映画「グリーンブック」

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キネマのススメ


毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松村奈央が選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週金曜日・3月1日から公開される「グリーンブック」
昨日発表された「第91回アカデミー賞」でも、大きな注目を集めた話題作です。
今年のアカデミー賞は、最初の下馬評では、ネットフリックスが製作した「ROMA/ローマ」の評判が高く、「作品賞の受賞は堅い」という予想が多かったんですが、実際は、かなり混戦模様だったようで、蓋を空けてみると、強いと言われていた「ROMA/ローマ」は、外国語映画賞を含む3部門受賞となりました。
結果、現在も大ヒット中の「ボヘミアン・ラプソディ」が4部門受賞、アフリカン・アメリカンにとって画期的作品となった「ブラックパンサー」が3部門を受賞。
そして、この「グリーンブック」が、作品賞、脚本賞、助演男優賞の3部門という主要な賞を独占し、今回のアカデミー賞での台風の目的な存在となりました。
 
どんなお話かと言いますと・・・、物語の舞台となるのは1962年のアメリカ。
ニューヨークのクラブで用心棒として働くトニー・リップは、腕っぷしが強く、もめ事も腕力で収めるかなりワイルドな男。
クラブが改装で閉鎖になり、仕事にあぶれたトニーは、黒人の天才ピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われます。
シャーリーは、カーネギーホールの上にある高級アパートメントに住み、ホワイトハウスでも演奏するなど、“天才ピアニスト”として成功を収めていましたが、今回、彼がコンサートツアーを行うのは、黒人差別が色濃く残る、南部地域。
2人は、黒人用の旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、旅を始めます。
無学でがさつなトニーと、インテリのシャーリー。
デコボココンビの2人の旅は、どうなるのでしょうか?
 
運転手のトニー・リップを演じるのは、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのヴィゴ・モーテンセン。
今回、彼が演じたトニーは、精悍な王子・アラゴルンのイメージとは180度違うので、そのギャップにビックリするかもしれません。
天才ピアニスト、シャーリー役には、「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。
彼はこの役で、「ムーンライト」に引き続き、2度目のオスカーを手にしました!
 
監督は、「メリーに首ったけ」など、コメディ映画で知られるファレリー兄弟の兄、ピーター・ファレリー。
コメディを得意としているだけあって、シリアスなシーンの中にもユーモアを感じさせる演出が絶妙です。
 
そして忘れちゃいけないのが、脚本を担当したニック・バロレンガ。
彼は、なんとこの映画の主人公、トニー・リップの実の息子なんです。
ニックは、父の話をいつか映画にしたいと思い、本物のシャーリーにインタビューを重ね、準備を整えてきたといいます。
しかも、劇中にはニックをはじめ、本物のバロレンガ家の人々が出演しているんだとか。
まさに、家族ぐるみで作った映画といえますね。
 
映画のタイトルになっている「グリーンブック」とは、1936年から1966年まで毎年出版されていた、黒人向けのガイドブックのこと。
アメリカ南部の州では、1964年まで、有色人種の一般公共施設の利用を禁止する“ジム・クロウ法”というものがありました。
そこでニューヨーク出身のアフリカ系アメリカ人で郵便配達員だったヴィクター・ヒューゴー・グリーンが、黒人でも利用できるホテルやレストランなどをまとめ、ガイドブックとして発行していたんです。
 
今ではもちろん、アメリカを旅行するのに「グリーンブック」などは必要ありません。
しかし、世界中で、国や人種を分断する傾向が高まっている今、この作品が作られたことは大きな意味があると思います。
大統領が非常事態宣言を出してまで、巨大な「壁」を作ろうとしている今のアメリカの国内事情の中で、「他者への理解」をテーマに作られたこの「グリーンブック」にアカデミー賞の最高賞が送られたのには、大きなメッセージが込められていると思います。
 
かと言って、決して難しい映画ではありません。
笑って、泣けて、人間にとって最も大切なものは何なのかを知ることができる。
まさに正統派の「映画」って感じの作品です。
ぜひ、ご覧になってください!
 
今日ご紹介した映画「グリーンブック」は、
■ユナイテッド・シネマ熊本
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
で、今週金曜日・3月1日から公開されます。
 
「グリーンブック」オフィシャルサイト
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