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10月1日(水)の名盤は…

10月3日は中秋の名月。

今日は月にまつわる名曲を紹介しました。

今日選んだのはザ・ウォーターボーイズ、

1985年のスマッシュ・ヒット、「月の想い」です。

スコットランド出身のマイク・スコットを中心にロンドンで結成された

ウォーターボーイズですが、メンバー交代が激しく、

バンドというよりもマイクのソロ・プロジェクトと考えたほうが

いいかもしれません。

そして彼の音楽の特徴は、アルバム1~2枚毎にどんどん変化することです。

もちろん、スピリチュアルで文学性の高い歌詞と、

深みのある昂揚したボーカルという核はまったく変わらず、

一本筋が通っているのですが、それを包み込む表現法が変わるのです。

というのも、録音場所が変わるからです。

スコットランドに始まり、

ロンドン(イングランド)~アイルランド~ニューヨーク(アメリカ)。

これは他の大多数の人たちのように気分を変えるために録音スタジオを変えてみる、

というものとは違うんです。

彼は根っからの旅人であり、新しい音を求めて完全に移住し、

その地で1~2年生活することによって、

その場所特有の息吹や空気感をとらえ、その地の感動を言葉にし、

それを表現するのに最もふさわしい音、すなわち地元の音で

完成させるというスタイルの表現者なのです。

“孤高の吟遊詩人”と呼ばれるのも納得の、あまりにも不器用で

あまりにも誠実な彼の音楽に対する姿勢は、

多くのファンから共感と信頼を得ています。

この曲はロンドン時代のもので、歌詞は文学的に高度で

幾通りもの解釈ができそうですが、訳詞を読まなくとも、曲調やビート、

そして感情のこもった歌声、そして誰でも聴き取ることのできるサビの1行、

”You saw the whole of the moon”(君は満月を見た)

これだけで頭の中に情景が広がってきませんか?

言葉の壁を越えて風景を見せてくれる、

とっても素敵な名曲だと思います。