東海大学 産業工学部 環境保全学科 教授「藤下光身」さん
今日は東海大学 産業工学部 環境保全学科
教授 藤下光身さんをゲストにむかえました。
東海大学 宇宙情報センター(熊本空港近く、大きなアンテナがある施設)
ではどんな研究がおこなわれているのでしょうか?
基本、東海大学宇宙情報センターでは研究はしていません。
あそこは地球観測用人工衛星からのデータ受信基地で、
受信したデータは東京の東海大学情報技術センターに送られ、
そこで研究が行われています。
東京での研究は広く画像解析の全体に及びますが、
地球環境問題に絡んでくる分野では、森林面積の変化や流氷の監視、
地震や津波・火山噴火などの災害時の被害状況の解析や、
変わったところでは古代遺跡の発見などの研究があげられます。
藤下先生の現在の専門分野は「電波位置天文学」ということですが、
研究内容の概要を教えてください。
電波を利用して天体の位置を正確に測定する分野です。
具体的には超長基線電波干渉計(VLBI)と呼ばれる装置の
精度向上に関する研究や、
その観測結果からクエーサーと呼ばれる宇宙の端の方にある天体の
位置をどう定義するかを検討しています。
最近では地球外知的生命体のデータ解析に時間を取られて
あまり進んでいませんが、
手前の銀河などで電磁波が曲げられる重力レンズ効果によって、
中心にあるとされるブラックホールの位置が推定できないかを調査しています。
専門用語ばかりになって難しいかも知れませんので、
例えて別の言い方をすると、1~2mの大きさのある人間の位置を
1~2mmの精度で決めるために、
「人間の位置」というのをどう定義したら良いのかを
考えているということになります。
人間は服によって輪郭変わり、食事すれば重心の位置も変わります。
そういう状況を乗り越えて変容する天体の普遍の位置を
決める事を考えています。
現在の研究課題の一つに「地球外知的生命体の探査と
探査方法の検討」というものが挙げられています。
そもそも先生が宇宙や地球外知的生命体に興味を持ったきっかけ、
またこの研究の意義・目的を教えてください。
高校生の時には、この世界の根源を考える「素粒子論」と、
単細胞生物と多細胞生物の状態を行き来する「粘菌」の
どちらかの研究をしたいと考えていました。
大学で素粒子論を勉強したのですが今ひとつ乗れなくて
(実は落ちこぼれた)宇宙に興味が移りました。
地球外知的生命体は特にきっかけはなく、
子供の時からずっと興味を持っていました。
研究の意義と目的ですが、理学の場合、まず好奇心を満たす
という理由があると思います。私個人の好奇心もですが、
人類全体の好奇心としても「他に知的生命体がいるかどうか知りたい」
という要求があると思います。
発見されれば、過去の地球上の歴史が示すように異文化との
接触による知識の大幅な発展があるはずです。
また、他の知性体の存在により逆に1つの地球という連帯感が高まり、
地球平和に貢献するでしょう。さらに、もし敵対的な生命体であれば、
地球側が先に発見しないと大変なことになります。
1999年に行われた観測は「日本で最初の電波による
地球外知的生命体の探査」と言われていますが、
この時はどのような方法で行われ、どのような成果が得られたのでしょうか。
世界では1960年にアメリカのフランク・ドレイクによって最初に行われました。
以来、50年近くいろいろな人が観測してきたのですが
我々の文明が発する信号にまみれてそれと確信できる信号は
見つかっていません。そこで複数の観測局で同時に観測するという
試みをしてみました。こうすれば信号が見つかったとき、
天体からのものであることが確信できるからです。
名古屋大学太陽地球環境研究所のアンテナの内、
長野県にあるものと山梨県にあるものを同時に使わせてもらい、
ふたご座ベータ星(ポルックス)を5日間で
合計約1時間観測させてもらいました。
残念ながら同時に出ている信号は発見されませんでした。
それから10年後の2009年に実施された全国同時観測は、
どのような方法で行われ、どのような成果が得られたのでしょうか。
もともとは世界天文年に合わせて何かやってくれないかと
世界天文年の国内組織から持ちかけられたものでした。
私と西はりま天文台の鳴沢さんとで協議し、
学術的な試みに合わせてアマチュア天文家の参加も
可能となるように企画しました。私が普段から言っていた、
宇宙からの信号と確定するための「多周波・多地点・多方式同時観測」を
オープンでやろうというものです。
従来の観測とは異なり、天文コミュニティーに観測時間と観測対象を公開し、
自由に観測に参加してもらう方式です。
最終的には世界天文年とは無関係に行いましたが、
電波の様々な周波数に光による観測も加えて、
電波では8機関の12アンテナ、光学観測は26望遠鏡が
国内各地から参加しました。
この時は和歌山大学が怪しい信号を見つけたのですが、
結局地球の電波でした。
なお、2010年には私と鳴沢さんが提案し、
アメリカ側の努力で世界各国が参加した世界同時観測(ドロシー計画)も
行いました。
この時は15か国(日本・韓国・アメリカ・メキシコ・アルゼンチン・
オーストラリア・インド・イタリア・ドイツ・オランダ・フランス・
スペイン・イギリス・スエーデン・南アフリカ)
・25機関で観測が行われました。
この時も怪しい電波が受信されましたが宇宙からのものではありませんでした。
2009年の観測にはアマチュア天文家の方々も参加されたようですが、
アマチュアの方々の観測方法を教えてください。
アマチュア無線家やアマチュア天文家が自身で持っている
電波望遠鏡や光学望遠鏡とその記録装置を使って参加してくれました。
個人で直径が6mもの電波望遠鏡を持っている人がいます。
私たちはさまざまな地球外知的生命体の姿を想像して、
絵や映像などで表現していますが、
先生が想像されている地球外知的生命体の姿はありますか?
ありません。外形は環境に影響を受け易く、
例え具体的な天体が想定されたとしてもなかなか姿を
推定するまでには至りません。
これまで地球外知的生命体という、
私たちにとってはちょっと遠い存在の研究についてお聞きしてきましたが、
東海大学ではもっと身近な問題についても教えていらっしゃいます。
環境保全学科ではどのようなことが学べるのでしょうか。
私だけが学科内容から遠い研究をしていますが、2系統の勉強が出来ます。
1つは人工衛星や気球を使って得た地球の環境や
地質データを解析するリモートセンシングやその環境情報を
地図と組み合わせる地理情報システムと呼ばれる
「環境観測」の分野の勉強。もう1つは生物の生息する環境や水環境、
防災技術や資源のリサイクルを学ぶ「環境保全」の分野の勉強です。
~~東海大学 熊本キャンパス オープンキャンパスのお知らせ~~
今年度の熊本キャンパスの予定は、8月27日(土曜日)、
11月3日(木曜日:学園祭)、来年3月17日(土曜日)にあります。
いずれも10時から15時までです。
インターネットにも情報が載っています。
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