ニッポン画「山本太郎」さん
今日は熊本市現代美術館で開催中の展覧会
「九州ゆかりの日本画家たち」を紹介しました。
この展覧会は、熊本出身の堅山南風をはじめとした九州出身、
あるいは九州で制作活動をし、20世紀中盤以降に活躍した画家から、
熊本県出身、あるいは在住の現代の若手まで14人の作家の作品を
一堂に見ることができます。
今日はその中でも特に異才を放つ山本太郎さんにお話を伺いました。
(以前、熊日新聞で連載を担当されていたので、
文章と作品をご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね)
山本さんは1974年熊本県生まれ。現在は京都在住です。
山本さんが絵を描き始めたきっかけを教えてください。
高校生の頃に熊本市内の画塾に通いはじめたのがきっかけです。
小さい頃からマンガが好きで漫画家になりたいと思っていました。
それには絵が上手い方が良いだろうという単純な動機で、
高校の頃に「画塾」に通い始め、
きちんと絵を習い始めるといつしかそちらにハマっていました。
山本さんはご自分の作品を日本画ではなく「ニッポン画」と
読んでいらっしゃいますよね?その意図は?
一言で言うと、「ニッポン画」とは古典絵画を現代の視点で
再構成した絵画です。自分の中では、 一応三本柱があって
一、現在の日本の状況を端的に表現する絵画ナリ
一、ニッポン独自の笑いである「諧謔(ルビ:かいぎゃく)」を持った絵画ナリ
一、ニッポンに昔から伝わる絵画技法によって描く絵画ナリ
ということを柱にしています。
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山本さんの作品には和と洋、あらゆるモチーフが
1つの作品の中に混在しているものが多くあります。
例えば…。1枚の絵の中に日本の四季を描いているものがあります。
右の方から春夏秋冬となっていまして、
一番右には松の木や鶴などおめでたい図柄があり、夏は竹と朝顔。
ところがその朝顔がつたっているのは現代の電信柱。
一番左にはクリスマスツリーがありますが、
ツリーの飾りには魚の鯛や打ち出の小槌に小判などが飾られています。
こういった作品で描かれているテーマはどういったものなのでしょうか?
現在の日本の生活は新旧和洋の色んな文化が混ざりあっています。
現代的な家で生活していても必ず靴を脱いで上がります。
ダイニングテーブルで食事をしても結局白ご飯とみそ汁が欠かせません。
クリスマスを祝った一週間後にはお正月がきて、
お寺で除夜の鐘を突くのに初詣は神社に行きます。
色んなものが混ざりあっているのにそれが悪い生活ではなく、
むしろ快適に暮らせています。
そのことが私にはすごく面白く感じられるのです。
それが作品を作るテーマとなっています。
日本画に進んだきっかけ、ニッポン画を名乗るきっかけを教えてください。
実は当初大学受験は油絵科を受けていました。
本当は現代美術をやりたかったのです。
しかし私の受験当時は現代美術を専門に教える学科はほとんどなく、
油絵科の生徒がその後現代美術作家になるパターンが多かったのです。
今考えるとちょっとステレオタイプな考え方ですが、
自分もそうしたいと思っていました。
しかし、浪人を重ねるうちにだんだんと迷いが生じてきました。
油絵も現代美術も西洋由来の輸入されたものです。
自分が住んでいる国に「日本画」というものがあるのなら
それを大学では勉強してみようと考えるようになりました。
このころから美術だけではなく日本文化全般にも興味がでてきていたのです。
ところが大学に受かってみると「日本画」は自分が思っていたほど
古典的な絵画ではありませんでした。
材料が違うだけで油絵のような絵がまわりには多かったのです。
しばらく悩んだ時期もありましたが自分が好きな古典絵画と、
もともとやりたかった現代美術を一緒にしてしまうやり方を考えているときに
今の「ニッポン画」が生まれてきました。
また、「ニッポン画」誕生のエピソードの一つなんですが…。
学生時代にお寺を見てまわっていたときのこと。
お金がないのでお昼はファーストフードでハンバーガーを食べていました。
「ちょこっと前まではあんな古くからの荘厳な空間にいたのに、
今はハンバーガーかよ!」と自分にツッコミをいれたとき、
これは絵になるかもしれないと思いその場で簡単なスケッチをしました。
それが今の「ニッポン画」の元になっています。
10月25日(日)現代美術館でワークショップが予定されていますが、
イベントはどんな内容になりますか?
今回のワークショップは二部制です。
「日本画イロハ」ということで日本画の基本的なことを
お伝えしたいと思っています。 第一部はアーティストトークで
「そもそも日本画ってなに?」というタイトルで話します。
知っているようで知らない日本絵画の歴史を短時間で分かりやすく
自分なりに話してみようと思っています。それはもしかしたら、
「ニッポン画」の誕生にも関係している話になるかもしれません。
トークは事前申込なしで聴講無料ですのでお気軽にご参加ください。
第二部は実際に日本絵画の古典技法の一部を体験していただきます。
日本の絵画制作にはいくつかの基本的な行程があるのですが、
今回はその中でも本番に入る前の「下絵」に焦点をあてたワークショップです。
こちらは定員がありすでに申込は終了しているのですが、
見学は自由です。トークのあと興味がある方はぜひ見学してください。
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山本さんのアーティストトークは
10月25日(日)午後1時30分から2時までがホームギャラリーで、
その後4時までがワークショップとなっています。
山本太郎さんのHPはこちら→http://www.h7.dion.ne.jp/~nipponga/