9月10日(木)の名盤は…
今日はJ.D.サウザーを紹介しました。
デトロイト出身の彼ですが、ロサンゼルスへ移り、
イーグルスやジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタットなどと交流を深め、
1970年代以降のウエスト・コースト・シーンの重要人物のひとりとなります。
とは言うものの、自身のバンドやソロではヒットに恵まれず、
もっぱら先に挙げた人達への楽曲提供やセッション参加の
裏方としての活動がメインでした。
優れた作曲家&ギタリストであり、味わい深い歌手であることは
マニアなら誰でも知っていましたし、
それ以上に彼にサポートを受けた仲間達が一番認めていたので、
不運な状況を歯がゆく思っていたようです。
そんな仲間の思いが通じたのか、
幸運は思いがけないところからやって来ました。
1979年、久しぶりにソロ作品の契約を勝ち取った彼は
少しアプローチを変えてみたのです。
それまでの土の匂いのするカントリー・ロック調から、
今回はもう一つのルーツである60年代ポップスの色を強めに出し、
そして大好きなロイ・オービソンの
1960年の大ヒット「オンリー・ザ・ロンリー」を下敷きにして
改作したような曲「ユア・オンリー・ロンリー」が完成。
同じリズムを使い、サビのメロディーもそっくり、全体のアレンジも、
さらにタイトルまでほぼ同じなこの曲を人々はパクリとは呼びませんでした。
愛情に溢れたオマージュであることがちゃんと伝わったのでしょう。
なんと全米7位の大ヒットとなったのです。
日本にいい言葉があります。
「よく知られた古い和歌の句の一部分を用いて新たな歌を作る技巧のこと」を
「本歌取り」と言いますが、そう、これは「本歌取り」と呼ぶべき名曲なのです。
ロイ・オービソン本人もわかっていて訴えるなんてするはずもなく、
1987年の復活コンサートではJ.D.サウザーをゲストコーラスに迎えて、
本歌「オンリー・ザ・ロンリー」を一緒に歌うという粋な演出で、
後輩からのリスペクトに応えています。
このときのJ.D.サウザーの嬉しいような、
照れくさいような表情がたまらなく良かったです。
今日お届けしたのは、
J.D.サウザーで「ユア・オンリー・ロンリー」(1979)でした。