5月29日(木)の名盤は…
リズム・シリーズ第2弾!
1980年代末から90年代初頭にかけてのイギリスのお話をしましょう。
先週はアメリカで大流行した
ニュー・ジャック・スウィングというリズムをご紹介しましたが、
ニュー・ジャック・スウィングから遅れることおよそ1年、
1989年に「キープ・オン・ムーヴィン」という曲が大ヒットします。
アーティストは後に日本でも広く知られることとなるSOULⅡSOUL。
この曲で使われたリズムが、これまで誰も聴いたことのない、
革命的に新しいものでした。
部分的には時代の必然か、ニュー・ジャック・スウィングと似ています。
どちらも1980年代中期にワシントンD.C.だけで局地的に流行した
ゴーゴーというリズムの流れを汲む、ハネるビートです。
決定的に違うのは、レゲエをルーツとする低くウネって沈み込むベース・ライン。
この”沈み込む”、”潜り込む”、”地面を這い回る”イメージから、
グラウンド・ビートと名づけられました。
ハネるビートと沈み込むベースという、相反する要素が同居して、
テンポも遅く、隙間の多いサウンドが、
ホットなニュー・ジャック・スウィングに対して、
クールなカッコ良さを生んだのです。
さらに打ち込みならではの揺らぎのなさが気持ちいい
ニュー・ジャック・スウィングと正反対にこちらは打ち込みなのに
人間臭いグルーヴを作り出したのが奇跡的でした。
当然のように大流行し、90年代初めの音楽シーンを
ニュー・ジャック・スウィングと二分する人気のリズムとなったのでした。
さて、このSOULⅡSOUL、クラブDJのジャジー・Bという人が
中心のユニットだった訳ですが、
この人はDJならではの編集能力に長けた人で、彼のアイデアをもとに、
実際のサウンド作りは、後にビョークのプロデューサーとして
名を上げるネリー・フーパーが担当。
さらにリズムをプログラムしてグラウンド・ビートを作り出したのは、
元MUTE BEATのメンバーと言うべきか、
後のシンプリー・レッドのドラマーと言うべきか、
はたまた藤井フミヤのプロデューサーと言ったほうが分かりやすいのか、
つまりGOTAこと屋敷豪太。
実は世界を席巻したリズムは日本人が発明していたんですね。