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舒文堂河島書店「河島康之」さん

今日は、熊本市の並木坂にある1877年創業の古書店

「舒文堂河島書店」の河島康之さんをゲストに迎えました。

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早速ですが、古書とは?

舒文堂河島書店では、1回皆さんが購入されて、

それがうちの店に入ってきて、お客様にお売りする時は「古書」だと。

古書店には「本の目利き」が必要と言われますよね?

「本の目利き」とは、その本のその時々の価格(相場や古書の売価)と

価値(重要性)をしることだと思います。

ここ20年ほどで出された本に関しては、そもそもその本が

古本として売れるかどうか、ということから見ていって、

売れそうな本ならいくらぐらいで売れる本かの検討をつけます。

例えば、ビジネス本やハウツー本は時代がたつにつれて

役に立たなくなるものが多いです。

それは同時に古本としての価値がなくなることになります。

文学でもベストセラーとなって単行本が何百万部と出た本、

たとえば「ハリー・ポッターと賢者の石」は約500万部出版されていますが、

状態が良くても古書の値段は現状で限りなくひくいものです。

うちに何かと一緒に入荷した場合は300円から500円の値段で

ワゴンで売ることになると思います。

つまり、その様な本ばかりを売っていては、

商売にならないということになります。

そこで必要になってくるのが、価格の知識と本の価値を見極めることです。

そうすると、ある程度の金額の売れそうな古書を適度に

販売していくことができると思います。

価格について以前は、他の古書店の販売目録などを見て

参考にしていました。今は、ある程度のものであればインターネットで

検索すると誰でもわかります。しかし、もともとの定価もなく値段が

わかりにくいもの、たとえば、近代文学の初版本などは、

業者市での取引で勉強したり、やはり他の書店の古書目録を参考にします。

最近、出久根達郎著「作家の値段 新宝島の夢」という本がでましたが、

これは作家や本のエピソードを交えながら

最後にはその古書価格が明記されているという革命的なエッセイで、

たとえば北原白秋の第一歌集・邪宗門は初版の状態のいいもので

80万から100万円、うちで販売している白秋の「わすれなぐさ」は

その本には20万円前後と明記してあります。

ちなみにうちは12万円で値をつけています。

今でこそこのように値段がわかり易くなっていますが、

昔は、熱心なお客さんもいて何度も通って業者に聞いたり、

自分で買ったり、オークションで入札したりして勉強したそうです。

価値(重要性)について理解するには、どれだけその本と

関連の分野に精通しているか、ということになります。

たとえば、日本史の分野だったら、基本的な文献は「国史大辞典」や

「岩波講座・日本通史」があり、活字になっている史料をみたいのであれば、

国史大系や日本史籍協会叢書などがだされている、

など大まかなことから、その先の詳細な研究についての書籍は・・・、

ということになっていきます。学問にかぎらず、どのような分野でも、

幹があって枝葉となっている、と捉えることができ、

本も同様に出版されていると考えることができます。

その本が、幹なのか、枝なのか、葉っぱなのか。

葉っぱだったら、それがどの程度の価値があるものなのか、ということです。

たとえば、加藤清正についての研究書物は、

それ以降のそのほとんどの本が明治42年に出版された

中野嘉太郎著「加藤清正傳」を基礎にしているようです。

ということは、一般的な価値としては、

それ以外の本がどれだけ新たな情報を提供できるかに価値があると言えます。

しかし、古本屋がすべてを知っている訳ではないし、

価値は人により少しづつ異なります。

そこで、古本屋がつけている値段を安いと思って買っていただくか、

それなりの値段だけど欲しいから、と買っていただくか、

はたまた売れないか、の差が出てくるのだと思います。

これまでの活動の中で最も印象深いエピソードを教えて下さい。

お客様からの依頼で「中等国語読本」という戦前の

教科書を取り寄せました。その時は天草の文化雑誌「潮騒」の

「古書に親しむ」というコーナーの原稿を書くために

どうしてもそれが必要だということでした。

その教科書には幸田露伴の「天草灘」という紀行文が載っているはずだ、

ということでしたが、「中等国語読本」は明治書院から

10巻本で出ていて、しかも明治の半ばから昭和の戦前まで

40年ほどにかけて何度も改訂されているため、

どの巻のどの年に出されたものに該当の記事が載っているのか

検討がつかない状態で、困った挙句のご依頼でした。

そこでネットの古書検索サイト「日本の古本屋」で検索し、

「中等国語読本」を持っている古書店をしらべ、

とくかく片っ端から目次を見てもらうようお願いし、

運よく東京の古書店が持っていた明治39年の第7巻に

載っているということがわかり、入手することができました。

私は古本屋でもちろん商売として働いているつもりですが、

その商業的な活動を通してお客様の研究・探究や

一つの文化に貢献できたこと、また自分自身も未知のことを

体験することができとても印象深いものでした。

インターネットでの販売など、

「舒文堂河島書店」の新しい取り組みについて教えてください。

インターネットは10年ほど前から組合の古書検索サイト

「日本の古本屋」に古書の情報を登録して25000点を販売しています。

そんな中ここ1年ぐらいは、お店に直接来て頂ける方が増えました。

インターネットを利用されている世代の方とも思われる人が、

店に足を運ばれているという事は、

目的のこの”1冊”だけを探すのではなく、店全体の雰囲気を楽しんでいただく、

思ってもいなかった本と出会う、

それを提供できるようになればなと思っています。

インターネットで本が買える時代だからこそ、

店に来ていただく重要性が出てくるのだと思います。

今後の活動予定を教えて下さい。

今年の7月に古書目録を出す予定です。

それに合わせて店内で目録掲載の

主要な商品を展示販売しようと思っています。

舒文堂河島書店

熊本県熊本市上通町11-2

Tell:090-6106-5875

http://www2d.biglobe.ne.jp/~jobundou/

営業時間:10時~19時30分 毎週火曜日が定休日

 

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