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「株式会社IHI」のヒミツ

今日は、
「小惑星探査機はやぶさ」の回収カプセルなどの
開発・製造を行なった「株式会社IHI」の
山本健貴さんにお話をうかがいました。

~~~~~株式会社IHI 会社概要~~~~~

会社設立:嘉永6年(1853年)

事業内容
①液化天然ガスの貯留タンク ②大型のコンテナ船などの船舶
③瀬戸大橋などの橋梁 ④航空機用エンジン ⑤立体駐車場
⑥自動車用ターボチャージャ ⑦スカイツリーの建設を行なった
クレーンなどさまざまな事業を行なっています。

宇宙分野では、1964年から事業を開始し、2000年には当時の
日産自動車 宇宙航空事業部を継承し、IHIエアロスペースを設立。
一昨年、地球に帰還した「はやぶさ」の回収カプセルや
「はやぶさ」を打ち上げた M-VロケットもIHIエアロスペースで
開発・製造を行なったものです。
次世代の固体ロケット「イプシロン」の開発も行なっています。

(IHI)http://www.ihi.co.jp/

Q.「IHI」という社名の由来を教えて下さい。
嘉永6年(1853年)、ペリーの来航により、幕府は日本にも近代船舶が
必要と考えました。そこで、幕府は水戸藩に命じ、
当時の江戸・石川島の地に「石川島造船所」として設立。
明治9年(1876年)、築地で印刷業を行なっていた平野富二が石川島の
造船所を借り受け、日本初の民間の近代的洋式造船会社
「石川島平野造船所」を発足。
「東京石川島造船所」、「石川島重工業」と社名を変更してきました。
1960年、兵庫県の「播磨造船所」との合併を行い「石川島播磨重工業」
となりました。2007年には、グループ全体でより先進的な
グローバルブランドへの成長を目指すため、従来から略称として広く
認知されていた「IHI」に社名を変えました。
「IHI」とは、以前の社名であった、「石川島播磨重工業」の
英文名称「Ishikawajima-Harima Heavy Industries」の頭文字を
取ったものです。

Q.「IHI」は、話題となった小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトの
開発にもかかわったと聞いていますが、どんな部分を担当したのですか?

JAXAに協力して、はやぶさを打ち上げたM-Vロケットを開発・製造し、
打ち上げを支援した。また、小惑星「イトカワ」で地表表面を観察し、
写真撮影、温度計測をする小型ロボット「ミネルバ」の開発・製造を
行いました。そして、イトカワの砂を格納して地球に持ち帰った
回収カプセルの開発取りまとめを担当しました。

Q.いつごろ?どんなきっかけで開発することになったのですか?
当時、英国は土星探査機「カッシーニ」に見られるような34億ドル超の
デラックス計画の時代。
ところが、1992年に就任したダニエル・ゴールディンNASA長官が大胆な
改革を行いました。提唱したのは、素早く、より良く、より安くを
スローガンとしたディスカバリー計画で、開発期間は3年、予算は
3億ドル以下。これは、それまで日本のISASが行っていた領域であり、
ISASおよび旧日産の存亡に関わる一大脅威となりました。
加えて、開発中のM-Vロケット以上の大きなロケットは、鹿児島宇宙
観測所の立地制約により運用不可であり、M-V開発集結以降の技術
シンボルをISASも旧日産も求めていました。
そんな背景の中で生まれたミッションが、火星探査「のぞみ」、
月探査機「LUNAR-A」、小惑星探査「はやぶさ」。
他国の追従を許さない難易度である分、専門家も成功を危ぶむほどの
ミッションでした。しかし、IA(旧日産)は、会社の技術シンボルを
求めて、「LUNAR-A」と「はやぶさ」の手を上げました。

Q.開発のポイントはどこでしょうか?
大気圏に突入したカプセルの周囲は1万度~2万度になり、
カプセル自体も3000度程度になりますが、中は40度ほどに保つことが
必要。そのカプセルをヒートシールドと呼ばれる数センチほどの
断熱材で包む構造となっていますが、これはロケットの噴射口に
使用しているFRPで製造しています。また、カプセルは大気圏に突入
した後、地上高度を検知し、所定の加速度に達したらヒートシールドを
分離する仕組みになっています。これにはロケットなどの分離にも使用
される火薬を使用した火工品が使われています。カプセルは
パラシュートで緩降下させる仕組みとなっていますが、
下部のヒートシールドはパラシュートがうまく開くように
引っ張りながら分離する仕組みとなっています。
パラシュートが出るとカプセルからは鎖状のアンテナが出て、
位置を知らせる仕組みとなっています。

Q 最後に現在そして、今後の開発についてお伺いしたいのですが、
IHIと言いますと、航空機エンジンも主力事業の一つですよね。

主力事業の一つである航空機エンジンでは,先日,日本でも初運行となった
B787向けのエンジンの開発・製造に参画しています。このエンジンは、
従来のエンジンに比べ、燃費性能などが格段に改善されています。
IHIは、航空機エンジンでは、国内で7割のシェアを有しています。
また、数多くの分野で環境対応技術を活かした製品の開発を進めています。
例えば、創業の事業である造船では、環境負荷を大きく低減することが
できるエコシップという船を開発しました。また、次世代のバイオ燃料の
開発では、藻を原料としたバイオ燃料の研究もしており、将来的には
ジェットエンジンの燃料などに使用できるようにしていきます。

●IHIのその他の開発秘話などのエピソードがある製品やプロジェクト。
1966年(昭和41年)に、世界初の20万トン級タンカー「出光丸」を建造。
これは、全長342m(東京タワーの高さとほぼ同じ長さ)、全幅約49.8m、
深さ23.2mという大きな船体に20万トンの原油を積載できるタンカーです。
当時、日本の経済成長を支えるためには、大量の原油を確保する必要が
あり、それまでの10万トン~15万トン級のタンカーよりも大型の
タンカーが必要と考えられました。
出光丸では、浅瀬が続く海の難所「マラッカ海峡」を通るため、
海面下の船の深さの制約の中で、積載量の最大化と低燃費を実現する
必要がありました。そこで「高張力鋼」という強度が高い新材料を
使用しました。それに伴い、従来の溶接方法では対応ができないので
溶接方法の開発から行いました。
更に、船型の開発など、当時のIHIの造船技術を駆使して
「世界初の20万トン級タンカー」を実現しました。

 

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