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「熊本こうし響創塾」内村安里さん

あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」

熊本県合志市のマンガ・アニメクリエイター育成プロジェクト

「熊本こうし響創塾」総合プロデューサーの内村安里さんに

お話をうかがいました。

https://www.kumamoto-kyosojuku.com/

121008

Q① お名前と職業・所属を教えて下さい。

名前: 内村 安里

所属: プライムスイッチ株式会社 代表取締役社長

熊本県合志市のマンガ・アニメクリエイター育成PJT『熊本こうし響創塾』総合プロデューサー

熊本発アプリ開発集団『熊本Apps!』代表

プロフィール

1978年生まれ。34歳。熊本県出身。

熊本県立熊本高校→成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒

2002年4月 株式会社モベラ入社(株式会社ベンチャー・リンク100%出資)

   飲食フランチャイズの販促支援業務に従事

2003年1月 株式会社ベンチャー・リンクへ転籍

  飲食フランチャイズのスーパーバイジング業務に従事

  中華料理フランチャイズ 料理長に就任

2003年8月 株式会社ディー・エヌ・エー入社

  ECコンサルティング部門マネージャー

  Mobage(モバゲー)広告事業立ち上げ~広告営業部門マネージャー

  Mobage(モバゲー)マーケティング・広告宣伝部門マネージャーを歴任

2011年10月 プライムスイッチ株式会社設立

  代表取締役社長に就任

Mobage(モバゲー)マーケティング・広告宣伝部門時代には、数多くのTVCMを担当。

西城秀樹・木梨憲武出演で「YMCA」を「YMYM」に替え歌した

「Yahoo!Mobage」のCMや、

時任三郎・柳沢慎吾・中井貴一出演で昔のトレンディドラマを彷彿とさせた

「いい大人の、モバゲー。」シリーズCM等。

それらの経験を活かし、CMクリエイティブディレクターを含めた

広告・マーケティングに関するコンサルティングや、

スマートフォン向けゲームアプリのプロデュース等を行っている。

その一方で、地元である熊本を活性化したいという想いから、

熊本でも様々な事業展開を進めており、その第一弾として、

合志市・熊本高等専門学校等と連携し、

マンガ・アニメクリエイター育成プロジェクト「熊本こうし響創塾」を企画。

2012年11月より開講予定。

また最近では、崇城大学の和泉助教・熊本高専の大塚教授と共に、

熊本発アプリ開発集団『熊本Apps!』を旗揚げ。

Q② 「プライムスイッチ株式会社」の基本情報を教えて下さい。

所在地:東京都渋谷区恵比寿1-21-3

ホームページ:http://www.primeswitch.co.jp/

Q③ 内村さんが、いまの仕事(クリエイティブ関係のビジネス)をスタートしたのは、

 いつごろ?どんなきっかけですか?

大学時代から「将来は起業したい」と朧げながら考えていて、

それにつながりやすいと思ってベンチャー企業を中心に就職活動して来ました。

で、新卒で入った会社がすぐになくなって親会社に統合される、

みたいなこともあって、縁あって前職(DeNA)に中途で入りました。

まあいろいろ大変ではありましたが(苦笑)、仕事自体はすごく楽しくて。

次のステップのことも考えてはいたのですが、

「もっとここでいろんなことが学べるんじゃないか」という気持ちの方が強くて。

実際、私が入社した時は社員は100人もいなくて、

まさか横浜ベイスターズを持つことになるとは思いもしなかったですし(笑)。

急成長企業の中で学べる機会はそうそうないんじゃないか、と。

そんな時、オフィスで3.11を経験しました。

当時私は10Fの会議室で打ち合わせをしてたんですが、

ローラーのついたホワイトボードがゲームセンターのエアホッケーのように

壁にぶつかって。

東北の方々と比べるのは失礼かもしれませんが、

本当に想像していなかったことが起こってる、と。

その後、4時間半かけて歩いて家まで帰って。

着いた時には、私が住んでいる地域は停電してたんですが、

しばらくして復旧してTVをつけたら、もう愕然とするような映像が

目に飛び込んできました。

その後、原発の問題もあったりしたので、東京近郊の会社は

1週間ぐらい社員に自宅待機を命じるような会社が多かったのですが、

その1週間で、自分の人生を見つめ直したというか。

それで休み明けに、会社に「すいません、辞めます」と言いに行きました。

その時は完全にノープランでしたが。

ただ、いろいろと業務を抱えてたこともあって、

私が抜けた後の体制構築や引き継ぎなんかで、

結局退社するまでそれから半年以上かかって、

会社設立できたのが2011年10月28日でした。

Q④ 内村さんが、仕事をするうえで「ポリシー」としていることがあれば教えてください。

私はいかに早く行動に移すか、スピードを持って取り組めるかが大事だと思ってます。

本当に大丈夫なのか、熟考して進めるよりかは、一旦スタートさせて

世の中の反応を見て、その反応によってブラッシュアップさせた方が

成功に近づく場合が多い。これは、私がIT業界にいたからかもしれません。

今私はスマートフォン上で遊べるゲームのコンサルティング/プロデュースも

手がけていたりしますが、ニンテンドーDSやPS3のような

コンソールゲームと大きく違うのは、リリースした後に修正できる、

という点なんです。

ただ、よく勘違いされてしまうのですが、「未完成なままリリースする」

ということではありません。

所謂大企業と呼ばれるような会社と我々のような資金力のない会社だと、

かけられる人数もお金も違います。

半年かけて調査して絶対にいけると考えたサービスが、

本当にヒットするとは限りません。

その間に似たようなサービスが出てしまうと一気にインパクトがなくなりますし、

何よりも世の中も刻一刻と変わっていくからです。

だとしたら、例えば、10のうち2の根幹の部分だけのシンプルな形で

リリースして世の中の人が本当に興味を持ってくれるのか見てみて、

そこで心が掴めてから一気に人数とお金をかけた方がいい。

また、事前のマーケティング調査って、あてにならない場合も

多かったりするんですよ。

例えば、「50%の人がこういう商品が出たら買うと答えた」みたいな

結果が出て、実際にその商品を作ったら、

そんなに買う人がいなかった、とか(苦笑)。

もちろん、テストトライアルみたいなことができない商品やサービスも

たくさんあるかとは思いますが、資本力のある会社と同じ土俵で

勝負するためには、人数とお金の上手な使い方、

リソース配分を考えて、同等以上のスピード感で取り組めないと勝ち目がないので。

あとは、失敗しても「死にゃあしない」と思って仕事してます(笑)

不安ばっかり考えても仕方ないですし、精神的に追い込まれた状態で

仕事しても、うまくいかないですからね。

Q⑤ これまでの活動の中で、最も印象深いエピソードをお願いします。

そうですね、辞める前の8月ぐらいの時に、同じく熊本出身で

東京の代理店で働いている方と話をしていまして、

「新しい会社を作るから、何か熊本で一緒にやりたいね」って話をしてたんですよ。

で、「今、熊本だったら何だろうね?」「ONE PIECEの作者の尾田先生でしょ!」

「じゃあ一緒に、ONE PIECEを使った企画を考えて

熊本市や県、企業に提案しよう!」ということになって。

で、ちょっとネットでいろいろと調べてたら、

「熊本をマンガ・アニメの聖地にしよう」と謳っているグランド12という

NPO法人を見つけて、「一度会ってみよう」と。

そこから、グランド12の皆さんにいろんな方々を紹介してもらいながら

話をして回らせていただいて。

その時に、合志市の方々がすごく興味を持っていただいて、

当初とは形を変えて「マンガ・アニメのクリエイターを育成しよう」という

『熊本こうし響創塾』の原型ができていき、そこからブラッシュアップを重ねながら、

この11月からスタートできることになったんです。

これ、多分かなり早いスピードで実現できたんじゃないかと。

振り返ると、本当に運が良かったと思いますね。

当然、自分一人では全く実現しなかったわけで、

人との出会いにも感謝してます。

後は、やっぱり行動することが大事だな、と。

机に座って企画書を作ってるだけだと、きっと実現しないですから。

Q⑥ 活動を通じての苦労、やりがい、これからの夢などあれば教えてください。

お金を稼ぐのって大変だな、と(苦笑)

まあ、サラリーマンの時と違って自由にやれる分、責任を取るのも自分なので、

会社をやっていくってのは簡単なことじゃないな、とは日々感じますね。

当たり前ですが。

だからこそ、サラリーマンだとやれないことをやろう、と。

で、私は自分の出身地であるここ熊本に、新しいビジネスの目を

作りたいと思っています。

実は、『熊本こうし響創塾』の他に、

崇城大学の和泉助教・熊本高専の大塚教授と一緒に、

熊本発アプリ開発集団『熊本Apps!』という団体を旗揚げしました。

今の日本のIT業界には、プログラマとデザイナーが枯渇してます。

それを追い求めて、今、大手のIT企業はベトナム等に支社を作って、

現地のプログラマを採用したりしているんです。

ただ、言語・文化の壁がなく、クオリティ感覚が高い日本人へのニーズは、

当然のことながら高いです。

また、ITビジネスって、どこでもやれるんですよ。

開発環境さえあれば。大きな設備投資もいらない。

そして、そこから日本だけじゃなくて世界中に発信していける。

東京や大阪等の大都市を介する必要もない。

今、熊本にいる若い人たちでITビジネスをやりたいって言った時に、

選択肢は東京が中心になると思うんですよ。

でもそういった子が学校を卒業して東京に行ってしまうのではなく、

熊本に働きたい企業があったら、いいんじゃないかな、と。

熊本を元気にするためには、熊本にあって、

熊本県外からお金を持って来る企業が必要なんじゃないかな、と。

だから私は、『熊本こうし響創塾』や『熊本Apps!』での活動を通して、

プログラマやデザイナーを育成しつつ、その子たちが働ける場所を作る。

働ける場所を作るというのは、彼らが学んできたことを活かせる

ビジネスの土台を作ってあげる。

かなり大きな夢ですが、そういうことをやりたいと思ってます。

Q⑦ 今回、「熊本こうし響創塾」を11月から開校するということですが、

 今回の企画は、どんなきっかけで実施することになったのでしょうか?

そうですね、そもそも熊本ってけっこう有名なマンガ家さんが多いんですよ。

『ONE PIECE』の尾田先生も正にそうですが、

『SLAM DUNK』の井上雄彦先生は鹿児島生まれなんですけど

熊大にいらっしゃったっことがあったり、

『ケロロ軍曹』の吉崎観音先生は学生時代を熊本で過ごされてたり。

で、日本のマンガやアニメは海外からも高い評価を受けてますし、

最近ではマンガやアニメを使った町おこしも各地域で盛んに

行われています。

そして、「くまモン」のようなキャラクターがとても大きな経済効果を生む、

という実例もあります。

もちろん、今ある人気作品を活用した町おこしも非常に効果が高いと

思いますが、取り組んでいくためには著作権等のハードルを

クリアしなければならないので、

取り組みたくてもなかなか取り組めない場合も多いです。

版権元はその管理自体がビジネスなので、当然なのですが。

そう考えると、「人気作品を活用する」だけではなく、

「人気作品を産み出す」という発想もあってもいいんじゃないかと。

熊本からは多くの人気クリエイターが輩出されているんだから、

次の『ONE PIECE』を応援するような地域の動きも、

もしかしたらすごく大きな取組みになるかもしれませんし。

先ほどのデザイナーの話もそうですが、育成することで

そこで新しいビジネスチャンスが生まれるかもしれませんし、

マンガ・アニメを目指す若者が合志市に集まるようになれば、

それはそれで一つの町おこしにつながる。

「人気作品を活用した町おこし」よりも、もっと大きな可能性を

秘めてるんじゃないか、と考えています。

ただ、実現できた一番の理由は、合志市の荒木市長が

「アニメを活かした町づくり」をマニフェストに掲げていらっしゃって、

この取組みに賛同いただけたからです。本当に感謝しています。

Q⑧ 「熊本こうし響創塾」では、具体的にどんなことを教えていくのでしょうか?

大きく分けて2つあります。

1つは、マンガ・アニメ業界で働きたいと考えている若者に対して、

「仕事に就くための様々な道・手段を知る」機会の提供、

もう1つは、マンガ・アニメ業界でクリエイターとして働きたいと

考えている若者に対して、

「第一線で活躍している方に自分の作品を見てもらえる」機会の提供、

です。技術的な指導というよりかは、考え方、とかでしょうか。

今回、3名の講師をお呼びしています。

一人目は、「薄桜鬼」等の人気TVアニメの監督をされているヤマサキオサムさん、

二人目は、『コードギアス』『セイクリッドセブン』等、これまた人気作品の

キャラクターデザインをされている千羽由利子さん、

そしてもう一人は、キャラクタービジネスのアナリストとして

TV・雑誌等でのコメンテーターや執筆、講演活動をされている陸川和男さんです。

特にヤマサキさんと千羽さんは熊本出身でして、

熊本出身でマンガ・アニメ業界を志す人にとっては、

これまでのキャリアや仕事に就くために学んで来たこと等を聞けることは、

非常に貴重な経験になるんじゃないかな、と思います。

また、今回、自分で作品を作っている方については、

実際にその場で作品を見てもらえて、その場で直接インプットが

もらえるような場も用意したいと思っています。

Q⑨ 「熊本こうし響創塾」では、どんな人材を生み出したいのでしょうか?

 今後の目標などありますか?

次の『ONE PIECE』を作るクリエイターを生み出したいと思ってます(笑)

でも、こういった場がきっかけで、『ONE PIECE』のように、

日本だけでなく世界でも大人気になる作品が生まれたら、最高ですね。

本気でがんばってる人には、本気でバックアップしたい、と思ってます。

そして、もっと小さい子どもたちにも、夢を見せてあげたいです。

Q⑩ 今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。

10日の夜、熊本発アプリ開発集団『熊本Apps!』の会合がありますので

、もし参加希望の方は、Facebookで『熊本Apps!』と検索していただき、

ぜひぜひご連絡ください!

また、「マンガ」絡みで告知なのですが、実は今週土曜13日の朝10時に、

北熊本駅で「ケロロ電車」が運行開始します。

ラッピングもそうなんですが、車内にもキャラクターの紹介があったり、

車内アナウンスはアニメ「ケロロ軍曹」本人の声優・渡辺久美子さんが担当してたり、

遊園地のアトラクションのように楽しめる電車になってますので、

ぜひぜひ皆さん、北熊本駅に行ってみましょう。

 

 

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