時57歳)、神奈川県鎌倉市出身。
明治大学文学部史学地理学科考古学専攻過程卒業。
平成2年、文化財専門職員として熊本市入庁。
平成25年度まで文化振興課、平成26~28年度熊本城調査研究センター、平成29年度文化振興課。
市内文化財(主に埋蔵文化財)の調査・啓発事業を担当。
平成29年度からは熊本市田原坂西南戦争資料館の運営を担当。
職名文化財保護主幹兼主査。
 
Q「熊本市田原坂西南戦争資料館」について基本情報をお願います。
 
正式名称:熊本市田原坂西南戦争資料館
所在地:熊本市北区植木町豊岡858番地1
電話番号:096-272-4982
運営時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:12月29日~翌年1月3日
ホームページ:市ホームページ内「熊本市田原坂西南戦争資料館へ行こう!!」、
特集ウェブサイト・熊本遺産魅力発信「近代日本の夜明けと西南戦争」
 
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2.ロビー.JPG
 
Q「熊本市田原坂西南戦争資料館」の設立目的は?
具体的にどんな展示物がありますか?
 
目的:
熊本市は、国内最後の内戦である西南戦争の主戦場となっており、このことから本市では、西南戦争戦跡の保護・活用に取り組んでいる。
特に、最大の激戦地である田原坂とその周辺については、これを西南戦争遺跡群と位置付けて、平成25年3月27日に国史跡として指定を受け、我が国の歴史を伝えるべき特に重要な文化財としてその保護に務めている。
田原坂西南戦争資料館は、田原坂の近く田原坂公園内にあり、西南戦争遺跡群のガイダンス施設と位置づけられる。
西南戦争に至る経緯や時代背景、戦いの様子などについての資料を展示する、近代日本の夜明けを学び伝える歴史学習施設である。
また、西南戦争を契機とした日本赤十字社の前身である博愛社の設立ついても紹介し、日本が物心ともに近代化していく歩みを知ることができる施設でもある。
 
展示物:
 
アプローチ展示コーナーでは、幕末から西南戦争に至る時代の流れを追った巨大なコラージュ壁画があり、また、幕末から維新記にかけて活躍した横井小楠の関連文書等を展示している。

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体感展示コーナーでは、田原坂の戦いをイメージした大型ジオラマとともに、砲弾の着弾音や振動、小銃弾の飛来立体音響、戦いの再現映像などがあり、戦いの臨場感を体験できる。

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検証展示コーナーでは、戦場での衣服、食料、軍用品や文書等の展示を通し、戦いのなかでの暮らしぶり、人々の思いを紹介している。
このコーナーの一角で今回の特別展「硬骨の司令長官谷干城」を実施している。
継承展示コーナーでは、日本赤十字社の前身博愛社の設立について紹介し、命の尊さ・平和の大切さを訴えている。
 
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企画展示・体験学習ホールは無料スペースで、様々な企画や各種のイベントを随時開催している。
現在は、鹿児島市との連携事業である「鹿児島の西郷どん・熊本の西郷どん」のパネル・関連資料展示を開催している。
また、コスプレ・記念撮影のコーナーを設け、来館者に楽しんでいただく工夫を行なっている。
 
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Q「熊本市田原坂西南戦争資料館」では、明治150年記念企画展「硬骨の司令長官熊本城を守った男ー谷干城ー」を開催中とのこと。
イベントの詳細について、開催時期、目的などを教えて下さい。
 
明治150年記念特別企画展「硬骨の司令長官熊本城を守った男ー谷干城ー」
開催期間:平成30年2月10日(土)~3月18日(日)
目的:
今年、大河ドラマ放送でも注目が集まる西郷隆盛。
維新の元勲としてその栄誉に浴したが西南戦争では賊将となった。
その西郷と鎮台司令長官として対峙したのが谷干城である。
彼の指揮のもと、熊本鎮台は籠城戦を決し、五十二日間に及び薩摩軍の攻撃に耐え抜いた。
もしも熊本城が陥ちていたら・・・西南戦争の結果は、さらには、その後の日本の近代史はどうなっていたか。
そのように考えると、谷が果たした役割りは大きなものがあったといえる。
ところが、ややもするとその人物像は知られていない。
実は、涙もろい人情家であり、自ら「頑僻」と称するほどの硬骨漢でもあり・・・一言でいえば人間味あふれる明治人であった。
展示では、主に熊本城籠城戦での活躍とその人物像、さらには世の人々から谷がどのように捉えられていたのかを紹介していく。
以上を通し、来館される方々に、明治元年から起算して150年目を迎える節目の年に、西南戦争についてより関心を高め、また理解を深めていただくことが目的である。
 
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Q「硬骨の司令長官熊本城を守った男ー谷干城ー」の展示内容を、具体的に解説お願いします。
 
展示
以下5つの項目から構成される。
○谷干城を偲ぶ
戊辰戦争当時から晩年までの谷の肖像写真を展示する。
若い時の写真は、自ら「頑僻」と称したほどの向う気の強さが、中年以降の写真は、加えて包容力と優しさが伝わる資料である。
○錦絵に描かれた谷干城
明治時代の錦絵は、絵を用いてニュースを伝える媒体でもあった。
西南戦争の錦絵は、多くが東京・大阪の絵師が、少ない情報をもとに想像で描いたものである。
史実とは異なる荒唐無稽な表現もあるが、鎮台司令長官谷の活躍が錦絵で伝えられている。
○遺墨が語る谷干城の心
谷は詩人で多くの漢詩を残した。
本展示では、西南戦争に関わる掛幅4点を選んでいる。
戦いに散った人々への哀悼、部下への心配り・・・武人谷のもう一方の心優しい側面が偲ばれる。
○鎮台司令長官として
熊本鎮台が設置された明治6年から8年、そして神風連の乱後から西南戦争を経た明治9年から11年、谷は熊本鎮台司令長官を務めた。
縁の品(煙草入れ・印章「熊本鎮台本営之印」)や発給文書(感状・告諭)を通し、主に熊本城籠城戦における谷の仕事ぶりを紹介する。
○60年後の谷干城-谷の銅像にみる歴史
昭和12年、西南戦争60年を記念して熊本城内に谷の銅像が建立された。
制作は「東洋のロダン」と称された日本美術界の重鎮朝倉文夫(大分県出身)。
この年は、日中戦争が勃発し、軍国主義・皇国思想がさらに興隆する時期である。
そうした風潮のなかで、当時、西南戦争を指揮し「皇国武士道の権化」と評された谷の銅像が建つ。
しかし、それも戦時下の昭和18年、金属供出によって廃される。
昭和44年、明治100年を記念して銅像は再建されるが、本丸御殿の復元建築により現在は高橋公園へ移設されている。
展示では昭和12年の銅像除幕式の写真やその際の記念絵葉書を紹介している。
谷の人物像
 
Q「熊本市田原坂西南戦争資料館」では、「年刊田原坂」という小冊子を配布中。
アニメ風の表紙が話題ですが、内容について教えて下さい。
 
「年刊田原坂」は当資料館の展示内容を紹介するとともに、西南戦争について判りやすく、親しみやすく理解していただくための冊子である。
そのなかで、西南戦争と歴史に興味が薄い方々にも親みをもっていただくため、架空の美少年キャラクター「山口雄吾」を作成した。
設定は長崎出身、グラバーと日本人女性との間に生まれ、西南戦争では共同隊に参加した、戦後生き延び、後年には長崎県知事を務めた、というもの。
姓は、長崎県で最も一般的な苗字をとって「山口」、名は共同隊に「雄吾」名の若い隊志が実際にいたことが判り、また語呂が良いことから採った。
「年刊田原坂」では、毎号(現在4号まで刊行)、「山口雄吾」が表紙を飾っている。
そのデザインは冊子の内容が一目で判るよう心掛けたものである。
 
Q 活動を通じての苦労、やりがいとは何ですか?
 
やりがいは、生涯学習への取り組みが、熊本市民・熊本市を訪れた方々に、地域の歴史・文化財を知る機会となり、歓んでいただくことです。
このことを実感できた時、自分の仕事が報われたように感じます。
 
Q 活動を通じてのもっとも印象的なエピソードは何ですか?
 
以下、2点を挙げておきます。
○昨夏、当資料館の企画展示・体験学習ホール(無料コーナー)において、小学生を対象とした夏休み企画「維新・電信」を実施した。
通常、大人向けに偏ってしまう展示内容であるが、夏休みに合わせ、普段、来館しない児童に向けての企画を設けたものである。
この企画展に合わせた親子体験学習では、参加者に簡易なモールス信号機の製作をしていただいた。
○昨秋、文化振興課文化財資料室植木分室において、市内中学生の職場体験「ナイストライ」事業を受け入れた(地元中学生2校)。
その際、西南戦争の内容を紹介する手作りのパネルを作成していただき、そのパネルは現在、植木文化センターのホールに掲示している。
また、昨年11月5日の本市主催事業「西南戦争140年シンポジウム」の会場(くまもと県民交流館パレア)でも掲示した。
以上の活動は、本市の未来を担う小中学生に、郷土の歴史を知ってもいただくこと、知っていただくことが強いては郷土愛を深めることに繋がること、自分たちの取り組みが地域に貢献するものだと自覚していただくこと、を目的としている。
楽しみながら取り組む姿を見て、その目的に少しでも寄与できたと考えている。
 
Q 最後に、熊本県民にPRしたいこと、今後の活動予定、お知らせなどありましたら教えて下さい。
 
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本市では、郷土の歴史を伝える文化財を保護し、未来に継承していくとともに、これらの活用も図りながら、文化財を通した生涯学習に寄与するところにある。
市民の皆様・熊本市を訪れる皆様に文化財の重要性を知っていただきたい。
熊本市には、田原坂をはじめとして近代日本の歴史の画期となった西南戦争に関る文化財が多く存在する。
まずは、そのことをご理解いただき、郷土への関心を高めていただきたい。
田原坂西南戦争資料館の今後の活動予定
○現在開催中(3月31日まで):企画展示・体験学習ホール(無料コーナー)にて「鹿児島の西郷どん・熊本の西郷どん」展示。
○3月3日(予定)~4月1日:企画展示・体験学習ホール(無料コーナー)にて熊本市遺跡発掘速報展(現在パレアアクシアにて開催中の展示会の巡回展)。
○4月初旬開催予定:企画展示・体験学習ホール(無料コーナー)にて「明治艦隊と西南戦争(仮題)」展示。
○5月開催予定:検証展示コーナー(現在谷干城展を開催しているコーナー)にて「会津と肥後(仮題)」展示。会津戦争と西南戦争における攻城戦の比較を試みる。
 
今日は、「熊本市田原坂西南戦争資料館」の美濃口雅朗さんをお迎えしました。
 
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FMK Morning Glory

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