熊本県知財総合支援窓口 吉本隆夫さん

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月曜対談
「ひと」「もの」「こと」に関わるさまざまなトピックを切り取っていくインタビュー「月曜対談」。
熊本県知財総合支援窓口の吉本隆夫さんがゲストでした。

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● ご出演者のプロフィール
 
名前:吉本隆夫(ふりがな)よしもとたかお
所属:熊本県知財総合支援窓口
プロフィール:
某大手半導体メーカーにエンジニアとして33年勤務。
退職後は、前職での知財経験を活かして2013年から現職の知財総合支援窓口にて相談支援担当者として勤務。
熊本県内の中小企業等の事業者の方々が、知財を通じて元気になって頂くことを目標に頑張っています。
以下は個人的な紹介です。
趣味はボウリング。こう見えても、現役の国体代表選手です。
実は、息子(次男三男)が双子の芸人で、「ダイタク」というコンビで漫才をやっています。
ホームページ、ブログなど:https://www.facebook.com/takao.yoshimoto.52
 
Q「熊本県知財総合支援窓口」の基本情報をお願います。
 
名称:INPIT熊本県知財総合支援窓口
所在地:熊本市東区東町3丁目11-38熊本県産業技術センター電子機械分館3F
運営時間:平日8:30~17:15
TEL:096-285-8840
ホームページ:http://patent-kuma.org/
 
Q「熊本県知財総合支援窓口」とは、どんな活動をしている組織ですか?
設立されたきっかけは?
 
知財総合支援窓口とは:
平成23年4月から、地域・中小企業等の知財活用・新規事業化を支援することを目的として設置されました。
窓口は、全国47都道府県に設置されており、中小企業等が企業経営の中で抱えるアイデア段階から事業展開、海外展開までの幅広い知的財産の多様な課題や相談を、ワンストップで受け付けています。
窓口の運営・管理主体は、特許庁と連携して、経産省所管の独立行政法人工業所有権情報・研修館(通称INPIT)が行っています。
簡単に言えば、国が運営している相談窓口です。
窓口には、私のような企業OBや、長年知財に携わった深い経験を持つ窓口支援担当者が常駐しており、相談内容のヒアリングを通じて企業の経営及び知的財産の課題を把握し、ソリューションを無料で提案しています。
相談は、窓口での直接の対面相談や、電話・メールでの相談だけでなく、必要に応じて窓口支援担当者が企業を直接訪問してアドバイスや支援を提供しています。
また、高度な専門性を必要とする支援においては、様々な分野の専門家によるサポート体制を備えるほか、様々な機関(県や市町村、商工会・商工会議所など)と連携して支援を実施しています。
このように、無形財産である「知的財産」を経営リソースの1つとして捉え、単なる出願・権利化支援だけでなく、知的財産の活用支援を通じて、県内事業者の競争力の強化を支援しています。
当熊本窓口は、現在3名の相談支援の担当者を配置しており、昨年度は延べで約1,300件の相談案件がありました。
その約半数が商標に関する相談、約1/3が特許、それ以外が実用新案・意匠及びその他(著作権など)の相談案件という状況でした。

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Q「熊本県知財総合支援窓口」で扱う「商標」とは?
「商標登録」することでどんなメリットがありますか?逆にしないとどんなデメリットがありますか?
 
商標とは:
事業者が、自社が取り扱う商品や実施するサービスを、他社の商品やサービスと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
このマークを特許庁へ出願し登録することで商標権を得ることが出来ます。
この商標権は、「マーク(文字や図形など)」を「指定する商品・サービス」に使用すると言う権利です。
すなわち、同じマークであっても使用を指定する商品やサービスが違っていれば、権利は及ばないことになります。
しかし、指定した商品には登録した商標を独占的に使用する権利を有し、侵害者に対して、侵害商標の使用の禁止や場合によっては損害賠償を請求することが出来ます。
また、商標権侵害の罪は非親告罪なので、悪質な事件性が高い場合は逮捕・刑事起訴される場合もあります。
つまり、商標を登録することで、自社の商品名を市場で独占して使用できるため、他人に勝手に使用されることを防ぐ(ブランドを守る)ことが出来ます。
 
逆に、登録をしていない場合は、大きく2つのデメリットがあります。
 
1.自社の商品名やブランド名を勝手に使用されても文句が言えない。
せっかく苦労して築き上げたブランド名を勝手に使用されただけでなく、例えば不良品等が出回ってしまった場合、他社製品の風評被害等によって自社ブランドが地に落ちてしまい、最悪の事態を引き起こしかねません。
 
2.他人に商標登録をされてしまうと、先に使用していたにも関わらず今後自分が使用できなくなってしまう。
商標は、特殊な場合を除いて基本的には先願主義であり、先に出願し登録した者に権利が与えられます。
よって、ブランドを横取りされてしまったり、高額で商標を売りつけられたりという危険性があります。
 
Q これからの企業活動にとって、「商標」や「著作権」などは、どんな位置づけになりますか?
どんなポイントが重要なのでしょうか?
 
まず、会社名は商標登録することをお勧めします。
特に起業時される方は、商標として登録できる会社名とするべきだと思います。
なぜならば、会社名を商標として商品やHPなどに掲載できないなど、非常に不都合を生じてしまうからです。
また、商標登録するには、費用が掛かります。
自身で手続した場合は1件当たり4万円程度、代理人に依頼した場合は10~15万円程度掛かる場合もあります。
つまり、製造販売する商品の全ての商品名を登録していたら、積算すれば非常に高額な費用となってしまいます。
よって、主力商品等選択したり、トータルブランドとして統一名称を登録する等の検討が必要となってきます。
これらの検討は、事業者の方々の戦略に基づいて検討されるべきであり、その事業戦略(販売戦略・ブランド戦略など)に沿った出願を行うことが重要となってきます。
 
「著作権」は、絵画や音楽や小説などの芸術活動にて生み出された作品(1点もの)に与えられる権利です。
これらの作品が生まれた時点で、作者に自動的に与えられる権利です。
よって、商標とは異なる権利ですので、分けて考える必要があります。
とはいえ、HP上で使用するデザインや図形などが、他人の著作権を侵害していないように気を付ける必要があると思います。
 
Q「熊本県知財総合支援窓口」に寄せられた相談例をいくつか教えて下さい。
 
私が、商標のご相談を受けたものをいくつかご紹介します。
個人情報等がありますので、具体的な名称等は言えませんのでご了承ください。
1.県内で居酒屋を数店舗経営されている企業から、屋号(店名)の商標出願の支援を実施し、登録することが出来ました。
実は、出願後に他者が同じ名称で飲食店を開店すると言う情報を入手しまして、その店舗が開店する前に弁護士を通じて交渉し、店名を変更頂くことで示談が成立し、事なきを得ることが出来ました。
2.県内でリラクゼーション等のサービス業を実施する企業から、他社から商標使用を停止せよと警告書が届いたとの相談を受けました。
実際に侵害の事実があるかを確認したところ、避けられないと判断したため、店名(屋号)の変更を余儀なくされてしまいました。
10年間続けてこられて、事業拡大のため、HPやSNSでの発信を開始したことで権利者の目に留まるようになったことで権利行使された事例です。
ここでは10周年のリニューアルキャンペーンとして名称変更を行い、新たにスタートする戦略を実施しました。
当然ながら新しい名称は商標登録を実施しました。
 
ここで、注意すべきところは、権利行使を受けた側が、「何でこんな理不尽なことを権利者は言ってくるのだろうか?」「ついてないなぁ」、、、と、被害者意識を感じてしまうところです。
愛着がある名称を他人から突然に使うなと言われる訳ですから仕方がないと思いますが、実は法律違反を起こしている加害者は、他社の商標を侵害している本人なのです。
権利者は、合法的に手続きを行って権利を得て、ブランド構築を事業として一生懸命に実施してきたのですから、当然の権利として行使してくるのです。
 
Q お仕事を通しての苦労ややりがいなどを教えて下さい。
 
県内で頑張っておられる多くの中小企業の社長さんとお会いする機会も多く、沢山の元気を頂けることです。
その中で、相談や支援を実施させて頂いた結果、「ありがとう!!おかげで上手くいったよ」「事業が軌道に乗ったよ」、、、と、喜びの声を聞かせてい頂くときに、大きなやりがいを感じます。
 
Q 最も印象的なできごとは何ですか?
 
やはり、2年前の熊本地震です。
この時は、窓口のメンバーも全員が被災し、私も2週間ほど避難所生活でした。
窓口も閉鎖の状態でしたが、5日ほどで何とか復旧し、相談を開始することが出来ました。
震災直後は、殆ど相談もない状態でした。
当然ながら相談者も知財どころではない状況ですので、忙しい最中に当方から連絡するのは遠慮していました。
その後夏ごろから徐々に相談が来るようになり思い切ってこちらから連絡を取ったところ、何人もの社長さんから「相談したいことがあったけど、窓口が震災で大変だと思ったから、遠慮していたよ」って言われて、恐縮したと共に心強く感じたのを覚えています。
皆さんが、震災に負けず、しっかりと前を向いておられると感じました。
このように、頑張っておられる姿を見ると、本当にパワーを頂きます。
 
Q 熊本県民にPRしたいこと、今後の活動予定、お知らせなどあれば教えてください?
 
知財というと、敷居が高いと感じられる方が多いように思いますが、知財って何?特許って何?商標って何?よく知らないから教えて?という内容からでも、どんなことでも、気兼ねなく相談に来て頂ければと思います。
ご相談に来られる際は、担当者が外出や他の相談対応を行っている場合がありますので、事前にお電話頂ければ幸いです。
TEL:096-285-8840
また、ホームページやフェイスブックの配信を行っていますので、是非ご覧ください。
「熊本県知財総合支援窓口」で検索して頂ければ直ぐに見つかると思います。
 
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