6月12日(木)の名盤は…
今日紹介したのは「ザ・ロマンティックス」です。
1980年代前半のアメリカ、1979年に突然現れた新人バンド、
ナックの超大ヒット「マイ・シャローナ」の奇跡をもう一度、
とばかりにこの時代にはたくさんのビート・バンドが登場しました。
ビートルズ、ストーンズ、キンクス、フーといった60年代イギリスの
ビート・ミュージックをルーツとした、ポップで切ないメロディと
シンプルなロックンロール・ビートを、70年代ハード・ロックとパンクを
通過した感性で再構築したサウンドは、パワー・ポップと呼ばれ、
それなりのブームとなりました。
“それなりの”と言うのは、バンドこそたくさん生まれたものの、
メジャー・レベルでヒットを放った者がほとんどなかったからです。
当のナックでさえ、「マイ・シャローナ」以降はパッとせず、
悲しいかな“一発屋”と呼ばれてしまう有様。
それにもかかわらず、次々とこの手のバンドが現れては消えていったのは、
ナックの衝撃がいかに巨大だったか、そしてパワー・ポップという音楽が
若者にとって普遍的な魅力に溢れているかの証明といえるでしょう。
そんな中、ナックに近い成功を手にしたバンドが、ロマンティックスです。
なのですが、彼らは1977年にデビューですから、実はナックより先輩。
1980年にメジャー進出。3枚のアルバムが泣かず飛ばずで、
1983年にリリースした4作目からカットしたシングル
「トーキング・イン・ユア・スリープ」が、全米3位の大ヒットとなります。
ただ、この曲は彼らの中でも異色作で、
魅力を100%出し切ったものとは言えないナンバーでした。
もちろん、本人たちとしては許せる範囲での妥協だったのでしょうけれど。
結局、彼らもナック同様に一発屋のレッテルを貼られてしまうのですが、
改心の傑作が当たって本望なナックに対し、
後味の悪さが残っているのでは、なんて考えるのは大きなお世話でしょうか。