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熊本大学教育学部付属小学校・川野美智代先生を迎えて

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。

3ヶ月間にわたってスペシャル企画でお届けしています。

題して「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ 熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」

毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、さまざまジャンルの研究テーマについて

お話をうかがいます。

第4回の講師は、熊本大学教育学部付属小学校の川野美智代先生です。

「食育」について詳しく伺います。

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Q① お名前と職業・所属を教えて下さい。

名前:川野 美智代

所属:熊本大学教育学部附属小学校

プロフィール

相模女子大学学芸学部食物学科卒

(財)学校福祉協会栄養部部長

熊本大学医学部附属病院栄養管理室(管理栄養士)

熊本大学教育学部附属特別支援学校(栄養教諭)

現熊本大学教育学部附属小学校(栄養教諭)

(国立大学附属学校栄養教諭・栄養士会会長)

熊本大学教育学部生涯スポーツ福祉課程研究生修了

Q② 川野先生の専門のテーマについてわかりやすく教えてください。

「食育」全般です。 現在は、児童を対象に食に関する指導や栄養教育、

教科と絡めた食に関する指導等の実践研究を主に行っています。

また、スポーツ栄養、臨床栄養、発達障害児の栄養などにも携わっています。

Q③「食育」とは?この言葉を初めて聞く人にもわかるように、

 わかりやすく具体的な説明をお願いします。

平成17年に「食育基本法」が施行されました。

国・地方公共団体及び国民の食育推進の取組を総合的かつ

計画的に推進するための法律の制定です。

現在、主に私が取り組んでいる「食育」は、教育の場での食育推進となります。

いわゆる、学校における食育です。

学校における食育は平成17年4月「学校教育法等の一部を改正する法律」の施行により、

知育・徳育・体育の基礎となるべきものであるという位置付けでスタートしました。

その背景には、近年、食生活を取り巻く社会環境の変化に伴い、

子どもに食生活の乱れや健康に関して懸念されるところであり、

また、増大しつつある生活習慣病と食生活の関係も指摘されています。

特に成長期にある子どもにとって、健全な食生活は健康な心身を育むために

欠かせないものであると同時に、将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼすもので、

極めて重要です。

また、子どもの頃に身に付いた食習慣は大人になってから改めることは

非常に困難なことです。

このため、成長期にある子どもへの食育は、「生きる力」の基礎となる

健康と体力を育むほか、食を通じて地域等を理解することや

失われつつある食文化の継承を図ること、自然の恵みや勤労の大切さなどを

理解することが重要となってきています。

このようなことから「食育」がスタートし、

平成23年3月には、第2次食育推進基本計画も内閣府より、

基本概念として「周知」から「実践」へと出されています。

Q④ 小学校での「食育」の学習は、どんなかたちで行われていますか?

学校においては、「食育」の年間全体計画・年間指導計画を作成して、取り組んでいます。

主に、学校給食を生きた教材とし、各教科、道徳、特別活動、

総合的な学習、学校行事等と絡めた食育を行っています。

本校においての年間計画では、主に低学年は体験学習を行い、

畑で野菜を育て収穫し、給食で全校児童に食べてもらうなどと、

多様な体験学習を行います。(感謝の心・食事の重要性・社会性等を学びます。)

中・高学年は、教科や特別活動、行事などと絡めて、学習します。

(例) 国語科 3年 「すがたをかえる大豆」の学習との関連

子どもたちは、大豆からできている食材を学習し、

人々の知恵を伝える文章を学習しています。

そこで食育と関連づけ、毎日食べている給食の「うまみのひみつ」を食育として学習します。

今回の国語科は、先人が伝えてくれた、うま味のもと、世界一硬い食べ物、

「かつお節」についての授業を行いました。

2つのみそ汁(だし有・だし無)を飲み比べさせ、その違いについて、

意見の交流を行い、給食に使われている、うま味のひみつを学習していきます。

そして、かつお節の製造過程を知り、「すがたをかえる魚」として

子どもたちに新たな知識が加わります。

この授業からは、食文化や食品を選択する力、感謝の心などへと

導くことができます。

このように、他の教科等においても、新たな知識から実践できる

子どもへと成長を願いつつ、食育を行っています。

担任の先生との連携が大切で、子どもたちが、興味をもち、

楽しく食育ができるように心がけています。

Q⑤ 川野先生がこの活動に取り組むことになった

 「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。

二十数年前、某体育大の新体操部の栄養サポートに関わる機会がありました。

当時は、スポーツ栄養という言葉も一般化されていませんでした。

スポーツ栄養の知識もなく、先輩の言うがままでの仕事でしたので、

楽しさを感じることができませんでした。

そのようななかで、臨床栄養の場での経験が必要と感じておりました。

縁があり、本大学の附属病院で臨床栄養を学ぶ機会をいただき、

病院での経験から附属学校園での食育に携わり、

スポーツ栄養を柱に楽しく学ばせていただきながら研究を行っています。

Q⑥ 「スポーツ栄養」に関する具体例をお願いします。

健康の維持・増進、競技力向上のためのスポーツを行っている人は、

常に体をベストな状態にキープすることが重要です。

アスリートの強靱な体を作り上げているのが毎日の「食事」です。

意外に感じるかもしれませんが、多くの研究から、食事の質により、

トレーニングの効果やコンディションを左右することが明らかになっています。

例えば、いつもの練習や運動でも疲れやすい、だるいと感じるときは、

貧血ぎみが考えられますから、鉄分を多く含む食事が必要ですし、

疲れやすいという場合はビタミン不足の可能性もあります。

適切で十分な栄養素の摂取が欠かせません。

体づくりやスタミナづくりの栄養・食事、水分補給、

運動や試合前後の栄養・食事、といったように、、状況に応じた栄養・食事が大切です。

また、本校の児童のように成長期のスポーツ選手にとっては、練習も大切ですが、

栄養摂取が同じように重要です。筋肉や骨格など、

体の基礎ができていることが大前提です。

毎日の食事で発達段階に応じた、必要な栄養所要量をしっかりとるということが一番大切です。

食事の内容の偏りや欠食が栄養バランスが崩れて発育に影響を及ぼします。

本校では、このようなことから、「運動と食事」の関係について、

4年生から学習を取り入れています。家庭との連携で、

体を構成する3大栄養素の働きや食事のバランスの大切さなどを

特別活動を通して、行っています。

「食べることは、健康に過ごすためのトレーニング」を、子どもたちに指導しています。

Q⑦ 小学生に「食」の大切さを学んでもらうのは、大変だと思います。

 例えば、最近では成長期なのに美容のためにダイエットする小学生が少なくないと聞きます。

 そんな子供たちには、どう説明し、説得しますか?

食育の必要性においても、子どもの増大する生活習慣病や過度な痩身志向は、上げられています。

成長期のダイエットについては、子どもたちの痩身を、早期に察知することが、

未然に防ぐ事となります。しかし、なかなか難しいことです。

学校においては、保健の先生との連携も必要となります。

ダイエットで、痩せてきているのであれば解決に向けて、早期に個別の指導が必要です。

家庭との連携が大切で、ダイエットの要因を掴み進めて行きます。

間違ったダイエットを防ぐためにも、食育は、できるだけ早い時期から必要です。

「私たちの体は、食べものから作られています。」の学習を、しっかりと理解させる必要があります。

個別の指導が必要となった場合は、くり返し、カウンセリングを含んだ食の指導を、

保護者と連携して行います。

どの段階で、どこまでの指導が必要であるか、タイミングをはかり、

指導を入れていきます。

本人に必要な栄養摂取量を示し、実際の摂取量を知らせる。

その栄養で、自分の体が作られている。

間違ったダイエットを行った場合、どのように健康を損なうか。

などの指導をくり返し行って、要因にもよりますが、食べることへの不安を除きながら進めていきます。

周りの環境や保護者の協力が必要不可欠です。

Q⑧ ある意味「食」のプロである川野先生ご自身は、

 普段、どんな食生活を送っていらっしゃいますか?

 忙しい私たちでも参考になるような具体的アドバイスがあればお願いします。

私自身は、できるだけ休日に、まとめて常備食を作って、ストックしておきます。

一般的な金平ごぼう、ひじきの煮つけ、あえもの、

野菜の煮物などといったような、少しだけ、手間暇かけたものでしょうか・・・

そうすると、仕事から帰ったら、主菜と汁物くらい作ればそれでバランスは、何とか整いますから。

後は、長い間つき合っている自分の身体の声を聞きながらの、必要に応じた食生活です。

料理が苦手な人には、嫌われるかもしれませんが、台所が私のストレス解消場です。

これから、冬野菜がおいしい季節ですから、たっぷりと冬野菜のおいしさを楽しみます。

Q⑨ これまでの活動を通じて、最も印象深いエピソードをお願いします。

子どもたち相手の仕事ですから、毎日がサプライズでエピーソードといったところです。

また、節目節目での人との出会いには、エピソードがあり、感謝です。

特に、附属特別支援学校での子どもたちとの出会いは、人生観が変わりました。

純粋な瞳の全校児童生徒の、一人一人の栄養管理を、

保護者や先生方との一丸とした連携で行い、すばらしい食育や研究ができました。

感謝いたします。

現在は、本校の愛しい子どもたち、何事にも協力的な保護者のみなさん、

積極的で一生懸命に取り組む先生方と一緒に食育途上中です。

Q⑩ 今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。

力及ばずながら、毎年8月に、大学で「食育」の公開講座を開講しております。

実践研究報告や専門分野の先生方の講義を含めて、速、実践に役立つ講座です。

食は生きていく上で必要不可欠で、呼吸と等しいことのように思います。

コツコツと食育の種を蒔き、日々、精進です。

 

 

 

 

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