「ガーランド・ジェフリーズ」
ロックは黒人音楽と白人音楽が混じり合って生まれたものだ、ということはこのコーナーで何度かお話ししました。
これは普段特別意識することは少ないかもしれませんが、
実はレベル・ミュージックとしてのロックを考えるときに非常に重要なことなのです。
今日紹介するのは、ガーランド・ジェフリーズ。
よほどの音楽通でなければ彼のことを知らないでしょうが、音楽性を各方面から高く評価される優れたミュージシャンです。
そして人種差別や貧困などの社会問題を鋭く、かつ温かく切々と歌う表現者です。
黒人社会、白人社会、プエルトリコ人社会の3つのバックグラウンドを持つ彼は、どのコミュニティからも疎外されてきたそうです。
ですから、黒人差別も許せないし、逆にブラックだけでつるんで白人を敵視する姿勢も同じくらい愚かであると訴えます。
少年時代の彼がロックンロールに深くのめり込んでいったのは、もちろん音楽としての魅力が一番でしょうが、
黒人音楽と白人音楽の融合でありながらも同じようにたくましく生き続け、世界中で愛されるまでになったロックンロールに自分を投影したのだと想像できます。
信仰にも近い思い入れ、いや、もはやロックンロールは自分自身なのでしょう。
そんな彼が1991年に発表したナンバーが「ヘイル・ヘイル・ロックン・ロール」。
強くもせつないロックンロール讃歌で、ロックンロールの創始者の名前を黒人、白人ともに4人ずつ合計8人平等に織り込んであるところが彼らしいところ。
面白いのは、この曲そのものはいわゆる典型的なロックンロールではなく、グラウンド・ビートっぽいグルーヴになっている点です。
これは1991年当時先端のサウンドで、彼が思うところの”現在の”ロックンロールということだったのだと思いますが、勝手にもう一歩進めて、ジャマイカのレゲエをベースに日本人の屋敷豪太がイギリスで完成させたこのビートこそ、ロックンロールの本質だと、彼が考えたのかもしれない、なんて想像するのは深読みのしすぎでしょうか?
お送りした曲はガーランド・ジェフリーズで「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」でした。