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「ハリナックス」のヒミツ

今日は、針のない画期的なステープラーとして大ヒット中の

「ハリナックス」のヒミツに迫りました。

ご出演は、コクヨS&T株式会社の青井宏和さんです。

Photo

この製品の開発時のエピソードを詳しく教えてください。

開発は「エコへの対応」というところから始まりました。

そのきっかけとなったのが、2008年、トップダウンで始まった

『ECO×運動』です。全ての商品がエコかどうかを検証し、

エコでなければカタログに×マークが付く。

弊社には1万2000点以上の商品があり、猶予期間はたった3年。

その取り組みを行う一方で、「なぜエコ商品は普及しないのか?」

ということを、ふと考えたんです。

そこで、浮かんできたのがこれまでのエコは、

「我慢を強いるエコ」になっていたのではないか?という仮説です。

エコだから少々使い勝手が悪い、エコだから耐久性が低い、

エコだからと、どこかユーザーに負担を強いていたような気がしたのです。

そこで思いついたのが「我慢のエコ」から

「ラクに楽しめ、気が付けばエコ」に変わるような商品を開発しよう

というコンセプトでした。

まず、商品として便利であること、そして楽しくラクに使っていただいていると、

実はエコに貢献していた、というような商品です。

そのコンセプトに基づいて、いろいろ考えた企画の一つが

ホッチキスから針をなくすことでした。

針を使わないホッチキスの開発にあたりまずは、

現状をいろいろ調べてみました。

弊社では「個客」に訊け!ということを大切にして、

商品を開発するに当たり、徹底的に個客の話を効く事を大切にしています。

そこで、ホッチキスは「消耗品を使うからエコじゃない」以外にも、

「捨てる時に分別しにくい」「針でケガをしかねない」など、

次々と不満点が出てきました。

その結果から、『針がないステープラー』を出せれば支持されると確信を得ました。

実は、最終的に採用した機構の原案は100年以上前から

存在していました。ただ、綴じ枚数が少なく、強度も弱く、

ほとんど普及していないのが現状でした。

本格的に開発するにあたって、まずはどんな研究から取り組んだんですか?

いろいろな綴じ方を研究してみましたが、綴じ方自体は

この機構が秀逸だと感じましたので、その機構をベースに不満点である、

綴じ枚数の増加、綴じ強度UPに取り組むことにしました。

最初に強度UPですが、そもそも紙だけで綴じるために、

強度は紙に頼らざるを得ず、強めるのは困難を極めました。

その時、ふと思いついたのが1ヵ所だから弱いが、

2ヶ所なら強くなるという当たり前の発想でした。

そこで、単純に2ヶ所綴じにしても「当たり前」で支持は得られません。

むしろ、余分な穴があくということで、不満の方が大きくなります。

そこで、2ヶ所の穴に「必然性」を持たせられないかと

踏み込んで発想してみました。

それで出てきたのが、2穴をパンチ穴として活用するというアイデアでした。

すると、突然「デメリット」が「メリット」に変わる。

しかも弊社は『<オール紙>シリーズ』という、

綴じ具まですべて紙でできた2穴ファイルも作っています。

これと一緒に使ってもらえれば、印刷して、綴じて、破棄するまで、

まったく分別の必要がないソリューションができると閃いたのです。

次に多枚数綴じについてですが、これは図解しないと分かりにくいのですが、

色々研究する中で、刃の部分に問題があることを突き止めましたので、

そこを工夫することで多枚数綴じを可能にしました。これも困難な作業でした。

そして無事、2009年12月に「2穴タイプ」を発売できました。

発売以来、お客様から様々な声を頂きました。

その中で特に多かった要望が、「小さいサイズ」でした。

オフィスなどの執務空間で共用して使われることを想定していたのですが、

実際に発売してみると、個人でも使いたいというお客様が

非常に多いのがわかりました。

実はそのような声を想定して、2穴の開発と並行して、

ステープラーのように片手で使えて引き出しにも入る、

コンパクトなハンディタイプの設計に取り掛かっていました。

しかし、実際に試作してみると、普通のステープラーと比べて

綴じられる位置が本体の奥深く、

しかも綴じられるか分かりにくいという問題がありました。

針なしステープラーは、綴じると穴があくので、

綴じ位置が分からないというのは大きな問題でした。

この課題を解決する為に、綴じ位置を示すマークを付けてみたり、

色々工夫してみましたが、どれもしっくりきませんでした。

そんななか、「2穴タイプ」が先行して発売され、

展示会でお客様に説明していると、

「どのような仕組みで針を使わずに紙を綴じるの?」という質問を受けました。

この質問も試作段階からよく受ける質問で、

その都度、本体を引っ繰り返し、

動きが良く見える裏側から仕組みを説明していました。

この日もいつもどおり説明していたのですが、その時「ハッ」と閃きました。

本体を上下逆にすれば、レバーを握るだけで紙を縫うように

綴じるという機構を見せることができることに気が付いたのです。

また、同時に刃が通る穴から、

綴じ位置もはっきりと見えることに気が付いたのです。

これが、「2穴タイプ」の本体を引っ繰り返すことで、

「綴じ位置が分かる」という機能的な価値と、

「綴じるユニークな仕組みが分かる」という感性的な価値の

両方を満たすというアイデアにたどり着いた瞬間でした。

そのアイデアを具現化するために、本体上部の刃が動く部分に

透明のカバーを設けました。

その結果、とじ損じや文字部分にとじ穴がかかることを防げ、

しかも片手でラクラク使えるハンディタイプが誕生しました。

無事、2010年7月にハンディ4枚タイプの発売にこぎつけました。

ハンディ4枚タイプを発売されて、当時の評判はいかがでしたか?

苦労した甲斐もあり、訴求ポイントも響き、好評でした。

そんななか、また、発売した商品について個客に訊いてみると、

当初からの課題であった「綴じ枚数の少なさ」と、

「保持力の弱さ」が指摘されました。

そこで今度は、ハンディタイプでその2点の課題を解決する

商品開発に取り組みました。

ユーザー調査から、綴じ枚数の目標を4枚の倍である8枚に

設定したわけですが、これも非常に難しい課題でした。

やはりポイントは刃の形状にあると思い、

これまでの経験から刃の形状を再検討してみました。

その結果、矢印型の刃にすることで、

綴じた後抜けにくくする刃の開発に成功しました。

2穴タイプとハンディ4枚タイプの良いところを引き継ぎ、

2011年5月に無事発売することが出来ました。

こうして針なしステープラー「ハリナックス」のラインアップが揃った訳ですね!

最後に“ハリナックス”の名前の由来を教えて下さい。

「針」を「なくす」でハリナクス。

語感の響きから、ハリナックス!

コクヨHP http://www.kokuyo.co.jp/

 

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