7月10日(木)の名盤は…
今日はゲイリー・ムーアを紹介しました。
ロックはただの音楽ではなく、それ自体がメッセージを伝えるための
メディアなのだ、と言われます。
確かにロックの長い歴史の中では様々なメッセージが歌われ、
時には個人攻撃したものまで存在します。
今日は紹介したゲイリー・ムーアの「レッド・クローンズ」は、そんな1曲です。
世界で最も偉大なハード・ロック・バンドと言えば、
レッド・ツェッペリンとディープ・パープルじゃないでしょうか。
けれども、その後のロックの歴史で、ディープ・パープル的なバンドは
数多く登場しましたが、ツェッペリンに直接的に似ているバンドというのは、
皆無に近いような気がします。これは技術的にマネできないというよりも、
それ以上に、「ツェッペリンは別格。神聖にして犯すべからず存在」という空気が
暗黙の了解とされていた背景があったのです。
ところが1980年代後期にそれが破られます。
口火を切ったのは有名なベテラン・バンド。楽曲がモロにツェッペリン風なのに加え、
プロモーション・ビデオではモノマネまで飛び出しました。
続いて現れた新人はコピー・バンドかと思えるほどで、
ボーカルの声質までそっくりでした。
これらに噛み付いたのが、ツェッペリンの元メンバー達、
ではなく、まったく関係のないゲイリー・ムーアです。
その名も「レッド・クローンズ」という曲で、ホワイトスネイクの「スティル・オブ・ザ・ナイト」と、
キングダム・カム「ゲット・イット・オン」のバンド名と曲名を巧妙に歌詞に織り込んで、
“もうたくさんだ、ツェッペリンのクローンどもめ!!”と断罪したのです。
楽曲もツェッペリン風なのですが、“やるならこれくらいやってみろ”と
手本を示すというのではなく、むしろクローン達のパロディのように聴こえます。
彼らの技量ならば、もっと完璧にやれるはずなのに、
わざとツメを甘くしている気がするんです。
ムーアにとっても、他人事ではないくらいに、
ツェッペリンは特別で神聖な存在だったんでしょうね。
この事件はファンをも巻き込み、「レッド・クローンズ論争」と呼ばれましたが、
結果的にクローン達はフェード・アウトして終わりました。