11月19日(木)の名盤は…
クラシック音楽教育を受けたロック/ポップス系のミュージシャン、
と言えば”教授”こと坂本龍一が思い浮かびますが、
クラシックが地域の生活に根付いている欧米では珍しいことではありません。
けれども、ジョー・ジャクソンほどユニークな人はそうはいません。
世界有数の音楽学校である英国王立音楽院でピアノとヴァイオリン、
そして作曲法を学んだ彼。
先ほど珍しくはない、と言いましたが、これほどの名門で学んだ人となると
やはりレアですし、他の人達は素養が生かせるような、例えばプログレなどの
クラシカルなロックをやる場合が多いのです。
しかし、彼はまったく畑違いのパンキッシュなロックンロールで
デビューしたのだから、両親は”学費を返せ”と言いたくなるでしょう。
・・・と言っても、余談ですがジョー・ジャクソンの場合、
実際は奨学金をもらっていたそうですから、
文句の言われようもありませんが。
ということは、当然成績もトップクラスだったのでしょう。
とにかく前代未聞の衝撃でした。
しかしこれは少年時代にビートルズやキンクスが好きだったことも
あるでしょうが、時代の空気を読んだ戦略でもあったようです。
このスタイルは長く引っ張らず、
次から次へと音楽性を変化させる暴走が始まるからです。
パンク/ニューウェイヴからレゲエ、1940年代のジャイヴ・ミュージック、
AOR調、ジャズ、ラテンとアルバムごとに全然違う色彩を見せます。
そしてついにお得意の純クラシックまでも披露するのですが、
結局この人は音楽理論を学び、耳を鍛えたことによって、
いかなる音楽にも対応する能力を持ったのでしょう。
それまで感覚に頼っていたグルーヴ感だとかリズムの”タメ”だとかを
正確に楽譜化して組み立てるのでしょうね。
それでいて無機質な”あざとさ”が感じられないのは、
すべての音楽に真摯に接し、深い愛情があるからだと思います。
あと耳の良さのため録音にもこだわりがあって、
さまざまな方法で優秀録音盤を制作しています。
現在は初期の頃、ちょうど今日かける曲の頃のロックンロールに
回帰していますが、次は何をやらかすか誰にもわかりません。
今日お届けしたのは、1979年の曲「ワン・モア・タイム」でした。