10月18日(木)の名盤は
今週はプリテンダーズを紹介しました。
21世紀の現時点で、音楽的な質の高さと、それに伴う人気と実績、
それから後輩たちへの影響力の大きさや、
ルックスも含めた生き方そのもののカッコ良さで、
“アネゴ”として君臨するのが、アメリカではジョーン・ジェット、
イギリスではこのプリテンダーズのフロント・ウーマン、
クリッシー・ハインド、ということになります。
さてこのクリッシー姉さん、もともとはアメリカ人ですが、
イギリスに渡って音楽記者として働いていましたが、
どうしても自分で音楽がやりたくなり、プリテンダーズを結成。
1979年にデビュー。姉さん以外の3人のメンバーは全員男性。
キレ味の鋭い、ソリッドなR&Rサウンドの中にも、
60年代風のノスタルジックな感覚と、あくまでもポップでキャッチーな
メロディが同居した音楽性で最初からヒットを連発、
あっという間にイギリスのトップ・バンドに上り詰めました。
ところが、2枚のアルバムを大ヒットさせたあたりから、
精神的・体力的に疲れたメンバー達はドラッグに手を出し始め、
1982年と翌年83年に相次いで2人のメンバーを亡くしてしまいました。
失意と絶望の中、バンド存続を悩んだクリッシーは、
ちょうど「ハイハイ」を覚えた我が娘を見て、進むことを決断。
新メンバーを集めて制作、1984年に発表された3rdアルバムには、
娘の姿と新バンドととして一から出直すという意味を重ねて、
「Learning to Crawl(ハイハイを覚える)」と名付けられました。
結婚、出産、そして相次ぐメンバーの死という人生の明暗を乗り越えて、
「ハイハイ」から再始動したそのサウンドは、
以前より力強く、そして優しく強くたおやかで、感動的でさえあります。