5月20日「アメリカ」
今日は、1970年代に多くのヒット曲を放ったグループ
「アメリカ」を紹介しました。
シカゴとかボストンとか地名を名乗るバンドは他にもありますが、
その中でも一番大きく出たのがこのアメリカ。
でも、今にして思えば彼らのイメージやサウンドは
この名前に大きく翻弄されてしまったのかもしれません。
ファンの方はご存知だと思いますが、彼らは在英米軍の子どもたち3人によって、
ロンドンで結成されました。
要するに”イギリスのアメリカ人”という軽いジョークの
つもりのネーミングだったのでしょう。
そして1972年、デビュー・アルバムからシングル・カットした「名前のない馬」が、
まずオランダでヒット。そしてイギリスに飛び火して、
最終的にアメリカでもNo.1となり、一躍スターとなったのです。
世の中は折しもウエスト・コースト・サウンド、
中でもアコースティック・サウンド・ブームの真っ只中。
その流れに上手くハマったわけですが、
ブームの中心的存在であるクロスビー、スティルス&ナッシュに、
3人組という編成から、3人とも曲を書けて歌もイケるというスタイル、
何よりも曲調そのものが似ていることで批判も受けることになります。
けれども本当にそうでしょうか?ロックに詳しいリスナーなら
聴いてわかると思うのですが、
彼らのメロディにはほんのりとイギリスとラッドの香りが漂いますし、
音色の肌触りも西海岸のカラッと乾いた感触と明らかに違う、
湿り気のあるイギリス独自のものなのです。
イギリス在住の人によるロンドンでの録音なので当然な話なのですが、
大胆なグループ名を名乗ってしまったが故に、
聴き手のほうが偏見をもってしまったのかもしれません。
この”にじみ出るイギリスの香り”をもっと前面に押し出していったほうが、
逆に名前との落差が個性となって人気が
長続きできたように思えてなりません。
どうせハナッからアメリカなんて背負ってないんですから。
でも彼らはどんどんアメリカナイズされていき、ついにはアメリカに移住。
完全にその他多数の本当のアメリカのグループの中に埋没してしまいました。
今日お届けしたのは1972年全米1位のヒット曲
アメリカで「名前のない馬」でした。