3/3「憂歌団」
今週は久しぶりに邦楽を紹介しました。
ひと口に日本のロックと言っても様々なものがあるわけですが、
洋楽の借り物ではなく真の意味での“ジャパン・オリジナル”な
スタイルを確立している例は決して多くありません。
その数少ないひとつが憂歌団ではないでしょうか。
“エレジーが「哀歌/挽歌」ならば、ブルースは「憂歌」である”と
メンバーが勝手に作った造語が名前の由来で、
つまり「ブルース・バンド」を彼ら流に和訳したのが「憂歌団」。
その名の通り、ブルースがルーツであるのは明白ですし、
実際マニアックに研究しているのですが、
それが大阪の土壌とメンバーそれぞれのキャラクターで
グチャグチャに混ぜ合わせたら、
まさに憂歌としか言いようのない日本の音楽になってしまうのが
面白いところと言うか、音楽のマジックです。
ただ、彼らのサウンドはすごく大阪臭いのは間違いないのですけど、
ちょっと異端でもあります。
彼らがデビューした1970年代中期は関西ブルースというのがブームで、
たくさんのバンドが登場したにもかかわらず、
憂歌団はどのバンドとも似ていないんです。
他のバンドは“いかに本物に近づけるか”ということに夢中であり、
しかも押しが強いのに対し、彼らはそんなことには興味がなく
押し付けがましくもなく粋でさえあります。
例えるなら新喜劇に対する上方落語という感じでしょうか。
そういえば昔、彼らのレコードのコピーに
“流行ってやらない。でも酔わせてあげる”というのがあって、
思わずヒザを叩いたことがあります。
さて、彼らはオリジナルも良い曲が多いのですが、
カバーに優れたものも多いんです。
今日はなんと演歌を憂歌団流に仕上げたこの曲で“天使のダミ声”と
称される木村さんの歌と日本屈指のギタリスト勧太郎さん、
そしてリズム隊とのアンサンブルの妙による
“ジャパン・オリジナル”をたっぷり味わってもらいましょう。
実はこれ、春の歌なのです。1994年、北原ミレイのカバー。
憂歌団で「石狩挽歌」。