肥薩線世界遺産推進室・山本研央さん
あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
人吉市 市長公室 企画課 肥薩線世界遺産推進室の
山本研央さんに、肥薩線を世界遺産に登録しようという
運動についてお話をうかがいました。
Q① 自己紹介をお願いします。
名前 :山本 研央(やまもと けんおう)
所属:人吉市 市長公室 企画課 肥薩線世界遺産推進室
プロフィール
平成24年4月1日付けで人吉市役所市長公室企画課内に
肥薩線世界推進室(室長:嶋川智尉企画課審議員)を設置。
室長ほか2人の計3人体制。
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Q② 「肥薩線世界遺産推進室」の基本情報を教えて下さい。
所在地 〒868-8601人吉市麓町16番地
連絡先 TEL 0966-22-2111(代) FAX 0966-24-7869
ホームページ http://www.city.hitoyoshi.lg.jp
主な業務は、肥薩線の世界文化遺産登録推進と沿線の
地域振興に関すること。
また、「肥薩線利用促進・存続期成会」
「肥薩線を未来へつなぐ協議会」の事務局を担当。
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Q③ 「肥薩線」の歴史的価値を具体的に教えてください。
肥薩線は、1909年(明治42年)、八代-隼人区間の
南九州3県(熊本・宮崎・鹿児島)にて全線開通し、
明治近代化から戦後復興に至るまで、多くの木炭や坑木を運び、
我が国の経済成長を力強く支えてきた。また、肥薩線の全線開通により、
青森~鹿児島の日本縦断鉄道が完成したという点で、
我が国の鉄道史においても特に記念すべき鉄道路線であるといえる。
肥薩線の魅力は大きく分けて3つ挙げられる。
①沿線の鉄道遺産。駅舎、線路、トンネル、橋梁など、
そのほとんどの沿線施設が、明治の開業以来の姿をそのままに、
1世紀の長きにわたって現役で活躍している。
②沿線の自然景観。八代-人吉の区間は「川線」と呼ばれ、
日本三大急流である球磨川(一級河川)に寄り添う形で、
深い渓谷の中を縫って走るため、
まさに水源郷としての神秘的な景観を楽しむことができる。
人吉-吉松区間は「山線」と呼ばれ、川線とは大きく異なり、
高低差430mもの非常に急勾配な山岳地帯を登っていくため、
その先からは霧島連山の雄大な景観を楽しむことができる。
吉松-隼人の区間は、昔ながらの農村地帯が広がり、
のどかな日本の原風景を楽しむことができる。
③肥薩線を愛する地域住民たち。
100年を超える肥薩線には、かつて人生を捧げてきた鉄道マンと
苦難と歓喜の物語が数多く存在し、
それ故、「人生の恩返しがしたい」という思いで、
沿線施設の清掃や周辺美化、案内ガイドなど、
第一線を引退した今でもボランティア活動が行われている。
こうしたボランティア活動は、元鉄道関係者に限らず、
沿線の農村集落の住民など、地域の中で日常的に幅広く行われており、
100歳を超えた今でも肥薩線が長生きすることができている最大の秘訣といえる。
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Q④ 「肥薩線」を「世界遺産」に登録しようという今回の運動のきっかけは、どんなものですか?
肥薩線は1世紀以上を経た現在においても、地域の足として、
地元に親しまれ、愛されており、
開業当初の遺産が連綿と残る「地域の宝」である。
それらはまた、西洋の技術を輸入した明治時代から、
今や世界に冠たる技術を擁するまでに成長した我が国の鉄道技術において、
それまで軌跡を物語る貴重な文化遺産であり、
当時の技術の粋を結集しているという点で、現代技術の礎ともなっており、
まさに「日本の宝」ともいえる。難工事に殉職した方々をはじめ、
多くの労苦を伴って築き上げてきた先人たちの努力を顕彰し、
肥薩線を生きたままの姿で未来へ継承していくことは、
現代の我々の努めである。
このため、日々の補修といった「介入による脅威」がありながらも
国内における万全な保護管理を図りつつ、「人類共通の宝」として
最高級の顕彰が与えられる「世界遺産」という高い目標を掲げ、
それに向かって徐々に顕彰のレベルアップを図っていくことにより、
地域活性化の起爆剤としていきたい。
また、蒸気機関車時代から経験談と共に語られる者たちの高齢化が進み、
長い歴史の中で紡ぎ出されてきた「男たちの技術と記憶」が風化しつつある今こそ、
未来の世代に継承していうことが重要である。
そして、最大の難所である山線を支えていたD51蒸気機関車を復活させ、
山線の景観とそれを力強く駆け上る勇ましい姿を見せることにより
多くの子供たちに夢と希望を与えられるような活動を展開していきたい。
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Q⑤ 「世界遺産」への登録まで、今後具体的にどんなステップを
踏んでいくのか、具体例に説明お願いします。
世界遺産に登録されるためには、まず日本国内の暫定リストに
記載される必要があり、現在12の文化遺産が記載されている。
その条件として、「顕著な普遍的価値の証明」と
「国内における万全な保護措置」が求められ、
特に後者は国内法による保存管理が必要不可欠であり、
これまで日本では文化財保護法による国宝、重文、史跡などの
文化財指定でこの条件をカバーしてきた。
しかし現在肥薩線のような稼働資産について文化財保護法によらない
「第三の道」が検討されている。
いずれにしても、暫定リストに追加記載できるような条件を整えるため、
学術調査を実施し、肥薩線を構成する資産、
施設も大小さまざまなものがあるため、
資産・施設の全容についての諸元等を網羅的に把握する必要がある。
その中で国の文化財制度などを活用しながら、
施設の所有者であるJR様と協議を進めながら、
一歩ずつ着実に夢に向かって進んでいきたい。
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Q⑥ 国鉄OBの皆さんも「世界遺産」への登録にむけて
協力体制を組んでいるそうですが、具体例に説明お願いします。
人吉鉄道観光案内会は、100年以上の歴史を誇る肥薩線の魅力について、
そこで働いてきた人々の数々の苦難と歓喜のエピソードを体験とともに語り伝えることにより、
100年前に先人たちから受け継いだこれらの現役資産を、
その息を途絶えさせることなく、このまま生きた状態で100年後の後世に
引き継いでいくことが必要である。
また、平成21年には肥薩線の全線開通100周年という節目を迎え、
同年4月には、かつて昼夜を共にした人生の相棒「SL人吉」の
復活運行が予定されていたことから、
肥薩線自体も大きな転換期を迎えようとしていた。
このため、歴史の語り部として、過去-現在-未来の橋渡し役を担うべく、
かつて肥薩線と人生を共にした熱意ある元鉄道マンたちが立ち上がり、
かくして、平成20年2月に「人吉鉄道観光案内人会」が結成された。
普段の活動内容は、
①鉄道観光案内人としての養成講座・研修会
②現地案内ガイド・語り部活動
③こども向け体験イベントの実施
④肥薩線沿線の美化・清掃活動、その他ボランティア・調査活動。
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Q⑦ これまでの活動を通じて、最も印象深いエピソードをお願いします。
平成23年に人吉市で開催した肥薩線世界遺産シンポジウムにおいて、
前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏から提言をいただいたことや
平成24年5月に近代化産業遺産の世界的権威である
スチュアート・スミス氏に肥薩線を実際に視察いただき貴重な意見を
伺ったことが印象に残っています。
それに、昨年末には、人吉鉄道観光案内人会が
日本ユネスコの「未来遺産」に選定されたことも印象に残っています。
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Q⑧ 今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。
肥薩線の世界遺産に向けての取組みは、今スタートラインにたったばかり。
これから様々な調査研究や広報活動において積極的に取組み、
一歩ずつ前へ進んでいきますので、皆様のご協力をお願いいたします。
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