11月20日(木)の名盤は…
今週は1981年に大ヒットした「ハート悲しく」を紹介しました。
この曲、当時大流行していたAOR、いわゆる大人のための
オシャレなロックの流れを汲む、
甘く切なく情緒的なラヴ・ソングの名曲ですが、
これが初ヒットとなるこの歌手の名前を聞いて、
ほとんどの人は「ああ、また似たようなAOR歌手が出てきたな」
ぐらいに思っていました。
ところが、長年のロック・ファンはその名を耳にして、
「マーティ・バリンって、あのマーティ・バリン?」ととても驚いたのです。
そう、この人はサンフランシスコが生んだ偉大なロック・バンド、
ジェファソン・エアプレインのリーダーとして1960年代から大活躍する
マーティ・バリンだったのです。
久しぶりに名前を聞いて、懐かしくて驚いたわけではありません。
政治的で反社会的な主張をもった、
過激で硬派なロック・バンドだったジェファソンから、
180度方向転換したかのような、ある意味軟弱なアダルト・ポップを歌う姿に、
悲しみに近い落胆を感じたのでした。
まぁ、この時代は本当に「猫も杓子もAOR」という感じで、
ハード・ロックから転向した人も何人もいたぐらいですから、
責められる筋合いはないのですが。
しかもジェファソンは「反戦」、「愛と平和」を唱えていたわけで、
60年代は声高に主張していたことを、
80年代は心の琴線に直接触れる形で愛を説いている、と考えれば、
表現手法が変わっただけで、
メッセージ自体は一貫していると言えるかも知れません。
しかし、それにしても、この曲が入っているアルバム全体では、
ハードな曲や、もっと乾いた感じのオシャレな曲もあるのに…
しかし、全米でも8位という大ヒットを記録しています。
まさにAORの時代だったのでしょうね。