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1月6日(木)の名盤は

2011年のこのコーナーは

「エコー&ザ・バニーメン」からスタートしましょう。

1978年にリヴァプールで結成、最初ドラマーが見つからず、

エコー社製のリズム・マシーンが正式にメンバーだったことから

バンド名がつけられました。

1980年代前期から中期にたいへんな人気を誇った

ニュー・ウェイヴ・バンドです。

明らかにパンクを通過した新感覚のサウンドでありながらも、

ビートルズ以来伝統のマージー・ビートを継承する香りと、

60年代アメリカ西海岸のドアーズを思わせる

サイケデリック・フィーリングを持ち合わせており、

多角的な支持を受けてのブレイクだったわけですが、

ここ日本ではちょっと事情が違います。そんなもんじゃなかったのです。

この時代に青春を過ごした日本のニュー・ウェイヴ少年少女にとっては

格別な思い入れのあるバンドだったのです。

ウソだと思うなら、現在40代半ばのロック・ファンに聞いてみてください。

彼らの名前を出したとたん、“そうそう、エコバニ!”と短縮形で、

上気した顔で返ってきますから。

それはなぜかといえば、当時の状況を思い出す必要があります。

1981年から85年頃のイギリス・ロック・シーンはエレポップ全盛、

ギターの音なんかほとんど聴こえてこなかったのです。

ベテラン組やアメリカ勢、ヘヴィ・メタルはありましたが、

イギリスの新しいギター・ロックを求めるファンは聴く音楽が

なかったんです。

ネオアコも出始めましたが、エレキ・ギターではありません。

実はイギリスではインディからギター・バンドが出て来ていたのですが、

日本ではなかなか情報が入手困難で、よくわからなかったこの時代、

一応メジャーで日本国内どんな田舎でも普通にレコードが買える

エレキ・ギター・バンドは、

極論すればエコバニとU2しかなかったんですね。

しかなかった、というと消極的な感じがするかもしれませんが、

さっき言ったとおり実力は折り紙つきでしたから、

ファンの期待を一身に集めたのは当然のことでした。

本当にかけがえのない存在だったのです。

この数年後に巨大な怪物、ザ・スミスが登場すると、

入れ替わるように失速してしまったのは残念ですが、この“バニーメン”、

”うさぎ男たち“のおかげでイギリスロックからギターの火が

途絶えることがなかったというのは決して大げさな話ではないのです。

お届けしたのは1983年の曲「カッター」でした。