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コミュニティバスのデザイン「生野優花」さん

今日は、合志市のコミュニティバスのデザインを手掛けた、

崇城大学 大学院  芸術研究科 1年の生野優花さんです。

生野さんは、熊本県の山鹿市で生まれ育ち、大学から熊本を離れ、

別府大学に入学、4年間グラフィックデザインを中心に学び、

現在は崇城大学の院生として、さらに研究されています。

合志市のコミュニティバスのデザインをする事になったきっかけは?

まずは今年の7月頃にバスのラッピングのデザインについて、

合志市から崇城大学への依頼がありました。

そこで、大学側が学生にバスのデザインの募集を行い、

大学内での審査を通してデザイン案が絞られ、残った10作品について、

8月25日に開かれた地域公共交通協議会の中

最終選考が行われました。

協議会には、合志市の市長さんをはじめとする市役所の方々が参加され、

その皆さんの前で、学生一人一人が自分のデザインのコンセプトや

バスにこめた想いなどをプレゼンテーションしました。

そこで選んでいただいた私の作品が、

車体デザインとして採用していただくこととなりました。

今回のコミュニティバスのデザインのポイントを教えてください。

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デザインする上で、私がバスに名付けたキャッチコピーは、

「バスからの合志市に あてたラブレター」という意味から

“BUS LETTER”という名前でした。

「さしより、乗っていきなはらん?」「やっぱりこうしはよかとこね!」

「この合志で走れることが私たちの誇りですたい」

車体全体にちりばめられた文字は、「バスの気持ち」を言葉にして表しています。

私がつくりだしたかったバスとは、ただの交通手段のひとつとしてある

平凡な存在ではなく、「思わずまた会いたくなるような愛おしい存在のバス」でした。

どうしたら、合志の方達にとって親しまれ、長く愛されるバスになるだろうか…。

そう考えたとき、たどり着いたのは「バスと合志市民との相互の

コミュニケーションを、新たにつくりだすことの大切さ」でした。

今までなら、バスとバスの利用者とのコミュニケーションなんて、

交通機関とお客さんという双方の立場から、

最低限成り立つ関係のみだったかもしれません。

バスの立場からみれば、決められた時間に決められた場所へ走る

という使命だけで、バスに乗ってくるお客さんとふれ合う機会までは

持てなかったと思います。また、バスの利用者も、バスがどんな想いで

合志の街を巡っているのかなんて、知ろうとすることさえ思いつかな

かったのではないでしょうか。 そこで私が考えたバスのデザインとは、

車体のデザインを通して、まずはバスの側から、

利用者の方々にアプローチできるようなデザインをほどこすことでした。

バスの表面に描かれてある文字が、「最近どぎゃんね?」

「さぁさぁ、一休みしなっせ」と語りかけてくることにより、

バスを待っていたお客さんや、バスを見かけた合志の方達との、

新しいコミュニケーションが生まれるだろうと考えたからです。

私たちの日常生活の中で、何かを伝え合う手段として

必要不可欠の存在である「文字」。このバスのラッピングデザインは、

そんな文字の可能性をできる限り利用したというところが一番のポイントです。

バスからの合志にあてたラブレター。

バスが合志市に対して抱いている一途な片思いが、

いつか両思いになる日がくることを、バスのデザイナーとして心から願っています。

作品が選ばれたときの感想を教えてください。

素直にとてもうれしかったです。私の作品の大きな特徴は、

「文字」のみでデザインしたという点でしたが、最終選考に残った他の作品は、

花や人のイラストがあしらわれた華やかなものばかりでした。

やはり、イラスト中心のデザインと比べると「文字のみ」というものは、

受け入れにくいのではないかという不安がありました。

そのため、自分の作品を選んでいただけるとは思っていなかったので、

採用が決まったときには、驚きと共に「私のバスへの想いを、

合志市の方々が受け入れてくださったのだ」という嬉しさでいっぱいでした。

崇城大学の大学院では、どんなことを学んでいますか?

大分の大学を離れ、崇城の大学院に入学して約半年。

「あれ?デザインの世界ってこんなに深かったの?」というショックを

受け続ける毎日です(笑)

大学院では、様々な課題をもとにデザインを深く研究していますが、

私が特に崇城大にきて学んでいるものとは、“デザインをする”という

行為自体のとらえ方だと感じています。

今後、アーチストとしての目標や夢などありますか?

夢はやはり、デザイナーになることです。しかし、大学院で学んでいる

「デザインすること=解決策を見いだすこと」というポリシー自体は、

きっと様々な分野で応用できるものだと考えています。

なぜなら、改善の余地があるもの全てにデザインの力は

必要なはずだからです。それはつまり、デザイナーの活躍の場所は、

必ずしも芸術とくくられる範囲内だけにはとどまらないということなのです。

今後決まっている活動予定などあれば教えてください。

大学院2年間を通し、研究するテーマとしては、ADD(注意欠陥障害)の

子供たちを対象とした、よりよい教育支援ツールの開発を行っています。

課題も多くありますが、実現へ向けて日々研究しています。